海 外
(蕎麦以外の麺類を含む)

現在、56軒掲載(うち4軒は、閉店確認済)
★大邱駅(韓国。国鉄京釜線、大邱都市鉄道1号線(大邱駅駅))
「停車場うどん(정거장 가락국수)」  実食日:2019/1

  改札外、2階待合所内。改札も2階なので、とてもアクセスしやすい場所にある。間口が広い店で、客席も豊富。テーブル席のみで、32席くらいある。システムは、有人レジで先払い→配膳・下げ膳ともセルフ。これまでに韓国で入った飲食店は、すべてフルサービスだった。ここにきて、初めてセルフサービスの店に出合った。箸(鉄箸ではなく木製だった)やレンゲ、飲み水もセルフになっている。韓国にも、セルフサービスの概念があることはあるのね。店名を直訳すると、「停車場うどん」。このうちの「うどん」は、店によって「ウドン(우동)」と表記したり「カラッククス(가락국수)」と表記したりする。まぁ、「ラーメン」と「中華そば」、「スパゲティ」と「洋麺」のようなものだ。前半の「정거장」は、「チョンコジャン」と読むことから、最初は「○○醤」的な調味料の名称かと思った。帰国後に調べて、駅にちなんだ店名であることを知り、俄然親しみが湧いてきた。まさに「韓国版の駅そば」と呼ぶにふさわしい店だ。
  ここでは、オーソドックスな麺類メニューの「停車場麺(정거장국수)」と、韓国の簡易的な飲食店で扱うことが多い韓国式餃子「マンドゥ(만두)」を食べてみた。停車場麺は、中央駅「キムパプ一番地(김밥일번지)」で食べた우동よりも日本のうどんに近いものだった。まず、つゆがしっかり醤油色をしている。飲んでみると日本のそばつゆほどには塩気がなくあっさりしているのだが、醤油の香りはきっちり感じられる。台湾の醤油系スープに近い味わいか。少し甘みあり。出汁は淡くてモヤッとしている。麺は、日本人の感覚で言うと、細うどん。稲庭うどんくらいの太さ。モチモチ感はあまりなく、比較的やわらかい。トッピングは、刻み揚げ、カニカマ、刻み海苔、春菊。かけうどんに相当するメニューだが、結構賑やかな一杯だった。パンチャンは、タクアン漬けのみ。こちらは日本で食べるのとほとんど変わらない印象。う~ん、キムチの方がよかったな。一方のマンドゥは、ジャンボサイズで具材(あん)がぎっしり。それが5個も出てきた。朝食なら、これだけで満足できるかもしれない。あんは豚肉ミンチが中心で、いろいろな薬味を利かせてあり、複雑な味わい。強烈なクセではないので、日本人の舌にも合う。皮は薄いのにモチモチ感が強く、チーズみたいに伸びるように感じられるもの。これも、独特な食感ではあるが、日本人も特段抵抗なく食べられるだろう。とても美味しい。しかし、問題はタレだ。日本の餃子のタレは「醤油+酢+ラー油」が基本となるが、この店のマンドゥのタレは甘く、キムチのような乳酸系の酸味がある。そして、塩気が弱い。これは、日本の餃子のタレを使った方が美味しく食べられるのではないかと思った。あるいは、タレをつけずにそのまま食べた方が、少なくとも日本人は美味しく感じるように思う。価格は、街なかの大衆食堂よりはやや高いが、釜山駅「関西うどん(간사이우동)」よりはだいぶ安かった。停車場麺が5000ウォン(≒450円)、マンドゥが3000ウォン(≒270円)。うどんはあまり安くないけれど、マンドゥの安さに感激。これ、日本で食べたら、ファスト系の店でも4~500円はすると思う。
  平日10:00頃の訪問で、先客0・後客1。私が入店したとき、店員のおばちゃん2人が客席で向かい合って食事をしているところだった。この店では、日本語どころか英語もまったく通じない。完全に韓国語のみ。そのため、注文や支払いに若干苦労した。おばちゃん2人がかりに加えて、ちょうど店の入口付近に来ていた駅舎内清掃のおばちゃんまで加わって説明してくれるのだが、まったくもって何を言っているのか分からなかった。最終的には写真を指差して注文することができたのだけれど、注文完了までに3分くらいかかったし、全メニューの概要を把握するには至らなかった。幸いだったのが、店員のおばちゃんがとても親切というか、少なくとも短気ではなかったこと。これが、世話焼きで有名な韓国の「オモニ」なのだな。全然関係のない清掃員まで加わってくるってのが、すごいね。日本人に対する嫌悪感など微塵も感じられなかったし、気持ちよく食べることができた。


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★太和江駅(韓国。国鉄東海線)
「李舜臣(이순신)」  実食日:2019/1

  太和江駅は、かつて「蔚山駅」を名乗り、蔚山広域市の代表駅だった。近年KTX(新幹線のようなもの)の蔚山駅が開業したことで太和江駅に改称し、代表駅の座から引きずりおろされた形になっている。ちなみに、内陸部にあるKTX蔚山駅は、海沿いの太和江駅からではとても歩けないくらい離れている。直線距離でも20kmくらいありそう。中心市街地には太和江駅の方が近いのだけれど、ソウルなどへ出るとなるとKTXの方が圧倒的に便利なので、中心市街地が内陸側にシフトしつつあるのだろう。
  店は、改札外、切符売り場の向かいにある。テイクアウトのトーストサンドがメインの軽食スタンドだが、イートインも可能で、ラミョン(라면)の扱いがあるので、当サイトの掲載基準を満たす。イートイン席は少なく、窓際の椅子付きカウンター5席のみ。口頭注文で、先払い。使い捨ての食器で提供されるので、返却は基本的に不要な様子(使い捨て容器はごみ箱に捨て、トレーだけ受渡口に返す)。なお、店名の李舜臣は、16世紀に活躍した李氏朝鮮の将軍の名。韓国では英雄視されている偉人だが、最後には日本軍(豊臣秀吉軍)との戦いで非業の戦死を遂げる。太和江駅がある蔚山市は慶長の役(豊臣軍の第二次朝鮮出兵)で戦場になった土地とはいえ、英雄の名をそのまま店名にするとは、いい度胸だ。
  ラミョンに和訳を当てるなら「ラーメン」になるのだが、どちらかというとインスタントラーメン(即席スナック麺)を指す場合が多い。この店で提供しているラミョンも、たぶん農心の「辛ラーメン」だと思う。ただし、飲食店でインスタントラーメンを提供する場合には独自のアレンジを施すのが一般的で、この店でもメニューは玉子ラミョン(계란라면)とチーズラミョン(치즈라면)というラインナップになっていた。私は、玉子ラミョンを選択。玉子は、生でも茹ででもなく、かき玉だった。インスタントラーメンはスープに棘があるので、かき玉でまろやかさを演出するのは理に適っていると思う。ちなみに私は、自宅でインスタントラーメンを作るときにも、かき玉仕立てにすることが多い。玉子以外の具材は、ニラ(細ネギかも?)のみ。あとは、もともと粉末スープの中に入っているものであろう椎茸片など。これで3500ウォン(≒315円)は、やや高いようにも感じる。ただ、海外では意外とインスタントラーメンが高級品として扱われることが多い(香港の麺を選択できる飲食店では、生麺よりインスタントラーメンの方が高いのが一般的)から、まぁ納得できる範囲内だ。乗降客がそれなりに多いわりに駅なかや周辺には飲食店が少ない(駅前広場がやたら広く、市街地まで少し距離がある)ことだし、需要はそこそこありそうだ。
  平日18:00頃の訪問で、テイクアウト客を含めて先客2・後客4。このうちイートイン客は、先客1のみ。ラミョンではなくトーストサンド(토스트)を食べていたのだが、注文後に焼いているようで美味そうだった。ハム玉子サンドで2000ウォン(≒180円)だから、ラミョンより割安感がある。これも食べればよかったなと、ちょっと後悔している。


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★釜山駅(韓国。国鉄京釜線、京釜高速鉄道、釜山地下鉄1号線(釜山駅駅))
「関西うどん(간사이우동)」  実食日:2019/1

  改札外、国鉄(KORAIL)駅舎1階。韓国国鉄の改札は無人式で、自動改札すらないフリーパスの信用乗車方式。だから、釜山で下車する予定でなくてもいったん改札を出て食べに行くことが(物理的には)できてしまう。メイン通路からは外れていて、あまり人通りの多くない場所にある。いわゆる現地法人の和食店。日本式のうどんをメインに、トンカツや鰻丼なども扱っている。間口が狭くて奥に長い店内に入ると、左右の壁際にテーブル席がズラリと並んでいる。ざっと数えて、席数は30くらい。右側中央くらいのところに有人レジがあり、ここで口頭注文。配膳は店側でやってくれる。フロアの奥の方に返却口らしき場所があったので、返却はセルフなのだろうと思って持って行ったら、店員が慌てて受け取りに出てきた。どうやら、席に残したまま退店してよかった模様。
  うどん(우동)がメインの店なのだが、そばの扱いがあったので、ここでは「かけそば(온모밀)」を実食。麺は、音威子府そばを連想させるような色黒のもの。しかし、食べてみるとあまりそばの香りはない。そばの香りというよりは、ちょっと埃臭いようなイメージ。麺の色は、おそらくヒジキか何かで着色しているものだろう。食感は、コンニャクとゴムの中間くらい。グニュッとした歯ごたえで、あまりそばらしいものではなかった。つゆは、かなり薄味。ほんのりと魚介系の出汁が漂うのだが、淡すぎてどんな出汁なのかはわからないレベル。同日連食した中央駅「キムパプ一番地(김밥 일번지)」のウドンも薄味だったし、韓国の麺料理は全体的に薄味なのかな? トッピングは、三角形のさつま揚げのようなもの、刻み揚げ、ちくわ、おでん玉子、揚げ玉、刻み海苔、春菊片。「かけそば」を謳いつついろいろなトッピングが乗るのは、中央駅「キムパプ一番地」と共通。パンチャンも付く。今回は、白菜キムチと角切りのタクアン漬けが付いた。白菜キムチは、すりおろしたナシかリンゴを使っていると見え、辛みの中にまろやかな甘さも介在していた。唐辛子の辛みが際立っていた「キムパプ一番地」のカクテキとはまったく異なる風味だ。値段は、高い。海外の和食店は概して高いものではあるが、この店も例に漏れず。簡易的な一杯なのに、かけそばが7000ウォン(≒630円)もした。ちなみにうどんは6000ウォン(≒540円)。日韓融合的なメニューに、ビビムそば(비빔모밀)7000ウォン(≒630円)あり。ビビンバとそばの融合メニューだ。ご飯ものは、トンカツ定食(수제생돈가스)は9000ウォン(≒810円)、うなどん(장어덮밥)は11000ウォン(≒990円)。韓国語には「ツ」の発音がないから、トンカツは「トンカス(돈가스)」になってしまうようだ。全体的に高いけど、どちらかというと麺類よりご飯ものの方が価格に見合っているように感じる。水はセルフで、コップは金属製。
  平日17:30頃の訪問で、先客4・後客0。空いているね。ところで、私が渡航前に勉強した限りでは、韓国語で「そば」は「メミルグクス(메밀국수)」という認識でいた。しかし、この店ではそばを「モミル(모밀)」と表記していた。日本でも「ラーメン」と言ったり「中華そば」と言ったりするから理解できなくもないんだけど、韓国語に自信がない(というか、読めるだけでほとんど話せない)私は、表記が揺らぐと途端に分からなくなる。統一は、無理ですかねぇ。


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★西門市場駅(韓国。大邱都市鉄道3号線)
「自然粉食(차연이분식)」  実食日:2019/1

  駅の西側に広がっている、大邱市を代表する市場「西門市場」内。市場内での詳しい行き方は説明できない(路地がかなり複雑に入り組んでいるため)のだが、露天形式の簡易的な飲食店が整然と並んだ区画にある。全部で10店舗ほど並んでいただろうか。これらの簡易的な飲食店は、韓国では「粉食(분식)」と呼ばれる。日本に例えるなら、屋台のイメージに近い。よくよく見ると、L字型のカウンターキッチンにはキャスターが付いていて可動式になっている。固定店舗ではなく、いつでも移動できるし、撤退もできるわけだ。だから、もしかしたら日によって店の並びは変わるのかもしれない。その中で、私は韓国式うどんのカルグクス(칼국수)を提供している「自然粉食」に寄ってみた。客席は、長椅子一列のみ。4人くらいで満席になる。席に着くと、足元に置いてあったストーブをこちらに向けてくれる。1月の韓国はかなり寒いのだけれど、屋台群がある区画は熱気に満ちていて、ストーブの熱を直に受けるとむしろ暑い。システムは、口頭注文で後払い。日本語はもちろん、英語もほとんど通じない。店名を表示している札にメニューが一部記載されているので、韓国語を話せないのならそれを指さすのがいちばん手っ取り早く注文できる方法だろう。あるいは、料理名だけでも韓国語を覚えておくと、よりスムーズだ。
  出来あがるのを待つ間に、大きな鉄製のボウルに入ったシシトウ(生)が差し出される。早口の韓国語で何か言われたがまったく意味は分からず。おそらく、「自由に食べてね」といったところ。甘辛い味噌を付けてポリポリかじっていると、カルグクスが出来あがった。麺はあらかじめ茹で置いてあるようで、調理は速い。待ち時間は1分か2分くらいだったと思う。こちらも、鉄製のボウル入り。麺のイメージは、「コシのない細うどん」。舌触りツルツル。最近食べた中では、徳島県内陸地方の「半田そうめん」に近い印象。とても量が多く、1杯で充分お腹が膨れる。そしてつゆが、日本式のうどん(우동/가락국수)と決定的に違っていた。醤油系ではなく、ほとんど色のついていない塩味なのだ。塩味といっても塩気はかなり薄く、とてもあっさりしている。かなり呆けた味だと言ってもいい。卓上に長ネギを漬けた辛みダレがあり、これを加えることでいくらか呆け感が解消される。あるいは、パンチャンのカクテキの汁や、シシトウに付けた甘辛い味噌を加える手もある。具材は、ニラ(細ネギ?)、すりゴマ、細切りのキュウリのような野菜(冬瓜?)のみ。これまでに韓国で食べた麺料理とくらべて、とてもシンプルというか、質素だ。日本の「かけうどん」のイメージに近い。価格は、屋台ならではの安さ。カルグクスは3500ウォン(≒315円)で食べられる。かけうどんと考えるとそう安くもないけれど、なにしろ量が多いし、パンチャンも付く。トータルで考えれば、安く感じる。箸は鉄箸。飲み水用のコップも鉄製。
  平日10:30頃の訪問で、先客0・後客1。屋台群の中でもかなり奥まったところにあった店舗なので、空いていた。後客は白髪のお婆ちゃんで、わずかながら日本語を話せる人だった。おかげで、店主のおばちゃんとも少々のコミュニケーションがとれて助かった。少なくともこの店で出会った2人に関しては、日本人に対する敵対心のようなものは微塵も感じなかったし、むしろ「世話焼きオモニ」モード全開で、箸を口に運ぼうとしているそばから話しかけてきて、なかなか箸が進まず、食べきるのにかなり時間がかかった。速食向きの店のはずなのだけれど。でも、心情としてはとても嬉しかった。個人レベルではとても友好的なのに、どうして国家レベルになると急に対立の構図になるのか、不可思議だ。


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★中央駅(韓国。釜山地下鉄1号線)
「キムパプ一番地(김밥 일번지)」  実食日:2019/1

  記念すべき、韓国で最初に入った飲食店。「キムパプ(김밥)」は韓国風海苔巻で麺類ではないのだが、キムパプ店では日本のうどんに近いウドン(우동)や韓国風うどんのカルグクス(칼국수)、ラーメン(即席スナック麺の場合あり)のラミョン(라면)などを扱う場合が多く、この店も例に漏れずウドンとラミョンを扱っている。場所は、駅と直結しているロッテ地下街の北側の端っこ。店内に入ってすぐ右手のレジで注文するのだが、配膳付き後払いのシステムをとっている。後払いならテーブルオーダーにしてほしいという思いもある(でないと、先払いなのか後払いなのかが分かりにくい)のだけれど、まぁその辺は郷に入っては郷に従えということで。客席はテーブルのみで、40席ほどある。
  ここでは、かけうどんに相当するウドンと、シンプルな韓国風海苔巻のキムパプを食べてみた。ウドンの麺は、太めでエッジのない丸麺。基本的に柔らかいのだが、芯の部分に少しだけコシを感じる。韓国風うどんのカルグクスにはこのコシがない場合が多いから、この辺りが大きな違いということになるだろうか。スープは、とてもあっさりしたもの。ほとんど色がついておらず、「塩味」と形容するのがもっとも適切であるように思う。出汁は淡く、トッピングの刻み海苔の香りが邪魔をしたこともあって、よく分からず。少なくともカツオ系ではない。かけに相当するメニューにもかかわらず、刻み海苔以外にもいろいろな具材が乗っていた。薄っぺらい三角形のさつま揚げ的なもの、三角形の油揚げ、ひと口大にカットされた春菊、そして刻みネギ。これで3500ウォン(≒315円)なら、まずまず安いと言えそうだ。一方のキムパプは、ゴマ油をたっぷり塗った太巻き。ご飯(酢飯ではない)と一緒に巻いてあったのは、玉子焼き、カニカマ、ゴボウ、青菜、その他いろいろ。とても具だくさんで、食べごたえがある。1本食べれば結構お腹が膨れる。この満足感にして、2000ウォン(≒180円)。これは格安だ。韓国での朝食は、毎日キムパプでもいいな。頼みもしないのに副菜(パンチャン。반찬)がいろいろ付いてくるのも、韓国流。キムパプに付いたのかウドンに付いたのか分からないのだが、カクテキとタクアン漬けがサービスされた。カクテキは、唐辛子一辺倒のドライな辛さ。この汁をウドンに加えると、単調な塩味スープの味を途中で変化させることができる。これだけ食べて、合計5500ウォン(≒495円)。日本なら、600円台くらいになりそうな内容だ。この1軒だけでは判断できない部分もあるけれど、大衆的な飲食店の物価は日本よりやや安いという仮説が立った。飲み水はセルフ(冷水器がある)。箸は鉄箸。キムパプはゴマ油でツルツルしているので、鉄箸だとやや食べづらい。重いし。スプーンからコップに至るまで、すべて金属製だった。スプーンはいいとして、コップが金属製だと飲むときに若干鉄臭さを感じる。これが苦手な人は、自前のカップを持って入る手もありそうだ。
  平日15:30頃の訪問で、先客4・後客2。中途半端な時間帯だったこともあって、空いている印象だった。どうでもいい話だが、ハングルの読み方だけを勉強して、単語を正確に頭に入れていなかった私は、店名の「일번」を「日本(일분)」だと勘違いしてしまった(どちらも、カタカナで表記すると「イルポン」になる)。ウドンを扱っていることだし、「もしかしたら日本人が営んでいるのかな」などと思ったり。帰国後に意味を調べて、自分の馬鹿さ加減を呪った。ハングルは、似た読み方をする文字が多いから、難しい。


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★東大新駅(韓国。釜山地下鉄1号線)
「キムパプ天国(김밥천국)」  実食日:2019/1

  駅ナカではないが、駅チカに大規模チェーン(韓国全土に店舗がある)のキムパプ店「キムパプ天国」があったので、これも韓国の大衆グルメに対する理解を深めるうえで必要と考え、一応押さえておこう。場所は、2番出口を出て直進(北へ)4分。大通り沿いだし、出口から一本道なので、迷うことはない。入店したら、各席に用意されている注文用紙に記入して店員に渡すシステム。配膳付き、下げ膳不要の後払い。客席は4人掛けテーブルのみで9卓(36席)。入ってすぐ左手に立ち食いカウンターのように見える場所があるが、これは客席ではないので注意を。店員の作業台だ。ここで、キムパプを巻いたり切ったりしている。
  ここで食べてみたのは、韓国式うどんのカルグクス(칼국수)と、野菜キムパプ(야채김밥)。まずは、カルグクスから。麺は、細平。大邱・西門市場の「自然粉食」と同じように、稲庭うどんを連想させるルックスだが、モチモチ感やコシはあまりない。スープも、「自然粉食」同様に塩味だった。醤油の香りはない。塩気は薄いが、「自然粉食」よりははっきりした塩味が感じられた。この店では玉子とじにしてあるので、蛋白質の旨みも強く感じる。あまり良い言い方ではないかもしれないが、フリーズドライの玉子スープに通じる味わいだ。そして、仄かに磯の香りも感じるなと思っていたら、麺の下からアサリが出てきた。味わいに厚みもあり、なかなか美味しい。基本的にはまったく辛くないのだが、丼の縁にコチュジャンのような辛み調味料が付いており、これを溶かしながら食べることで辛みを加えることができるし、味変にもなる。アサリ以外の具材は、ニラ(細ネギ?)、輪切りのズッキーニのような瓜系野菜、タマネギなど野菜いろいろ、刻み海苔。とても具だくさんで、量も多い。日常的に食べるなら、これ一杯で充分一食まかなえるだろう。一方の野菜キムパプは、日本人の感覚で言うとサラダ巻きに近い。ニンジンや大根などの煮物を中心に巻いたベーシックな太巻きキムパプに、生のレタスとマヨネーズを加えたものだ。煮物とマヨネーズという一見アンマッチな組み合わせだが、食べてみると意外に違和感がなかった。ほんのりと春菊やピーマンのような苦みも走る。ほろ苦さとシャキシャキ感がアクセントになって、とても美味しかった。ゴマ油は、それほど強くない。パンチャンは、カクテキとタクアン。カルグクスと野菜キムパプ、どちらに付いたのかは分からない。たぶん、何品注文しようが、ひとりにつきひと皿のパンチャンが付くのだろう。
  価格は、カルグクスが5000ウォン(≒450円)、野菜キムパプが2500ウォン(≒225円)。ノーマルなキムパプは2000ウォン(≒180円)、インスタントラーメンであろうラミョン(라면)は3500ウォン(≒315円)。 日本の立ちそばに比べるとやや高いのだけれど、ボリューム感が全然違うので、コストパフォーマンスでは日本の立ちそばをはるかに凌駕する。総じて満足度が高く、またチェーン店とは思えないほどしっかり作り込まれた味わいだった。想像するに、各店舗運営はオーナーが行うフランチャイズ方式なのかな。日本に例えれば、「ラーメンショップ」みたいなムード。全国チェーンなのにローカル感満載。また韓国に行く機会があったら、ぜひ他都市の他店舗でも食べ比べてみたい。箸は鉄箸で、各テーブルに造り付けの箸箱に入っている。最初この箸箱に気づかず、「箸はどこ?」とキョロキョロしていたら、おばちゃん店員がわざわざ厨房から出てきて箸箱を開けてくれた。ちょっと笑われてしまったけれど、世話焼きオモニはここでも健在だった。ちなみに、訪問時には店員が2人おり、おばちゃんの方は韓国語のみだが、もう一人の若い女性店員にはある程度英語が通じた。
  平日朝8:30頃の訪問で、先客0・後客1。このほかにお爺さんがひとり、隅っこの席でずっと新聞を読んでいた。テーブル上には何もなく、何かを注文した様子もない。なんとなく居座る常連客なのか、それとも店側の人なのか、少々気になった。たぶん、前者なのだろうな。


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★南港駅(台湾。台鉄西部幹線(縦貫線北段)、台北MRT板南線)
「洪祖師担仔麺」  実食日:2019/9

  改札階のワンフロア上、駅舎地下1階のグローバルモール内。フードコート状に飲食店が連なるエリアの、奥の方。あまり目立たないところにある。フードコートっぽい造りではあるが、どうも隣の店とは客席が分かれている様子。あまり店舗から遠く離れた席は利用しない方がよさそう。台南料理として名高い担仔麺をメインに扱う店だが、特段台南色を押し出しているわけではない。実は担仔麺を提供する店は台湾全土にある。ただ、南部と北部とでは仕様が異なるという。もちろん南部でも別途食べるのだけれど、比較の意味で北部でも一杯食べておこうということで、まずはこちらで。精算システムは、日本のフードコートに似ている。有人レジで先払い→バイブレーターで呼び出し。受渡しにバイブレーターを使う店は、フードコートであっても海外では比較的珍しい。配膳・下げ膳ともセルフ。
  担仔麺は、台湾料理の中では小吃に分類される料理。つまり、それ単体で一食まかなうものではなく、屋台などで食べる軽食、あるいはご飯ものなどとのセットで食べることが多い。魯肉飯とか餃子とか、新烏日「五花馬水餃館」で食べた蘿蔔糕なども小吃の一種だ。だから、ボリュームはわりと控えめ。今回は、他の店でもいろいろ食べたかったこともあり、単品で注文。値段は60元(≒222円)。街なかに比べると少し高い設定だが、日本の感覚からすると安い。このくらいの価格で一杯食べられると、台湾物価のありがたみを感じる。麺は、ちょっと甘みのある、コシのない中華麺。パッと連想したのは、姫路「えきそば」の麺だった。食感も風味も、非常に近い。スープは、ちょっと赤っぽくて辛そうに見えるのだが、実際には辛みはほとんどなく、純粋な塩味のイメージ。塩気は、台湾料理にしては結構強い方。加えて、おろしニンニクがトッピングされることもあって、ニンニクの香りがある。エビと思われる出汁が利いていて深みもあるので、これはなかなか日本人好みの味だと思う。具材は、モヤシ、ニラ、肉そぼろ、おろしニンニク、尻尾付きのむきエビ。肉そぼろの上におろしニンニク、その上にシャチホコみたいな形でエビを乗せるので、盛り付けが結構美しい。食べ進めるうちに肉そぼろがスープに拡散して、スープの味がエビ系から肉系に変化していく。このグラデーション的な変化も楽しかった。総じてとても簡易的な一杯で、麺だけでなく全体的に「えきそば」に近いものを感じる。駅なかでササッと食べるにはおあつらえ向きではないかと思う。なお、今回食べてみたのはスープ麺だが、汁なし麵タイプの担仔乾麺もある(60元)。套餐(セットメニュー)は案外高く、148元(≒548円)から。それなら、担仔麺に肉燥飯40元(≒148円)などの単品ご飯ものを追加した方がよさそう。冷水器や飲み水の無料提供はないので、持ち込むか、ドリンクを別途注文することになる。箸はエコ箸。レンゲは商品と一緒に自動的に提供。


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★松山駅(台湾。台鉄西部幹線(縦貫線北段)、台北MRT松山新店線)
「黒面蔡」  実食日:2019/9

  日本(愛媛県)の松山駅と姉妹駅関係を締結している、台湾の松山駅。台鉄だと台北から東へひと駅ということで、結構賑やかな市街地にあり、駅も立派。駅舎内には、飲食店だけでなく各種ショップがズラリと並び、日本的に言えば「エキュート」のような様相を呈している。当店があるのは、台鉄改札のワンフロア上、駅舎1階。MRTの改札は地下2階なので、2フロア上になる。ガラス張りのオシャレ系飲食店が並ぶ中、この店だけが間仕切りのない半露出店になっている。しかも、テラス席のようになっていて通路に完全に露出した客席まである。明らかに、ほかの飲食店とは毛色が違う。ここだけ簡易的、というイメージだ。「黒面蔡」は、台北市内を中心に店舗を展開するチェーン店。店舗によってメニューがだいぶ違うようだが、ドリンク類をメインとする店舗が多い。極端に言うと、テイクアウトスタイルのタピオカミルクティー店のイメージ。食事系メニューを扱う店舗では、煮込み料理の「滷味」などがメインとなることが多いようだ。松山駅の店舗では、滷味に加えて、ご飯や麺と副菜がセットになった套餐の扱いもある。麺類は套餐に入っている肉燥乾麺だけだが、駅ナカの簡易的な飲食店ということで対象に含めていいだろう。麺類メニューはひとつだけで選択の余地がないので、半ば自動的に肉燥乾麺套餐139元(≒514円)をオーダー。有人レジで口頭注文。英語は、たどたどしいがどうにか通じる。先払いで、バイブレーターを使って受渡。下げ膳セルフ。
  メニュー表に「油麺使用」と注記されていたので、なんとなく香港で食べた油麺を想像していた。即ち、太めでややボソッとする、刀削麺みたいな食感の中華麺。出てきたのは、やっぱり太打ちで、デュラム小麦を使ったパスタのようにボソッとする食感の麺だった。基本的に、これが油麺なのだろうな。麺自体に甘みと香ばしさがあり、味付けが薄くても充分美味しく食べられる麺だ。肉燥“乾麺”ということで、スープはない汁なし麺。温かい麺に具材をトッピングするスタイル。トッピングは、肉そぼろとモヤシ、煮玉子(まるごと1個)。肉そぼろは、例によって味付け薄め。量もさほど多くないが、脂身が結構入っていて旨みが強い。風味のある麺の助けもあって、あまり物足りなさは感じなかった。また、比較的味の濃い煮玉子が添えられているのもありがたかった。台湾の煮玉子は、日本のと違って、基本的に固ゆで。おでんの玉子を想像してもらえばいいだろう。セットになっている副菜は、メニュー表上では「海瑞摃丸湯」と「青菜」とある。しかし、実際に出てきたのは摃丸入りのスープとキャベツ炒めだった。スープは文字どおりだから問題ないが、青菜がキャベツに化けたのはちょっと残念だった。スープには、摃丸ひとつと細切れの豚肉、白菜に似た葉物野菜が入っていた。摃丸は空港で食べたものと似たようなものだが、空港のより塩気が控えめだった。ソーセージ的な味覚で、最強に美味い。豚肉要らないから、摃丸を2個入れてほしかったな。箸は使い捨ての竹箸で、商品と一緒に1膳提供。使い捨てのレンゲもセットで付いてくる。
  新烏日「五花馬水餃館」で食べた套餐と似たセット内容だが、価格はこちらの方がだいぶ高い(差額は9元だが、新烏日はドリンク込み)。少し高級路線というか、ニュータイプの店なのかな。新烏日は従来型の飲食店がファスト化したイメージで、こちらはモダンファストのような。日本のハンバーガーに例えるなら、ドムドムとフレッシュネスバーガーみたいな違いがあるような印象を受けた。個人的には、新烏日「五花馬水餃館」の方が好みだ。


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★台北駅(台湾。台鉄西部幹線(縦貫線北段)、台湾高速鉄道、台北MRT淡水信義線・板南線、桃園MRT機場線)
「湯布院本川製麺所」  実食日:2017/10

  なんだか仏教寺院のような、荘厳な建物の台北駅。日本でいうところのJRに相当する台鉄と、新幹線に相当する高鉄、そして地下鉄に相当する台北MRTが乗り入れる。台湾の一大鉄道拠点だ。ちなみに、MRTは淡水信義線・板南線・機場線の3路線が乗り入れているが、このうち機場線は少々離れたところで発着し、駅舎も別になっている(地下通路で直結)。MRT同士の乗り換えであっても、機場線が絡む場合には一度改札を出る必要がある。これがちょっとめんどい。機場線以外の路線が乗り入れる台北駅は地上2階建てで、長方形の形状。中央部分に大きな吹き抜けがあり、その周りをぐるっと回廊形式で通路が巡り、その通路に沿っていろいろな店舗が連なっている。台湾式の駅弁(臺鐡便當)や、日本式の駅弁(招来日日便當)の店もある。そして、駅舎の南西端にあるのが、「湯布院本川製麺所」だ。駅構内にあり、日本式のそばを提供する簡易的な店。台湾版の、純然たる「駅そば」だ。ちなみにこの店は、日本企業が出店しているもの。私が把握している限りでは台北市内に2店舗を構えている(もう1店舗はMRTの忠孝復興駅が最寄りになる微風廣場にあるが、未食)が、日本国内には出店していない。台湾まで行かないと食べられないジャパニーズ駅そばなのだ。システムは、有人レジで口頭注文・先払い→席で待っていれば配膳してくれる。店頭のショーケース内に天ぷらなどの単品トッピングがいろいろあり、現物を見て単品追加することができる。英語が通じるので、身振り手振りを併用すれば簡単に注文でき、ハードルは低い。客席はテーブル席が中心で、20席余りくらい。加えて、店の外側(駅通路に露出)に椅子付きカウンターが5席。カウンターで食べようと思っていたのだが、テーブルを勧められたので、従った。
  私は、牛肉蕎麥(そば。うどんは「烏龍」と表記)に、単品でエビ天を追加。麺は、茹で麺っぽい食感だが、台湾に茹で麺のそばがあるのかどうか甚だ怪しいので、冷凍麺かもしれない。そばの香りはそれほどないけれど、つゆとのマッチングは悪くない。そのつゆは、あまり出汁が利いていないもの。カツオ系はまったく感じず、どちらかというと旨み系。だけど、とにかく淡い。だから、ある程度味の強いトッピングを乗せないと、全体的にモヤッとした印象になる。その点、牛肉をトッピングすれば強烈な旨み・甘みが加わり、全体的にマイルドになって美味しくいただける。つゆ本来の味が分かりにくくなるという側面はあるけれど、どういうわけか半分くらい食べ進めたところで頼みもしないのにつゆを注ぎ足しに来てくれたので、つゆ本来の味もよくわかった。注ぎ足す際に「味は大丈夫ですか?」と聞いてきた(ここだけ日本語だったが、基本的に日本語は通じない)ことといい、どうも日本人客にはかなり気を遣っている様子だ。単品追加したエビ天も、ショーケース内に揚げ置きがたくさん並んでいたのに、わざわざ注文後に揚げたものを持ってきた。日本人に対して、クレーマーのイメージがあるのだろうか。エビ天はなかなか大きなサイズで、「エビフライ?」と感じるほどまっすぐに伸びていて衣もきれいに整えられている。ネギは、青ネギだった。値段は高く、牛肉蕎麥で170元(≒680円)、エビ天単品が45元(≒180円)。フィリピンの「富士そば」や「KOMORO dining」もそうだが、海外で日本式のそばを食べると高くつくことが多い。食材を日本から送れば輸送コストがかかるし、現地生産だと大量生産できないからやっぱり単価が高くなる。仕方ない部分だろう。メニューはわりとオーソドックスで、日本人にもお馴染みのものが多い。ただ、日本語はもちろん英語の表記もないから、注文口の上部に掲示された写真を参考にするといい。「豆皮」はきつね、「海帯芽」はワカメ、「猪排」はトンカツ。「月見」はそのまんまで卵だが、写真を見た限り温玉になる様子。ご飯ものとのセットメニューもあるが、だいたい300元(≒1200円)前後なので、ちょっと。単品の牛肉●(口へんに加)哩蕎麥(牛肉カレーそば。170元≒680円)あたりが一番高コスパだろうか。箸はエコ箸。打てない漢字が出てきたところで事後の断りになるが、台湾では一見日本で一般的に使われている漢字と同じに見えても、実は微妙に違うということがよくある(「正字」が多く使われている)。当サイトではできるだけ現地表記で記載しているが、物理的に打てない漢字(あるいは、環境依存文字のため化けてしまう漢字)については、俗字の形が極端に変わらない場合にはそれを代用し、大きく異なる場合及び俗字がない(または分からない)場合には「●(△へんに☆)」などと記載することにしている。「海帯芽」なども微妙に現地の漢字とは違っているのだが、ご了承を。
  平日17:00頃の訪問で、先客1・後客3。値段的に少々高めということもあり、決して多客という感じではない。隣には寿司屋があり、従業員は両店間を行ったり来たりしている。同経営なのだろうか。タイミングによっては、兼務ということもあるのかもしれない。営業時間は10~22時。日本の駅そばと違って朝はやっていないので、注意が必要。なお、駅舎の2階には大規模なフードコートがある。こちらにも麺類を扱う店が入っていてなかなか楽しいのだが、全面的に写真撮影禁止になっているのでご注意を。台湾での交通系の罰金・罰則は、日本人から見ると殺人的とも思えるほどに厳しい。なにしろ、MRTの車内(というか改札内)で水を飲んだだけで、1500~7500元(≒6000~30000円)もの罰金が科せられるのだ。


※残念ながら、閉店していました。跡地は、中津唐揚げの「鶏笑」です(2019/9、確認)。

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「花蓮扁食」  実食日:2017/11

  台北駅に直結した地下街内。西側の端っこの方、Z5出口の近く(改札から行くと、Z5出口に通じる階段の少し先)。台湾でよく見かける、間仕切りのない簡易的な大衆食堂。どちらかというと、地下街よりも「老街」(昔ながらの商店街)に多くあるタイプの店なのだが、駅そばを中心に巡っている私の目で見ると、駅ナカにこの手の店があっても違和感はない。店名のうち「花蓮」とは、台湾東海岸にある街の名。「扁食」は、ワンタン(「雲呑」と同義。台湾では「扁食」と表記する)のこと。つまり、花蓮風(?)のワンタン店ということになるか。ただ、メニューはワンタンばかりではなく、まぜそばスタイルのものを含めた麺類全般に、スープ類や一品料理なども扱っている。精算システムは、間口左側の有人レジで口頭注文・先払い→配膳付き・下げ膳不要。英語・日本語とも通じないが、レジ脇にメニュー表が出ているので、指さし注文が可能。
  実食したのは、鮮肉扁食麺(70元≒280円)。分かりやすく和訳すると、「肉入りワンタン麺」。というか、スープには薄~い塩味がついているだけで、極端にあっさりしているので、「麺が入ったワンタンスープ」と言った方がいいかもしれない。その麺は偏平形で白っぽく、あまり味がない。モチモチせず、ちょっとボソボソする食感。ワンタンは餃子並みに肉がたっぷり入ったものが5個トッピングされていた。ひと口で食べられるサイズではあるが、箸で半分に切って、中にスープを含ませて食べる手もある。ワンタンはは麺・スープと違って、旨みたっぷり。チンゲン菜(のような青菜)で、わずかばかりの彩りが加えられていた。全体的に味が薄いと感じた場合には、各席や厨房脇のカウンターに置かれた各種調味料で調節することが可能。それにしても、これが280円程度で食べられるのはありがたい。値段は全体的に安く、まぜそばスタイルの麻醤麺は40元(≒160円)、魚のすり身団子がトッピングされる魚丸麺は60元(≒240円)だ。毎食こういう店を利用すれば、台湾旅行はかなり安くあげられそうだ。箸はエコ箸で、商品と一緒に配膳される。
  なお、この店のすぐ近くには、同じようなスタイルの「牛大娘」という店もある(未食)。ざっとメニューを見た限り、「花蓮扁食」はワンタン麺と比較的あっさり系のメニューが中心なのに対し、「牛大娘」は牛肉などを使ったこってり系のメニューが中心で、値段もやや高い(とはいえ、日本円換算で200~350円程度で食べられる)。訪問時には、「牛大娘」の方が圧倒的に賑わっていた。次回台湾を訪問するときには、「牛大娘」にも入ってみたい。


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「老菫牛肉麺」  実食日:2019/9

  台北駅に5つある地下街のうち、もっともモダンで落ち着いた印象の「站前地下街」にある。台北駅の地下街、それぞれアルファベットを付して識別しやすくなっている。站前地下街は、「K区」になる。他の地下街(R区、M区、Y区、Z区)のような雑然とした印象がなく、やや暗めの照明もムーディーで、ワンランク上の印象を与える雰囲気。その中にあるこの店も、間仕切りのない半露出店ながら少々高級感が漂っている。実際の価格は、平均的な駅ナカ簡易飲食店と比して2~3割高といったところだ。壁面には数々の賞を受けた旨の掲示があるので、なかなかの名店なのかもしれない。向かって右の目立つところにレジがあり、ここで口頭注文・先払いしたくなるところだが、実際にはまず任意の席に着き、各席に用意されている注文用紙に記入して店員に渡し、同時に支払うスタイルだった。それだとレジを設ける意味がないので、もしかしたら閉店前ギリギリの訪問だからこの対応だったということかもしれない。配膳してくれ、下げ膳は不要。客席はテーブル席が20くらいと、椅子付きカウンターが10くらい。訪問時には、椅子付きカウンターが使用不可になっていた(おそらく閉店間際だったため)。
  ここは、店名にあるとおり牛肉麺をメインに扱う店。ガイドブックなどを紐解くと、たいてい「台湾と言えば牛肉麺」的に書かれている。実際に台湾を旅するとそこまでのソウルフード的な印象ではないので、日本人受けがよい台湾料理ということだろうか。牛肉麺は、大きく分けると3種類ある。もっともベーシックなのは、醤油味の紅焼牛肉麺。次にメジャーなのが、塩味スープの清敦牛肉麺。そして、トマトスープやカレースープなどの変化球牛肉麺。今回は初めての牛肉麺だし、しかもここは名店っぽいので、まずはベーシックな紅焼牛肉麺をオーダーだ。牛肉麺は、ひと言でいえば牛肉と牛のスープで仕立てたラーメンだ。台湾では牛肉がかなり高価なものなのか、他の簡易的な麺類に比べて値段がかなり高い。100元を切る店はほとんどなく、120~150元くらいが相場。やや高級感のあるこの店では、170元(≒629円)だった。高値といっても、牛肉入りのラーメンが600円少々だから、日本人の感覚で考えればむしろ安い。日本で牛肉入りのラーメンを食べたら、平気で1000円超えになりそう。
  出てきた紅焼牛肉麺には、ブロック状の牛肉がゴロゴロとトッピングされていた。ひと口大の食べやすいカットで、7個。なかなかボリューム感がある。牛肉は、カレーやシチューなどによく用いるスネ肉だろう。質感のある赤身とコラーゲン質を含む脂身があり、食感と旨みのバランスが良い。しっかり煮込まれているためやわらかいのだが、筋繊維を噛み切る食感の醍醐味は残してあり、なおかつコラーゲン質と混ざることでパサつきも抑えてあるという、絶妙な塩梅。これは文句なしに美味い。麺は、太い平打ち麺。ゆるく縮れておりスープがよく絡むし、ほどよいコシがあって食べごたえも充分。ラーメンと言えばラーメンだが、うどんと言われればうどん。中間くらいの印象だった。スープは、塩気はあまりなく薄味なのだが、醤油のコクが食欲をそそる。台湾の醤油は、日本のものほど香りがなく、塩分も控えめなので、コクが際立つ。すべての要素がハイレベルで、高値であるだけの価値は充分に感じられる一杯だった。170元出すのはちょっと、という人にも朗報を。牛肉を乗せるとどうしても高くなってしまうのだが、トッピングを省いた(あるいは、別のものに置き換えた)牛湯麺なら、100元(≒370円)からある。安く上げたい場合には、ともに100元の油豆腐牛湯麺(揚げ豆腐のトッピング)か蕃茄牛湯麺(トッピングはトマト)あたりが狙い目になるのではないだろうか。箸は、半個包装のエコ箸。鉄箸ではなく、日本で一般的に用いられているような漆器風樹脂素材のものだった。


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「牛大娘」  実食日:2019/10

  台北駅地下街Z区の西側端っこにある、紅焼牛肉麺をメインに麺料理を手広く扱う簡易的な店。上記「花蓮扁食」の隣だから、簡易的な麺類店が2軒並ぶ形になっている。Z区地下街は飲食店が少ないので、この両店は貴重な存在。とはいえ、台鉄や高鉄、台北MRTからだと少々距離があり、あまり便利な立地ではない。寄りやすいシチュエーションは、桃園MRT⇔台鉄・高鉄・台北MRTを乗り継ぐときになるか。乗り換えルートからちょっとだけ外れた場所になるので。間仕切りのない半露出店で、長椅子のテーブル席と椅子付きカウンターがある。席数は、計30くらいだろうか。厨房の片隅に有人レジがあり、ここで注文。英語が通じなかったので、壁に掲示されたお品書きで、指さし注文。先払いなのか後払いなのかが分かりにくかったのだが、他客が後払いしていたので私もそれに倣ってシレッと後払いにした。配膳してくれ、下げ膳も不要。オープン厨房なので、調理シーンを一部始終眺めていられる楽しさあり。
  この店の紅焼牛肉麺の価格は、125元(≒463円)。上記「老菫牛肉麺」に比べ、全体的に庶民志向だということが分かる。牛肉麺同士で食べ比べるのもいいのだが、もっとチープなメニューとして、いわゆる牛肉ではなく牛すじや牛腱などの安い部位に置き換えたメニューもいろいろ扱っていたので、紅焼牛腱麺を食べてみることにした。これなら、100元切りの85元(≒315円)で食べられるのだ。5分ほどで提供された紅焼牛腱麺には、血合いのような部位の牛肉がたっぷりトッピングされた。併せて、チンゲン菜も乗っている。ボリューム感は紅焼牛肉麺とさほど変わらない。肉の部位が変わるだけで40元も値が下がるのなら、こちらを選択する価値は充分ありそう。麺は、おそらく手延べ。太さや形状が、微妙に揃っていない。平均すると3ミリ角くらいの太麺。あまりモチモチ感はなく、ややモソッとした歯ごたえ。それでも、小麦に特有のほんのりとした甘みがあって、まずまず美味しかった。スープは、塩気控えめの醤油ベース。コクが深く、薄味でも美味しい。牛腱は、ググってみたところ足の付け根部分の肉だそう。ん? それってスネ肉じゃないの? よく分からん。食べてみた印象としては、あまり肉っぽくない。筋っぽくもない。ジュワッと柔らかく、筋繊維の食感があまりない。スネ肉ほどの旨みはないが、パサつかないので食べやすいとも言える。チープな食堂らしいメニューではないかと思う。ちなみに、肉を乗せない牛肉湯麺(牛スープのかけラーメン)なら、60元(≒222円)で食べられる。麺類の最安メニューは古早乾拌麺(いわゆる台湾まぜそば)で、45元(≒167円)だ。全体的に、街なかの簡易的飲食店とさほど変わらない価格帯。こういう店は、駅なかでは稀少だ。麺類の他には、スープ類と点心類がある。ご飯ものやセットメニューは設定されていないが、30元(≒111元)の貢丸湯をまぜそばと一緒に注文すれば、高コスパなセットを再現できるだろう。箸は鉄箸。鉄製のスプーンが、レンゲ代わりに付いてくる。この店、気に入った。「老菫牛肉麺」よりも駅そばっぽくて、私好み。また寄りたい。


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「花蓮扁食」  実食日:2019/10

  台北駅から北へ広がる中山地下街(R区)にある、ワンタンを中心に提供する簡易的な飲食店。間仕切りのない、半露出店だ。R区にはあまり飲食店が多くないし、MRT改札から比較的近いエリアなので、そう迷うことはないだろう。ちなみに中山地下街は、隣の中山駅までずっと続いており、中山駅近くまで行くと書店街になる。「花蓮扁食」は、2017年に同じ台北駅の地下街(Z区)で、一度食べたことがある。店の雰囲気やメニュー構成に鑑みても、同じチェーンだろう。2017年には鮮肉扁食麺(肉ワンタン麺)を食べているので、今回は鮮蝦扁食麺(海老ワンタン麺)を食べてみることにした。システムは、口頭注文→配膳→下げ膳不要→有人レジで後払い。先払いなのか後払いなのかが分かりにくい構造だが、他客がみな後払いにしていたので私も倣った。客席は、長テーブルのみ。30席くらいあるだろうか。
  結論から言うと、ベース部分はZ区の店舗と変わらない印象だった。ただし、丼が違う。Z区ではすり鉢型の丼を使っていたが、こちらは深鉢型。Z区で実食してから2年経っているので、経時変化の可能性もあるが。麺は、色白の細麺。スープは極めて薄味というか、ほとんど味がついていない。台湾人はどうしてこうも薄味が好きなのだろうかと思っていたら、他客がレジ前にある調味料コーナーでいろいろ足していた。なるほど、客が自分好みにアレンジするシステムなのか。私も見よう見まねで醤油らしき黒い液体と唐辛子ベースの辛みダレを加えてみた。これでいくらか味は付いたのだが、それでもなお薄い。台湾の醤油は、コクは強いものの塩気が控えめなので、なかなか塩辛くならないのだ。ただ、それ以上入れると醤油の香りで画一的な味になってしまいそうだったので、ここまでで諦めた。トッピングは、わりと大きなむきエビがたっぷり詰まったワンタン5個と、チンゲン菜のような青菜。ワンタンはゴルフボールほどの大きさがあり、アツアツなので口内やけどに注意。ひとつまるごと口の中に放り込むのではなく、かじるようにして食べた方が無難。エビはプリプリで、問題なく美味しい。これだけ豪華な一杯で、価格は90元(≒333円)。日本で食べたら800円はするであろう内容。物価の安さのありがたみを、強く感じた。ちなみに、2年前にZ区の店舗で実食済みの鮮肉扁食麺は、80元(≒296円)。2年前には70元だったので、最近値上げしたようだ。それでも、日本人の感覚で言えば異様とも思えるほど安い。もっと安く抑えるなら、貢丸麺60元(≒222円)あたりが魅力的。いちばん安い麻醤麺なら、なんと40元(≒148円)で食べられる。手軽なご飯ものの魯肉飯30元(≒111円)と一緒に注文してセットメニューにするのもいいだろう。自分好みの調味料配合を見極める意味も含めて、もう何回か寄ってみたい店だ。


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「米家庄」  実食日:2019/10

  台鉄の台北駅は、2階がレストランフロアになっていて、とても賑やか。個別飲食店が多数あるほか、フードコートも2か所設置されている。フードコートの方が駅そば要素が多いから、こちらを中心に。片方(名称失念)はカレーなど多国籍な料理を提供する店が並び、もう片方の「台湾夜市」にはトラディッショナルな台湾料理を扱う店舗が多い。当然、私が向かうのは「台湾夜市」の方だ。名称のとおり、台湾名物の夜市(屋台)をイメージしたフードコートで、各店が扱うメニューも屋台の定番料理が中心。屋台は雨が降ったらどうしようもないが、堅牢な台北駅の2階なら天候を気にせず楽しめる。この場所にある意義がおおいに感じられる。6軒連なる店舗をひととおり見て回ったところ、4店舗で麺類の扱いを確認。このうち「旭麺麺」は複数店舗で実食済みの牛肉麺がメインなので、今回はパス。「麻佬大」は、私があまり得意ではない麻辣系がメインなので、これもパス。台南担仔麺がメインだが屋台料理の定番でもある麺線も扱う「洪十一」にするか、それとも客家米苔目がある「米家庄」にするか。麺線もどこかで食べないとなぁと思いつつ、よくよく見れば「麻辣」の表示があったのでパスし、今回は「米家庄」へ。有人レジで先払い。その場で待って受渡し。英語は、怪しいけれどなんとか通じるレベル。客家米苔目は、70元(≒259円)。屋台なら50元くらいで食べられるメニューなので、やや割高な設定になっている。まぁそこは台北駅の2階だから。賃料が高く、それが売価にも反映されているのではないかということで軽く流す。乾麺(まぜそばスタイル)・湯麺(スープ麺スタイル)を選択可。私は、湯麺で。
  米苔目は、押出式の米粉麺を使った大衆料理。日本ではあまり馴染みがないように思うが、台湾の場末の飲食店などではメニューに入っていることが多い。前に付いている「客家」は、中近世に中国本土から移り住んだ漢民族の一派を指す。彼らの間で主に食されていた料理、という意味合いだと考えていいだろう。提供された客家米苔目のルックスは、どこからどう見ても「うどん」。しかし、いざ食べてみると食感も風味も全然違っていた。押出麺ということで、エッジのない丸麺に仕上がっており、舌触りのツルツル感が際立っている。そして、弾力が強い。固くはないのに、なかなか噛み切れない系。噛んでも噛んでも、暖簾に腕押し。風味はあまりなく、とてもあっさりした麺だ。つゆは、かなり薄味。醤油の色はほとんど付いていないから、味の系統としては塩味ということになるのだろうか。ごく少量の醤油を注しているかもしれないが。スープの風味よりも、トッピングされる干しエビの香りの方が際立っていた。また、姿は確認できなかったものの、ほんのりとパクチーのような香草系の香りも漂ってきた。干しエビ以外のトッピングは、味をつけていない豚バラ、モヤシ、レタスのような葉物野菜。具材の種類は多いがレタス以外は少量ずつなので、さほど具だくさんな印象ではない。どちらかといえば、「シンプル」と表現したくなる一杯だ。ただし、干しエビと香草の香りが奏功して、印象力はなかなか強い。個人的に香草系の香りが不協和音になっているように感じたので味は3点止まりとしたが、パクチーなどの香草が好きな人は結構ハマる味覚かもしれない。いずれにしても、70元で食べられるのは、日本人の感覚としてはありがたいことだ。この店で扱う麺料理は、客家米苔目の他に客家板條(70元)と小巻米粉(85元≒315円)、炒米粉(100元≒370円)がある。麺類以外にもご飯ものや一品料理等多数ある。紅焼肉+啤酒(ビール)で130円(≒481円)というセットがあり、日本流に言えば「ちょい飲みセット」になるだろうか。油豆腐(20元≒74円)あたりを麺やご飯ものと一緒に注文するものよさそうだ。箸は、フードコート共通の箸袋に箸先だけ入ったエコ箸。
  余談をひとつ。フードコートの外側に、各店の代表メニューと、店主(?)の等身大写真パネルが並んでいる。6人の店主は、すべて両手を腰に当てたポーズで統一されていた。おそらく自信満々な雰囲気を出したいのだろう。日本なら、間違いなく腕組みポーズになるところ。個人的な感想を言わせてもらうと、胸を広く開けている台湾流の方が、堂々として見える。腕組みは、どちらかというと排他的&閉鎖的で、コミュニケーションを取る気が毛頭なく、「来るなボケ!」くらいにさえ感じる。自信も、なさそうに見える。以上の理由で普段基本的に腕組み店主の店には入らないことにしている私だが、台湾流なら抵抗なく入れる。これはぜひ、日本の飲食店にも取り入れてほしい部分だ。


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「洪十一 台南擔仔麺」  実食日:2019/10

  台鉄台北駅舎の2階フードコート「台湾夜市」内。上記「米家庄」と同じフードコートにある。台南担仔麺をメインに扱う店だが、屋台料理の担仔麺にしては値段が高め。何を食べても、たいてい100元超えになる。台北駅2階という賃料が高そうな立地にあるテーマパーク的なフードコートだから、どうしても観光地並みの価格設定になってしまうのだろうか。「米家庄」はそこまで高くもなかったけれど。口頭注文、先払い。英語は、なんとか通じる。受け渡しは、バイブレーターで呼び出して行う。日本のフードコートと似たシステムだが、決定的に異なるのは下げ膳が不要だということ。食べ終えた食器類は、席に残したまま退店してよいことになっている。というか、そもそも返却所がない。フードコート内を下げ膳専門のスタッフがウロウロしていて、タイミングを見計らって下げてくれる。こういうところに人件費がかかっているから売価が高くなってしまうという見方もできるのだけれど。
  さて、ここでは、担仔麺ではなく麻油蚵仔麺線(120元≒444円)を食べてみた。担仔麺は台南の名物で、ここは台北。そして、台北の担仔麺は南港駅ですでに実食済み。ここで改めて食べなおすよりも、まだ食べたことがないタイプの麺類を試した方がいいだろうということで。麻油はゴマ油のことなのだが、料理銘に麻油と付いている場合には生姜をゴマ油で炒めて刺激的な香りづけをしたものになる場合が多い。注文時に「辛いけど大丈夫か?」というようなことを言われたのは、そのためだろう。かなりドライな刺激なので、好き嫌いが分かれそうだ。個人的には、あまり好きな部類ではない。蚵仔は、牡蠣のこと。台湾の牡蠣は日本の平均的なものよりもだいぶ小さく、3~4cm位のサイズ。それが、10個くらい乗っている。牡蠣は屋台料理にも頻繁に登場する食材で、牡蠣を使ったオムレツのような蚵仔煎が台湾全土の屋台にある。麺類のトッピングにすることも、珍しくない。そして麺線は、そうめんのような細い麺。短いから、そうめんよりも白石温麺のイメージか。屋台ではとろみのあるスープでじっくり煮込み、ほとんど溶けかかったような状態で提供する大腸麺線が一般的なのだが、ここではちゃんと麺料理として原形をとどめた状態での提供だった。詰まるところ、麻油蚵仔麺線は「どぎつい生姜スープの牡蠣入りそうめん」と評したくなる一杯だった。牡蠣以外の具材は、キャベツ、カリカリに揚げたスライス生姜、パクチー。パクチーが加わることで、ドライな生姜の刺激がエスニックなムードになる。これが好きな人もいるのかもしれないが、私は大腸麺線の方が好き。まぁ、ひとついい経験をしたということで、今後は「麻油」と付く麺料理は敬遠することになりそうだ。箸はエコ箸。


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「鼎記」  実食日:2019/10

  台北地下街のY区にある。Y区地下街は台北駅から隣の北門駅までずっと続いており、飲食店が多くあるのはどちらかというと北門駅側の方。この店は比較的台北駅寄りではあるが、それでも台鉄の台北駅からだとちょっと距離がある。ドンピシャで近いのは、桃園MRTの台北駅の方。牛肉麺をメインに提供する簡易的な飲食店で、間仕切りのない半露出店だが、店内は結構広い。客席は、テーブル席のみで、ちゃんと数えていないが4人×10くらいある。入店して、案内もないまま席に着いて待っていたら誰も来なかったので、有人レジのところへ行って口頭注文。これが正規の注文スタイルなのかどうかは不明。英語は、一部のスタッフのみ通じる。メニュー一覧から選んで既製メニューを注文するのだが、その際、ラミネート加工されたA4くらいの紙を見せられ、その中から麺を選ぶように言われる。8種くらいあったかな。予期せぬ展開にちょっとうろたえてしまい、咄嗟に親しみのある油麺を注文。今になって思えば、食べたことのない麺種を試すべきだっただろうか。注文したメニューは、まだ食べたことがなかったカレー味の牛肉麺「咖哩烩牛肉麺」。「烩」という、見慣れない字が入っている。帰国後に調べたところ、これは「あんかけ」の意味だった。つまり、このメニューは「カレーあんかけ牛肉麺」ということになる。値段は、109元(≒403円)。牛肉麺としては、安い部類だ。
  料理は、丼ではなく平皿で提供された。麺に、とろみ(おそらく片栗粉でつけている)のあるカレーを直接かけたスタイル。汁なし麺と言えば汁なし麺だが、カレーあんの量が結構多いので、まぜそば的なものではない。わりと日本のカレー南蛮に近いかもしれない。ただし、具材が全然違う。なにしろ、キャベツの千切りがたっぷり入っているのだ。プラス、カレーと一緒に煮込まれた牛スネ肉・ニンジン・タマネギ。仕上げに、細かく刻んだパクチーを散らしていた。カレーはわりとスパイシーではあるが、本格インドカレーという感じではなく、どちらかというと日本の家庭風カレーに近い味わい。違和感なく喉を通る。麺は、香港で食べた油麺とはまったく異なるもので、ソフト麺みたいな、柔らかい茹で麺のようなものだった。カレーとの相性は、悪くない。刀削麺みたいな歯ごたえや香ばしさ、甘みなどがあって主張が強い麺よりも、むしろこちらの方が合うかもしれない。パクチーの香りが時折不協和音に感じるような部分もあったけれど、総じて日本人の口に合いそうな味覚だった。カレーにまみれてベチャベチャになった千切りキャベツも、意外と悪くない。牛肉麺を名乗るほどには牛肉の存在感が強くなかったけれど、だからこそ値段が安めに設定されているのかもしれない。ドリンク(お茶orレモンティー)と高菜のサービス(どちらもセルフ形式)があることを考えると、この価格帯で食べられるのはありがたいことだ。箸は樹脂製のエコ箸と鉄箸を両方用意。鉄箸だとカレーあんが滑るので、日本人的は樹脂製のエコ箸の方が操りやすいだろう。レンゲは使い捨てタイプの用意あり。
  今回の旅では、Y区地下街で食べたのはここ1軒だけ。しかし、この周囲には面白そうな飲食店が結構たくさんあった。すぐ向かいには、義大利麺をメインに提供する「豪品」があり、少し北門駅方向に行くと、日本式のラーメンを提供する店もある。さらに北門駅方向へ進むと、アジア各国の料理店街になり、ここにも麺類を扱う飲食店が複数ある。今後また台湾を旅する機会があれば、Y区地下街で食い倒れという日を設けてもいいかなと感じた。台北駅としては、駅舎2階のフードコート「台湾夜市」に次ぐ麺食天国だ。


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★市政府駅(台湾。台北MRT板南線)
「富士そば」  実食日:2017/10

  3番出口を出て右へ3分、「新光三越信義天地」のA8館地下2階フードコート。店舗名は「台灣1號分店」。立地に関して、特筆すべき要素が2つある。ひとつは、三越デパートの中にあるということ。台湾の「富士そば」は三越との合弁事業として展開しているので、店舗は三越内にあるのだ。もうひとつは、フードコートスタイルだということ。セルフサービス形式になっていて、これはフィリピンにはなかったパターンだ。というか、三越の中にフードコートがあるという時点で、違和感たっぷりなのだが。有人レジで先払い→その場で待って受け渡し。返却口は、フードコート共通。受渡口の先に箸(エコ箸)や七味などが置いてある。また、箸などと同じ場所にそば湯ポットもある。冷水器も設置されているのだけれど、「水・湯・茶」とボタンが3つあって、どういうわけか「水」を押したらお湯が出てきた。ノズルが赤色になっていた時点で、気づくべきだっただろうか。ちなみに、スタッフは、多少ではあるが日本語を理解できる(人によるかも)。もちろん英語もOK。
  調理が早かったから、麺は茹で置いているのだろう。そばの香りはわりとしっかり感じられる。日本の店舗と同等か、それ以上かもしれない。食感的には、日本の平均的な店舗よりも少し硬く感じた。そば湯は、薄紫がかった色合いで、なかなか香りがよかった。つゆは、カツオ出汁があまり香らず、あっさりしている。フィリピンでもカツオ出汁を弱めてある印象だったが、それ以上に淡く、ちょっと物足りない。メニューはすべて「中」と「大」がある。中=並、大=大盛りと考えていいだろう。価格(以下の記載はすべて「中」の価格)は、かけ(清湯蕎麥麺)が89元(≒356円)、わかめ(海帯芽蕎麥麺)が109元(≒436円)、鶏天(炸鶏塊蕎麥麺)が134元(≒536円)。日本よりもちょっと高いくらいの価格帯だが、台湾の標準的な物価から考えるとだいぶ高い。フィリピンよりはいくらか庶民的かな、という感じ。実食は、特選撰富士蕎麥麺139元(≒556円)。説明するまでもないが、「特撰富士そば」の台湾版だ。トッピングは、きつね・たぬき・温玉・ワカメ・カニカマ。台湾でも、やっぱりカニカマを乗せるのね。きつねは日本の店舗のものよりも厚みがあってフワフワ。噛むと、モッチリした弾力がある。形は正方形。フィリピンのものとは違うね。たぬきは天かすで、揚げ置きでやや湿気り気味。まぁ可もなく不可もなく。ちなみに、フライヤーにはドクターフライが入っている。温玉は、日本で食べるのと変わらない。ワカメは、やや歯ごたえが弱くて柔らかめ。そしてカニカマは、日本の店舗で出しているものよりもやや柔らかい。印象としては別ものなんだけど、台湾にカニカマってあるのかな? 日本から運んでいるのなら、同じものになるはずだと思うのだが。箸はエコ箸。
  総じて、日本で食べる「富士そば」に比べると輪郭がぼやけたような味わいで、ちょっとモヤモヤする。台湾人の好みに合わせている部分と、完全には再現できない部分が、両方あるのだろう。多少なりとも日本語が通じることだし、調味料やそば湯がセルフになっているので、「湯布院本川製麺所」に比べてカスタマイズしやすいという利点がありそうだ。


※閉店していました。跡地は、「丸亀製麺」でしょうか(明確に特定できず)。中山駅近くの台北南西店も閉店しており、「富士そば」は、少なくともそば店としては台湾から完全撤退しているもようです(2019/9、確認)。

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★忠孝敦化駅(台湾。台北MRT板南線)
「玉口香」  実食日:2019/10

  台北MRT板南線の忠孝敦化駅と忠孝復興駅は、「東区地下街」でつながっている。台北にはいくつかの地下街があるが、東区地下街は台北駅に付随する地下街に次いで規模が大きい。そして、一本道だから地下街内で迷うようなことがなく、歩きやすい。それなのに、意外と通行人が少なく、どこか物悲しい印象を受ける。通路の両側に並ぶ店舗の多くは物販店で、飲食店は少ない。麺類を扱うのは、「玉口香」と「八方雲集」、「黒面蔡」くらいか。いずれも、だいぶ忠孝敦化駅寄りの方にある。「黒面蔡」は松山駅で実食済みなのでここではパスするとして、「玉口香」と「八方雲集」のどちらで食べようか悩んだ末に、「玉口香」へ。チェーン店っぽくない雰囲気だったのと、メニューに「蘭陽乾麺」の文字列が見えたのが決め手だった。蘭陽は、東海岸の宜蘭市にある地名。地名を冠した乾麺だから、ご当地麺的なまぜそばに違いないと踏んだわけだ。間仕切りのない半露出店で、客席は計25席くらい。フロア中央にテーブル、両端の壁際にカウンタータイプの椅子席。精算システムは、有人レジで先払い。英語はあまり通じない。レジにも写真入りのメニュー一覧があるので、指さし注文可能。配膳してくれるのかなと思いきや、セルフだった(レジで呼び出し)。下げ膳は不要の様子(返却口がない)。私が食べたのは蘭陽乾麺50元(≒185円)だが、基本的には扁食(ワンタン)がメインの店。麺類は3種類で、すべてまぜそばスタイルのものだ。いずれも50~60元なので、街なかの簡易的な飲食店や屋台などと大差ない価格帯になっている。このくらいの値段で軽く一杯食べられるのは、ありがたい。ちなみにワンタンは、80~100元(≒296~370円)と、麺よりもやや高い。ワンプレート方式のご飯ものもいろいろあり、こちらは110~130元(≒407~481円)とさらに高い。
  麺は、激しく縮れた平麺だった。手打ち感はなく、どちらかというとインスタントラーメンに近い食感・風味。麺の上には、豚肉のそぼろ。背脂たっぷりだが、しつこくない。意外とさっぱりしていて美味しい。ここまでは、これまでに食べてきた「乾麺」と特段変わらない。しかし、食べ進めるうちに麺の下から茹でキャベツとさまざまな香辛料が出てきてびっくり。クコの実とかナツメグとか、香りのあるものが次から次に出てくる。全体的にモヤッとしていることが多い台湾料理の中で、香りの強さが際立っていた。これはこれで美味いのだけれど、香りがあまりにも強すぎて薬膳料理みたいな印象になり、終盤にやや飽きが来る。香辛料は1/3くらいでいいかな。特徴的ではあるのだけれど。台湾の東海岸へはまだ行ったことがないのだが、この刺激的な香辛料が特徴なのだろうか。行ってみたいな、東海岸。箸はエコ箸と使い捨ての竹箸を両方用意。飲み水の無料提供はないので、必要なら持ち込みを。


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★中山駅(台湾。台北MRT淡水信義線・松山新店線)
「富士そば」  実食日:2017/11

  1番出口を出て右すぐの「新光三越2館」の地下1階フードコート。店舗名は「台北南西店」。惜しいね、「台」が「東」だったら、東西南北全部揃うのに。台湾の中では台北市はほぼ北端にあり、台北市の中では中山駅は確かに南西の方にあるのだけれど、「台灣1號分店」から見ればむしろ北西だし、台北駅から見ても真北だし、なぜ店舗名が「南西店」なのか不思議に思っていた。が、行ってみたらすぐに謎が解けた。三越が面している大通りが「南京西路」なのだ。三越デパートの地下、それもフードコート内にあるという点では、「台灣1號分店」によく似た立地。ただ、フードコートの雰囲気というか造りがちょっと違う。台湾南西店は、店舗と客席がちょっと離れているのだ。というか、店の真ん前にも客席があるのだけれど、ここは別店(焼肉店)の専用席になっていて富士そばの客は利用できない。フードコート共用の客席は、富士そばを背に見て右手奥の方になる。受渡方法は、台灣1號分店とちょっと違う。注文口で口頭注文→単品トッピングなどはセルフで皿に取り、有人レジで精算→その場で待って、出来あがった麺を受け取る。日本でいうと、セルフ品の数はだいぶ少ないけれど、「半田屋」みたいな精算方法になっている。日本語が通じるかどうかは、試していないので不明。英語は問題なく通じる。
  南西店では、麺を注文後茹でで対応していた。自動湯切り器を導入している。食感・風味とも日本の店舗と遜色なく、上々の出来栄え。今回はもりそばを注文したので温つゆについては感想を書けないが、冷つゆに関してはしっかりとカツオ出汁が利いたものだった。日本国内の店舗よりもやや薄め(水っぽい)なようにも感じたが、大きな違和感はない。台灣1號分店の温つゆはカツオ出汁があまり香らないものだったので、台湾の店舗では温つゆと冷つゆが根本的に別ものなのではないかと推察。ワサビは練り物で、ちょっと粘り気がある。香り・辛みとも、あまり強くない。ネギは台湾産だろうか、ちょっと乾き気味の青ネギ(白ネギの葉の部分ではなく、万能ネギのような品種)で、繊維質を強く感じた。これは、台灣1號分店の温そばに乗っていたものと同じだろう。メニューや値段は、台灣1號分店と同じ。麺類は中と大がある。中が並、大が大盛りと考えてよかろう(以下の記載は、中の価格)。もり(盛)・かけ(清湯)89元(≒356円)。今回は、もりそばに単品でかき揚げ(30元≒120円)を追加した。かき揚げは、具材のカットが大きいというか粗く、タマネギは外側の茶色く固い部分まで使っている。全然噛み切れないし、上顎の裏に貼りついて大変。外側を捨てるのが勿体ないのなら、せめてもう少し小さく切ってほしい。方や、ニンジンは妙に細かく刻んでいる。かき揚げ全体の嵩は日本の店舗のものよりも高く、5センチほどもある。フライヤーにはドクターフライが入っていて、サクッとした仕上がり。揚げ具合には問題なし。箸はエコ箸。
  困ったことに、返却口が見当たらない。さんざんウロウロした挙げ句、フロアのテーブルを拭いていたスタッフを捕まえて聞くと、「席に放置したままでいい」とのこと。フロアスタッフが片付けてくれるらしい。日本ではこういうシステムのフードコートが一般的ではないから、ちょっと戸惑う。「ごちそうさま」のひと声をかけるタイミングがなくなってしまうこともあり、個人的にはどうも無機質で好きになれないシステムだ。


※閉店していました。跡地は明確に特定できませんでしたが、「丸亀製麺」か「瑞記海南鶏」ではないかと。市政府駅近くの台灣1號分店も閉店しており、「富士そば」は、少なくともそば店としては台湾から完全撤退しているもようです(2019/9、確認)。

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★新北投駅(台湾。台北MRT淡水信義線新北投支線)
「阿義師牛肉麺」  実食日:2019/10

  温泉街が有名で、日本人観光客も多く訪れる新北投。台北MRT淡水信義線の北投駅で支線に乗り換えて、ひと駅(終点)。列車到着時には台湾語・中国語・英語だけでなく日本語のアナウンスも流れる。そんな観光地の駅だけに、駅舎の外側、高架ホーム下にはさまざまな店舗が連なり、ちょっとしたモールを形成している。イメージ的には、神田や新橋のガード下みたいな感じだ(規模はだいぶ小さいが)。その中にあるのが、牛肉麺をメインに提供する「阿義師牛肉麺」。観光地の店だけにかなり値段が高く、高級志向の台北「老菫牛肉麺」よりもさらに高い。紅焼牛肉麺と同じものであろうと思われる「雪花腱心牛肉麺」が、198元(≒733円)もする。これはちょっと当サイト的には苦しい価格帯だが、あくまでも海外は参考なので、観光地特例を適用することに。入店すると左に有人レジがあり、ここで先払い。英語は、基本的に通じない。レジにもメニュー表があるので、指さし注文で。配膳付きで、下げ膳不要。客席はテーブル席のみで、2・4・4・2。フロアの隅に、自由に飲める観音茶がある。メニュー表に40元(≒148円)と記載があるが、追加料金は取られなかった。台湾では水すら用意していないことが珍しくないので、これはありがたい。
  ここでは、まだ食べていない種類の牛肉麺をということで、塩味スープの清敦原香牛肉麺(これも198元)を食べてみた。半オープンの厨房なので調理シーンが一部見えたのだが、具材の牛肉はレトルトものだった。値段に見合う手の込んだ調理をしているようには、見えなかった。陶製の、持ち手の付いた三本足の丼で提供。おそらく、鼎を模したものだろう。別皿で、海藻とゴマを和えた中華風サラダが付く。麺は、きしめんのように太かった。少なくとも、ラーメンのイメージにはほど遠い。漂白したかのように真っ白な麺だし、9:1くらいでうどん寄りだ。味覚的には、悪くない。というか美味しい。スープは、台湾の店にしては塩味が強かった。日本人が多く訪れる場所だから、ある程度日本人客を意識した味に仕上げているのかもしれない。トッピングは、ブロック状の牛スネ肉とチンゲン菜、ニンジン、細切りの生姜。他の店で食べてきたどの牛肉麺よりも、具材の種類が豊富で彩りも鮮やかだった。レトルトのスネ肉は、圧力調理がなされているのか、とてもやわらかくて美味しかった。皮肉な話だが、ヘタに店内で調理するより、レトルトの方が美味しいかもしれない。総じての印象は、塩気が強いわりに上品。上品だけど、調理は簡易的。簡易的なのに、高い。いろいろな意味でギャップが激しい店だった。なお、麺類メニューは全部で5種類あり、一番高いもので218元(≒807円)。他に、点心類が5種あり、88元(≒326円)均一。ご飯ものはすべて套餐(丼ものとスープのセット)で、178~198元(≒659~733円)。どういう食べ方をしても、それなりに高いものにはなる。逆に言うと、メニュー間の価格差が小さいので、価格を気にせず純粋に食べたいものを選べるのが利点と言えば利点だろうか。でも、もう一度食べに来るかと問われると、微妙。たぶん、場末の大衆的な他店を選びたくなるような気がする。


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★動物園駅(台湾。台北MRT文湖線、猫空ロープウェイ)
「Prefeme(葡兒飛)」  実食日:2019/12

  2番出口階段下。当駅は、文湖線の南側の終着駅。台北市立動物園の最寄駅にして猫空ロープウェイの接続(駅舎は別で、少し離れている)があり、周辺に住宅などはまばらにしかない、ほぼ純然たる観光地の駅だ。それだけに、駅ナカ飲食店も他の駅とは少々毛色の異なるものだった。家族連れが多く訪れるという想定だからだろうか、まず「葡兒飛」という店名からして特異だ。「兒」の字は、日本語に置き換えると「児」。つまり、子どもを指す。店頭に掲げられたロゴマークも、子どもというよりもむしろ赤ちゃん。中年の私がひとりで入るには、少々の勇気が必要になる雰囲気だ。扱うメニューは、アイスクリームとライスバーガーが中心なのだが、辛うじてパスタが2種類あり、これによって当サイトの掲載対象に含められることになる。パスタは、白醤徳式香腸義大利麺と、蕃茄肉醤徳式香腸義大利麺。「徳式香腸」は両者に共通しており、ドイツ風ソーセージの意味。だから、選択肢としては「白醤」か「蕃茄肉醤」かということになる。蕃茄肉醤はおそらくボロネーゼ系だろう。白醤はまだ食べたことがなかったので、白醤徳式香腸義大利麺を食べてみることにした。値段は、180元(≒666円)。高い。観光地価格だ。有人レジにて先払いで、配膳付き。下げ膳不要。客席は、丸テーブルが3人×6、窓際の椅子付きカウンターが20くらい。
  運ばれてきたのは、概ね想像どおりのパスタだった。すなわち、ホワイトソース系のクリームパスタだ。パスタの上にソースがかかっている感じではなく、ソースの上に麺を盛ったような感じ。具材は、輪切りのソーセージとミックスベジタブル。ソーセージは、シャウエッセンみたいな粗挽きタイプで、味覚的には悪くないけれどいかんせん量が少ない。全部足しても1本ぶんに満たないのではないか、という程度だった。メニュー名を「徳式香腸」とするにはやや寂しいルックスだ。また、麺もソースもところどころ少し硬くなっていて、食感にムラがある。これはおそらく、店内調理ではなく出来合いのレンチンなのではないだろうか。観光地だからある程度簡易的な調理で値段が高くなるのも致し方ないところではあるが、埔心駅「鮮洛檸」に比べると雲泥の差であるように感じた。それでも、周辺にほとんど飲食店が見当たらない駅だから、一定の存在意義は見出せるのだろうが。パスタには、スープとフルーツゼリーが付く。スープは、クラムチャウダー。ホワイトソースのパスタにクラムチャウダーを合わせるセンスも、いまいち理解しがたい部分。しかも、粉っぽくてイガイガしたものだった。そして、極めつけがゼリー。いかにも子供向けといった、やたら甘いゼリーだ。コンビニで一度買って食べた「中華甜愛玉」のような感じ。総合的に考えて、これは日本でいえばお子様ランチみたいなものなのではないかと思う。料理が運ばれてきたとき、少し恥ずかしさを覚えるような内容だった。なお、パスタは単品注文もできる。ただし、140元(≒518円)と高値。大人が注文するのなら、ライスバーガー(3種各75元≒278円)の方がよさそうだ。それでは当サイトの掲載対象にはならないが。


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★板橋駅(台湾。台鉄西部幹線(縦貫線北段)、台北MRT板南線・環状線、台湾高速鉄道)
「小南門 傳統美食」  実食日:2019/9

  MRTと高速鉄道が乗り入れたことで劇的に発展した、“台湾の板橋駅”。その規模は日本の板橋駅をはるかに凌ぐ。台鉄・高鉄改札のワンフロア上、地下1階にはグローバルモールが整備され、飲食店のみならずさまざまなショップが並ぶ。そのメイン通路沿いにあるのが、この店。通行人も多くよく目立つところなので、適当に歩いていればまぁ見つかるだろうという位置にある。間仕切りどころか外壁すらなく、厨房部分が腰くらいまでの高さの塀に囲われているだけの露出店。台北を中心に展開するチェーン店で、食事をメインとする「小南門 傳統美食」と、スイーツをメインとする「小南門 傳統豆花」の2ブランドに分かれている。「美食」と「豆花」が合わさった店舗もあり、今回立ち寄った「環球板橋車站店」もこの複合タイプ。写真が小さいので分かりにくいかもしれないが、中央に共通の厨房があり、その手前と奥にそれぞれ客席がある。手前側が「美食」、奥側が「豆花」になっている。どちらも椅子付きカウンターのみで、席数はちゃんと数えていないが、「美食」側が20くらい、「豆花」側は7~8席くらい。有人レジ先払い制で、配膳してくれる。下げ膳は、基本的に不要の様子。英語は私と同じくらいの通用度だった(決して流暢ではない)が、従業員にもよるだろう。日本語は通じないが、メニュー表には日本語の説明書きが添えてあった。また、メニュー表にナンバーが振られているので、言語に自信がなければナンバーで注文するのが一番簡単。
  メニューは、セットものが中心になる。麺類は、特製乾麺か、肉燥米粉。このどちらかに、スープと副菜が付くイメージだ。値段は115~120元(≒426~440円)で、どれを選んでも大きな差はない。私が注文したのは、「肉燥米粉+苦瓜排骨湯+燙青菜」のセット(115元)。日本語での説明は「醤油煮込みのそぼろ肉かけ米粉+骨付き豚肉と苦瓜のスープ+湯で野菜」となっている。「茹で」ではなく「湯で」になっているのが面白いというか残念というか。調理時間は結構短く、ちゃんと測っていないけれど2分くらいで提供されたように思う。米粉(ビーフン)は、日本で一般的に食べられているものよりもだいぶ細く、白髪のようなイメージ。食感モサモサ。汁なし麺だということもあり、なかなか喉を通ってくれないタイプだ。適宜スープを口にしながら食べ進めるのがいいだろう。トッピングは、肉そぼろとモヤシ。肉そぼろが結構多いのが嬉しい。新烏日「五花馬水餃館」の招牌乾麺と比べても、倍量くらいかかっていた。醤油系の味付けはあっさりめだが、脂の旨みがしっかりしている。麺自体にあまり味がないだけに、ありがたかった。苦瓜排骨湯は、とても薄味。一応塩味ということになるのだろうか。アツアツだし、金属の器に入っているので器もアツアツ。舌も手も、やけどに注意。冬瓜のような白っぽい瓜が浮き、骨付き肉が沈んでいる。瓜は、ほとんど味なし。骨付き肉も、豚肉なのか鶏肉なのか分からないくらいに味がなかった。おそらく、じっくり煮込んで、旨みがほとんどスープに出てしまっているのだと思う。つまり、出汁ガラ。肉自体を食べるという感覚ではない。そして、燙青菜は、説明では「湯で野菜」となっていたものの、実際には油で炒めた青菜だった。あるいは、茹でてから炒めているのかもしれない。醤油系の味付けがされているが薄く、醤油の香りもあまり立っていない。青菜自体の青臭さの方がだいぶ勝っていた。ほんのりとニンニクの香りも漂う。総じて薄味な印象で、あまりガッツリと満足させるようなセットではなかった。でもまぁ、3品のセットメニューがワンコインで食べられるのだから、日本人の感覚でいえばありがたい話だ。スープ以外の料理は、使い捨ての紙皿での提供。使い捨ての小さなレンゲ付き。箸は個包装の竹箸。


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★林口駅(台湾。桃園MRT機場線)
「八角麺店」  実食日:2019/12

  駅と直結している「グローバルモール林口」内。改札階で直結していて、同じ階にこの店がある。しかも、直結している通路というか間口部分のすぐ先なので、感覚的には完全に駅ナカだ。対象に含めても、まったく違和感ない。この店は、麺類を扱う「八角麺店」とサンドイッチを提供する「倆倆號」が一体化したコラボ店舗。メニュー表は別々に出ているものの、受渡口や厨房、客席は、すべて共通になっている。麺類メニューは、牛肉麺3種類のみ。ちなみに、サンドイッチは2種類。あとはドリンク系が、「八角麺店」の括りで4種類、「倆倆號」の括りで6種類。ただ、「八角麺店」の括りになっているドリンクはコーヒー系で、どちらかというとサンドイッチに合わせるイメージが強い。これはたまたま記載位置が「八角麺店」側になってしまっただけで、本質的には「倆倆號」のメニューなのではないかと思われる。麺類は、紅焼牛肉麺、腱子牛肉麺、原汁牛肉湯麺。いずれもジャンルとしては紅焼牛肉麺で、トッピングが異なるだけだ。紅焼牛肉麺は、スタンダードな牛スネ肉のトッピング。腱子牛肉麺は、おそらく牛腱麺のようなものだと思うのだが、併記されている英語の説明書きが「Crispy Rost Pork Noodle」と意味不明なものになっていた。まず、「Rost」って何? 「Roast」の間違い? そして、牛肉麺なのに、なぜ「Pork」? 原汁牛肉湯麺は、肉をトッピングしない、いわばかけラーメンだ。市中の大衆的な飲食店に比べると、値段はだいぶ高い。紅焼牛肉麺が、180元(≒666円)もする。具ナシの原汁牛肉湯麺でも、160元(≒592円)。林口駅は桃園国際空港からのアクセスが便利で、駅のすぐ近くに三井アウトレットモールがあることから、台湾旅行の最後に寄ってショッピングを楽しむ外国人の利用が多い。だからこの店も、若干外国人の利用を意識した設定になっているのではないかという気がする。精算システムは、有人レジで口頭注文して先払い。料理は配膳してくれ、下げ膳は不要。客席は、厨房の奥にテーブル席がたくさんあるほか、モール内通路に露出したテーブル席も多数ある。両方合わせると、50席くらいありそう。私は、駅そばっぽさを求めて露出席を利用した。
  いただいたのは、紅焼牛肉麺。台湾滞在の最終日だったので、基本に帰ってということで。怖いもの見たさで腱子牛肉麺を食べてみる手もあったけれど、麺単で200元(≒740円)では、冒険するにはあまりにも高すぎる。麺は、ちぢれのない平麺。太さ・厚さが均一で、機械打ちを連想させるものだった。不味くはないけれど印象に残りにくい麺。スープも、とにかくオーソドックスで個性があまりない。醤油系の香ばしさと酸味が半々に感じられ、美味しいことは美味しいのだけれど、言ってみれば「業務用」みたいな感じの美味しさで、やっぱり食後に印象が残らない。そしてトッピングの牛肉は、食べやすくひと口サイズにカットされたブロック肉で、8個乗っていてボリューム感はそれなりにある。とてもやわらかくて食べやすいが、コラーゲン質のトロトロ感がやや乏しく、どちらかというとパサつく印象だった。筋繊維が、容赦なく歯間に挟まる。う~ん、微妙だな。これが120元くらいだったら特段問題に感じなかったのだろうが、180元という無意識のうちに査定のハードルが上がってしまう価格帯だと、ちょっと毒づきたくもなる。もうちょっと、個性というか、文章に書き起こせるような特徴が欲しかった。これだったら、台北駅の地下街で食べた方がいいかな。なお、麺類は単品のほかに套餐(セット)もあり、それぞれ30元増しで惣菜2品と紅茶が付くと書かれている。麺単価格に比して、セット割増価格が異様に安いのが気になった。しまったな、セットにしておけばよかった。今後私がこの店をリピートすることはないような気がするが、もしあるとすれば、次回はセットメニューにしてみよう。


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★桃園駅(台湾。台鉄西部幹線(縦貫線北段))
「火車頭」  実食日:2019/10

  高鉄苗栗駅「栗国米食」と同じくテイクアウト仕様の店なのだが、参考までにということで対象に含める。場所は、改札内コンコース。桃園駅は台鉄と高鉄・MRTとでかなり離れているので、注意が必要だ。両駅間の徒歩接続は、ほぼ無理。歩いたら、たぶん2時間とかのレベル。鉄道で両駅を往来するとなるともっと大変で、一度台北か板橋まで出ないといけない。V字というか、ほぼ松葉状のルートを辿らないと行くことができない。近い将来には桃園MRTが台鉄の中壢駅(桃園の隣駅)まで延伸する予定なので、この超不便な鉄道マップは解消されることになるのだろうが。台鉄の桃園駅は2015年に旧駅舎が廃止され、隣接する形で新駅舎を建設。その結果、ロータリーの真正面ではなく少し奥まったところに駅がある。旧駅舎は解体されずにトマソン状態のまま残されている。いわば台中駅と同じ方法で新駅舎へ移行されたわけだが、駅前が広い台中に比べて、こちらはいかにも窮屈な位置関係になっている。おそらく、地元住民の間ではあまり評判がよくないのではないだろうか。それはさておき、新駅舎には改札内外それぞれにいくつかの店舗が入っている。臺鐡便當は、改札外の貨車型売店。改札内には、イートイン席を持たないテイクアウト型の惣菜店が多い。「火車頭」も、イートイン席はない。すぐに食べたい場合には駅舎内の待合ベンチを利用することになるのだが、残念なことに桃園駅構内はベンチの数が少ない。コンコースのベンチは、ほぼ常時満席状態。唯一空いているのは、ホームの端っこの方にある、背もたれのないベンチだ。コンコースのベンチに空きがなければ、ホームの端まで行って食べることになるだろう。店が改札の外だったら、近隣の公園などへ持ち運びやすいのだけれど。
  この店でメインに扱うのは、「飯糰」。まぁ、おにぎりのようなものだ。これもちょっと食べてみたかったのだが、蔬菜涼麺の扱いがあるとなればこちらの方が優先だ。価格は、50元(≒185円)。安いね。注文する(英語通じず)と、すでに出来上がっている涼麺を冷蔵庫から取り出し、個包装されたタレと割箸を付けて、無造作に提供。コンビニの冷やし中華みたいな、蓋付きの透明な使い捨てプラ容器に入っている。ちょっと味気ない感じではあるが、何事も経験だ。ホーム端のベンチに腰を下し、開帳。ルックスは、基本的には冷やし中華。ただし、リンゴが乗っているので、若干盛岡冷麺のイメージも混ざる。麺は、コシがなくボソボソした食感の中華麺。見た目には日本のコンビニ中華麺とあまり変わらないが、食感が決定的に違う。スープは、ちょっと香草系の香りがある。ゴマダレみたいな色合いだけれど、原材料名の中にゴマはなく、タマネギと麻醤が中心であることが分かる。ちょっと癖のある香りではあるが、まぁ美味しいと思える味覚だ。リンゴ以外のトッピングは、千切りのキュウリとニンジン、ホールコーン、スライスした茹で卵。メニュー名の「蔬菜」が野菜の意味だから、肉類のトッピングはなく、茹で卵以外はすべて野菜系のトッピングになっているのだろう。ついでに言えば、スープも野菜系だ。台湾料理は油ギッシュな肉モノや獣臭のあるスープ料理が多いので、日本人が台湾に長期滞在すると食べ疲れることもあるだろう。そんな時にこういうさっぱりしたメニューでリフレッシュするのもいいかもしれない。
  ひとつだけ改善を臨みたいのは、スープの包装の仕方。恐らく自前で密封加工していると思われ、開封前からなんだかベトベトしている。そして、ビニールがはちきれんばかりにパンパンに入っているので、開封した瞬間にドピュッと溢れる。最近、日本ではこの手のタレ袋は「どこからでも開けられます」のマジックカットになっていることが多いが、こちらは残念ながら「うまく切らないとどこからも開かない」タイプ。自然と指先に力が入ってしまうので、なおのこと豪快にあふれ出ることになる。そして、手が汚れても、ホーム上では洗う場所がない。もともとホームで食べることを前提にしていないとは思うけれど、どこで食べるにしても手は汚れない方がいい。マジックカットにするのは難しいとしても、包装をもう少し大きくしてパンパンにならないようにするくらいはできると思うので、それだけでもお願いしたい。


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★埔心駅(台湾。台鉄西部幹線(縦貫線北段))
「鮮洛檸」  実食日:2019/10

  改札外、前站(表口)の階段下。当駅はすごく窮屈な場所にあって駅舎も決して大きくないのだが、「駅そば」と呼ぶにふさわしい場所に飲食店がある。こういう駅に出合うと、ワクワクする。とはいえ、この店はどちらかというとフレッシュジュースのテイクアウトがメイン。脇っちょ(写真右手)に、テーブル2人×1と椅子付きカウンター6席だけのイートインスペースがあるのみ。パッと見にはイートイン席があるようには見えない造りなので、大きな貼り紙で「→内用区→」と掲示されている。この貼り紙がなかったら、私もスルーしていたかもしれない。正確な店名は、テイクアウトコーナーが「鮮洛檸」で、イートインコーナーは「鮮洛檸早餐」なのかもしれない(看板が別に出ている)が、まぁいいや。この「早餐」は朝食を意味する語なので、午前中の営業がメインなのかもしれない。が、午後イチくらいの訪問でも無事に食べられた。イートインメニューは、ドリンク類の他に一品料理やサンドイッチ、パスタなどがある。麺類は、3種類のパスタのみ。「台湾でパスタ」のイメージがあまり湧かない人も多いと思うが、実は「義大利麺」の名で結構広く普及している。屋台や場末の大衆食堂でも、メニューに入っていることがある。この店で扱うパスタは、ナポリタン風の「茄汁肉醤麺(120元≒444円)」とボンゴレビアンコ風の「青醤蛤蜊麺(120元)」。プラス、茄汁肉醤麺にトンカツをトッピングする「茄汁肉醤麺加上日式豬排(150元≒555円)」がある。どれを食べようかと悩んでいたら、おばちゃん店主が厨房から出てきて妙に「茄汁肉醤麺加上日式豬排」を推し始めた(英語は通じないが、雰囲気で分かる)。申し訳ないがこれは私がもっとも食べたくないメニューだったのでパスし、オーソドックスな「茄汁肉醤麺」をオーダー。有人レジで先払い。配膳してくれる。下げ膳も不要。
  注文後に調理しているとみえ、出てくるまでに少々時間がかかった。調理に入る前に「10分待って」と言われていた(私は基本的に台湾語が分からないので、「たぶんそう言われたのだろう」というくらい。「シーフェン」は聞き取れた)から、まぁ想定の範囲内。出てきたパスタは、私が想像していたよりもだいぶ“つゆだく”だった。パスタとスープパスタの中間くらいのイメージ。ひとことで言えば、「あっさりめのつゆだくナポリタン」だ。麺は、おそらく乾麺。日本で売っている一般的な乾麺パスタと、そう変わらない。トマトソースはあっさりしているのだが、デフォルトでパルメザンチーズが大量にかかっていることもあり、旨み不足という感じではない。メニュー表に「絶無任何色素・防腐剤・化学添加物!」と書かれていることから、無添加を売りにしていることが分かる。語弊があるかもしれないが、「無添加ならではの薄味」と言えるかもしれない。ほんのりとアサリやニンニクの香りも漂い、味わいに厚みも生み出している。だから、総じてまぁまぁ美味しく食べられた。ただ、パルメザンチーズがフォークにこびりつきやすいので、食べ進め方はちょっと工夫が必要かも。具材は、パプリカ、タマネギ、アサリが中心。トラディッショナルな麺料理に比べてやや値段が高いけれど、あっさり食べるには悪くない内容だと思う。おばちゃんの愛想もよい。台湾語は理解できないと分かっているはずなのに、ガンガン台湾語で話しかけてくる。歓迎ムードはしっかり伝わるので、こういうのは嫌いじゃない。また寄ってもいいな。その時には、おばちゃんのリクエストに応えて「茄汁肉醤麺加上日式豬排」を食べてあげようかな。


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★機場第一航廈駅(台湾。桃園MRT機場線)
「海瑞●(手へんに貢。以下同)丸」  実食日:2017/10

  海外ネタは約1年ぶりなので、改めてのお断りから。海外に関しては、鉄道駅構内(駅舎とひと続きになった建物内及び地下街をすべて含む)にある簡易的な麺類店と、日本国内の簡易的なそば店に関する考察上重要な意味を持つ麺類店(駅ナカ・駅チカに限らない)を、すべて対象とする。
  機場第一航廈駅は、台北発着の国際線の大半が就航している(一部台北松山空港発着もある)桃園国際空港のロビーから機場第一航廈駅へ向かう途中にある。駅とひと続きの建物内なので、対象に含める。細長~い形状のフードコート内の、わりと駅から近いサイドにある。ベースメニューは、「湯」(肉団子スープみたいなもの。45元≒180円)、「●丸湯麺」(肉団子入りで具だくさんのラーメンチックなもの。95元≒380円)、「新竹炒米粉」(ビーフン炒め。60元≒240円)の3種類。加えて、サイドメニューやらセットメニューやらがたくさんある。本当は湯麺を食べてみたかったのだが、飛行機の遅れで夜遅い時間の到着になってしまい、売り切れていた。やむを得ず、新竹炒米粉を注文。新竹というのは、台湾郊外の地名。台北から見て、空港がある桃園市のさらに先に位置する。ビーフンが有名な街らしい。つまり、メニュー名を正確に訳すと「新竹風ビーフン炒め」ということになる。口頭注文(英語が通じる)の先払い→番号札などはないのでその場で待って受け渡し。困るのは、空港内ということで、大きな荷物で席取りをしている人が多く、それほど混雑しているようには見えないのになんとなく空席が少ない。何も食べずに席だけ利用している(待ち合わせなど?)人も多そうだ。
  ビーフンはかなり細く、水気が少なくてややパサパサ気味。日本国内で食べるビーフンよりも、ちょっと癖が強い感じだ。最初のうちはモサモサして飲み込みづらく感じるが、慣れてくると美味しいと思うようになる。味付けは薄めで、トッピングされる肉味噌のようなものを絡めながら食べないと、旨み不足。肉味噌は、脂身の多い豚肉が使われており、旨みが強いだけでなく少々臭みも伴っている。豚骨ラーメンとかが苦手な人は要注意かも。ほかの具材は、ニラ・モヤシ。結構量があるので、割高傾向の空港内で食べて60元なら文句なし(街なかだと炒米粉は40元くらいの店が多い)。
  困るのは、食器類の返却方法が分かりにくいこと。店舗に持っていったら「あっち」と指さされたが、示す方へ行っても見つからない。フロアに出ていた従業員に聞いて、ようやく返却所(フードコート内の全店共通)にたどり着けた。箸は個包装で、イメージ的にいうと「最初から割られている竹製の割箸」。おおむね満足できる内容で、台湾での最初の一杯としては上々だ。空港にこういう店があるのはありがたいことだ。


※2019/9、再食。今回は、前回食べられなかった「●(手へんに貢。以下同)丸湯麺」にありつけました。通常95元(≒352円)ですが、よく分からないキャンペーンで80元(≒296円)に値下げされていました。ラッキー。茹で時間の短い麺は、ややポソポソする食感。語弊を承知でたとえると、姫路「えきそば」の麺みたいな感じです。スープは超あっさりで、塩気はほとんど感じません。出汁は、基本的には豚が中心と思われるのですが、トッピングされるフライドガーリックの香りの方が圧倒的に強いです。トッピングは、●丸(肉団子)3個+ニラ+モヤシ+フライドガーリック+青ネギ。●丸は、主に台湾北西部で主に食されている弾力の強い肉団子で、とても美味しいです。日本人にとっては全体的に塩気が弱いと感じる台湾料理の中では珍しい、しっかりとした塩気を感じます。ゴムみたいな独特な弾力も含め、これは癖になる美味さです。肉は豚肉でしょうか。食感的には鶏の合挽きを連想させるのですが、味覚的には完全に豚。ソーセージみたいな味わいです。これが300円未満で食べられるとは、驚きです。日本で食べたら、800円くらいしそうな内容です。でも、実はこれでも空港価格。街なかなら、もっと安く食べられます。

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★機場第二航廈駅(台湾。桃園MRT機場線)
「小南門傳統豆花」  実食日:2019/12

  桃園国際空港には2つのターミナルがあり、それぞれにMRTの駅が併設されている。LCCで日本と往来する場合にはたいてい第1ターミナルの利用になり、私もこれまで第1ターミナルしか足を踏み入れていなかった。しかし、第2ターミナルの方も見ておく必要があるだろうと思い行ってみたら、1階に第1ターミナルよりも規模の大きな美食広場(フードコート)を備えていた。立地は、第1ターミナルと似たような感じ。空港ターミナルとMRT駅の境目くらいのところにある。これとは別に3階にも美食広場があり、飲食環境は第1ターミナルよりも充実していると言える。第1ターミナルに好みの店がない場合には、時間が許せば第2ターミナルへ行ってみるのも手だ。また、第2ターミナルには無料のシャワールームもある(ただし、お湯は出なかった。水浴びになる)。第1ターミナル発着であっても、第2ターミナルへ行ってみる価値は十分にあるだろう。ちなみに、ターミナル間には、無料で乗車できるスカイトレインが運行している。移動の便は、たいへんよろしい。さて、1階の美食広場には、21軒の飲食店が入っている。国際空港だけあって、飲食店のラインナップも国際色が豊かだ。特に、ベトナムやタイなど東南アジア系の料理を提供する店が多い印象。日本人が台湾まで行って東南アジア料理を食べるのも、アリと言えばアリ。なぜなら、台湾の街なかにも東南アジア料理店が多数あり、市民の間で定着している印象があるから。しかし、それよりもまずは台湾土着の店でということで、こちらに寄ってみた。以前に(台鉄の)板橋駅で入ったことがある「小南門傳統美食」と同系列の店だが、「美食」は定食系、「豆花」の方は密豆のようなスイーツがメインになる。当サイトにスイーツ店が掲載されることに若干の違和感を覚えないでもないけれど、麺類の括りに含められる「米苔目」の扱いがあるので、参考までに掲載しておく。米苔目は、米粉で作ったうどんのようなもの。これが、甘いシロップの中に入っているわけだ。メニューは、店名にもなっている豆花(豆で作ったプリンのようなもの)を入れたものが多い。同じく豆類の花生(ピーナッツ)や緑豆を使ったものも多い。あとは、米苔目、粉圓(黒いタピオカ)、粉粿(わらび餅のようなもの)などの組み合わせとなる。価格は、「米苔目+緑豆」で50元(≒185円)、「米苔目+緑豆+粉圓」で55元(≒204円)。スイーツだから、一般的な麺料理と比べるとボリュームがやや少なめで、値段は手ごろだ。今回は、米苔目と同時にタピオカも食べてみたいということで、「米苔目+緑豆+粉圓」をオーダー。
  調理という工程は、ない。使い捨ての丼に、シロップ漬けの各食材をドバドバと注ぎ入れ、仕上げにクラッシュアイスを入れるのみ。だから、提供は迅速。注文から提供まで、わずか10秒ほどだった。まずは、肝心の米苔目から。グニグニとした食感で、やわらかいんだけどなかなか噛み切れない、ゴムみたいな麺。小麦粉ではなく米粉で作られているということもあって、麺自体にはほとんど味がない。ほとんどシロップの味だけということになるのだが、このシロップがまた薄くてはっきりしない味。う~む、このシロップにこの麺は、合いませんなぁ。私の口にはあまり合わない味覚だった。むしろ、青臭い香りのある緑豆の方が美味しいし、シロップにもよく合っているように感じた。そして、粉圓は、米苔目にも増して、私の口に合わないものだった。日本で食べるタピオカよりも芯が固く、なんだかカエルの卵を連想させるような食感なのだ。しかも、味がない。正直に言うと、米苔目も粉圓も、完食するのがきついと感じるレベルだった。提供時点では「量が少ない」と感じていたのに、後半は「こんなにたくさん要らないよ」という印象に変わっていた。緑豆で口直しをできたのが、唯一の救い。台湾の文化を否定するつもりはないけれど、米苔目や粉圓は、もっとはっきりした味のあるシロップ(スープ・ソースなど)に合わせた方がいいと思う。というわけで、次回食べることがあるとしたら、米苔目と粉圓は外して、緑豆と花生、豆花あたりの組み合わせにしようかな。
  周囲を見ると、ひとりで1杯完食するのではなく、1杯を数人でシェアしている人が多い様子。なるほど、最初からひとりで全部食べきる仕様ではないのかな。そうはいっても私は一人旅で、シェアする相手がいない。ならば、小盛りのメニューを用意してくれたらよかったなと感じた。ハーフで、10元引きとか。多少割高になっても、その方が満足度は高かったと思う。


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「平田食堂」  実食日:2019/12

  上記「小南門傳統豆花」で一杯食べたものの、なんだか腹の虫がおさまらなかったので、もう1軒食べることにした。寄ってみたのは、台北駅の地下街にも店舗があった「平田食堂」。日本式のうどんや丼ものを提供する店だ。台北駅ではチラッと横目で見て「テイクアウト専門だな」と思ってスルーしていたのだが、こちらはイートイン専門店。もしかしたら、台北駅の店舗もイートインできたのかも。メニュー表には一部だけではあるが日本語が併記されていて、店名的にも日本企業が運営していそうな先入観を覚える。軽くググっても出てこないので、実態は不明。「丸亀製麺」のような讃岐うどんシステムではなく、既製メニューをオーダーするシステム。有人レジで口頭注文、先払い。バイブレーターを使って受け渡しが行われる。価格は、おそらく台北駅の店舗よりも高めになっていると思う(台北駅の店舗の価格は未確認)。いわゆる空港価格ではないかと。一番安い豆皮烏龍麺(きつねうどん)でも128元(≒474円)する。私が注文した可楽餅烏龍麺(コロッケうどん)は、135元(≒500円)。市中だったら牛肉麺が食べられる価格帯だ。
  食べる前の印象は「日本企業が運営しているのかな」だったが、食べてみて一変した。おそらく、これは台湾土着のチェーンだ。なぜなら、見た目や味が完全に台湾仕様だったから。まず、コロッケうどんのルックスにちょっと驚く。コロッケは別皿提供で、デフォルトでうどんにトッピングされているのは、パプリカ、ブロッコリー、プチトマト(輪切り)、ホールコーン、大量のワカメ。ワカメ以外は、およそ日本ではうどんにトッピングしない食材ばかりなのだ。これは、日本企業のセンスではないと思う。麺も、なんか変。コシはまったくと言っていいほどなく、風味もあまりない。小麦の甘みを感じないのが最大の特徴で、ついさっき食べた米苔目とあまり変わらないような印象だった。米粉が主体なんじゃない? と思ってしまった。つゆは、塩気がかなり薄く、あっさりしすぎている感じ。醤油の香りはない「うす塩味」だ。これも、いくら台湾人の好みに合わせているとはいえ、日本企業にはないセンスだろう。出汁感もあまりなく、出汁以上にワカメの香りが強く、そもそも出汁をとっているのかどうかもよく分からない感じだった。コロッケは、日本で食べるものと大差なかった。驚いたことに、カレー味。衣にはサクサク感もあり、タネはネットリしていて、問題なく美味しかった。ちなみにコロッケは台湾語で「可樂餅」と書くが、これは「Croquette」の音に漢字を当てたものと思われる。「餅」は、米で作られたものだけでなく、すりつぶしてから成形した食材全般に用いる。日本にも「いも餅」などがあるから、まぁ特段おかしいことではない。総じての印象は、「うどんは日本のものの方が美味しいな」だった。海外では、よくこのような「ちょっとおかしな和食」に出合うことがある。今回食べたコロッケうどんも、そのひとつだ。高鉄台中駅で食べた「丸亀製麺」とはまったく毛色が違い、どちらかというと新左営駅「塔庫カレ」に近いスタンスだ。箸は鉄箸で、先の方が半分だけ箸袋に入った状態で提供。箸袋には、「請勿吸食、請勿當武器、請勿一起通関」と書かれている。「箸を食べるな、武器にするな、持ったまま(空港のセキュリティ)ゲートを通るな」という意味。冗談なのか本気なのか分からなかったが、面白かった。


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★高鉄苗栗駅(台湾。台湾高速鉄道)
「栗国米食」  実食日:2019/9

  台鉄の豊富駅と接続している、高鉄苗栗駅。台湾高鉄の駅の中では雲林駅に次ぐマイナー駅で、駅舎内も比較的閑散としているが、簡易的な麺類を提供する店が入っている。専用の客席はなく、基本的にはテイクアウト仕様なのだが、駅の待合室で食べられるので、まぁ対象に含めてもいいだろう。場所は、改札外。豊富駅側とは逆サイドの駅出口近くにある。麺類メニューは、米粉麺の板條と小麦粉麺の小拉麺から選べる。そしてサイドメニュー的に餃子を扱う。この辺りは台湾の中でも米食が盛んな地域なので、メインは板條と考えていいだろうか。とりあえず、ベーシックな台湾肉燥板條を注文してみた。価格は70元(≒259円)。台鉄の駅にある店よりは、全体的にちょっと高い印象。日本でも在来線駅に比べて新幹線駅は高物価の傾向がある。それと同じことか。口頭注文、代引き。若い女性店員は、英語が堪能だった。
  注文後に調理するので、提供までに3分ほどかかる。麺(板條)は、冷凍。ただし、温めるだけという感じではなくしっかり茹でていたので、おそらく冷凍生麺だと思う。冷凍肉(薄切りの豚バラ)と一緒に茹でて、紙製容器へ。この容器はやや上部が広くなった縦型の直方体のもので、ハリウッド映画などに出てくるヌードルを連想させる形状。汁麺は入れられないだろうが、メニューは汁なし麺が中心なので、すべてこの容器で提供しているのだろうか。麺と肉の上から、白菜のような葉物野菜とモヤシ、肉そぼろの入った醤油系のソースをかけて完成。すぐ目の前で調理するから、調理シーンを一部始終眺められるのが嬉しい。新左営で一度実食済みの板條。新左営ではほうとうのように太い平打ち麺だったが、ここでは乱切りタイプだった。太いものはきしめんくらいあるが、細いものは細うどんほど。一本の麺だけで見ても、端と端とで太さがだいぶ違っているものがある。おそらく、手打ちなのだろう。手延べではなく、手打ち。包丁で切ったような切り口だ。思っていたよりもモチモチ感があるがコシはなく、小麦麺のような甘みもない。よく言えばあっさり。悪く言えば味気ない麺。その点、この店では肉そぼろのソースの味がわりと濃いので、助かった。ニンニクの香りが利いているのもよいと思う。板條は、全体的に味が薄くなる汁麺より、まぜそばスタイルの方が日本人向きではないかと思う。総じての印象としては、焼いてはいないのだけれど、焼きうどんを連想させた。あっさり味の焼きうどんだと考えれば、結構美味しく食べられるのではないかと思う。
  他メニューは、板條も小拉麺も、70元が基本。伝統的なメニューのほか、恐らく辛い仕様なのであろう「辛辣」で括られたメニューもいくつか。このうち、韓式泡菜豬板條だけが85元(315円)と高値になっている。「韓式」だから、トッポギみたいな仕様だろうか。また、この店に限らず台湾全土に言えることではあるが、「牛」で括られたメニューは高い。紅焼牛肉板條は160元(≒592円)する。餃子は、「牛」の括りに入っている紅焼牛肉餃子160元のほか、「餃」の括りに入っているものが3種類あり、いずれも10個入りで70~75元(≒259~278円)。紅焼牛肉板條と紅焼牛肉餃子には、「(湯)」と注記されている。つまり、汁麺またはスープ餃子だ。これも、四角形の紙容器での提供になるのだろうか。ちょっと怖い感じがするのだが。箸は個包装の竹箸。専用客席ではない場所で食べることになるだけに、紙ナプキンを付けてくれる気遣いがありがたかった。


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★台中駅(台湾。台鉄西部幹線(台中山線))
「大裕」  実食日:2019/10

  駅舎内ではなく、駅舎に隣接している台中バスターミナル内になる。海外案件は、基本的に駅ナカのみ(駅外は日本そばを扱う場合に限る)でいいかなと思っているのだが、台中駅構内にこれといった飲食店がなかったことだし、こちらがあまりにも楽しすぎる店だったので、参考までに記録を残しておきたい。台中バスターミナルは2016年11月に新築移転され、ピカッと綺麗な建物。3つのバス会社が共同で使用するマンモスターミナルだ。内部には、「台中站前食堂(まいどおおきに食堂)」や「モスバーガー」など外資系(日系)の飲食店が多く、なんだか高鉄駅みたいな雰囲気。その中に1軒だけ、超古典的な屋台風の飲食店がある。しかも、最近の観光夜市に並ぶようなステンレス製の骨組みで出来た無機質な屋台ではなく、骨組みもカウンターも木製。おそらくかつての夜市ではこのタイプの屋台がズラリと並んでいたのだろう。日本に例えれば、綺麗にリニューアルされた新大阪駅のコンコースに人力で引くタイプの屋台のおでん屋が出ているようなもの。これは惹かれるでしょう! あまりにもお気に入り度が高すぎて、2日連続で食べに寄ってしまったほどなのだ。屋台は2つに分かれていて、メニューも違う。向かって左の屋台はお粥やスープがメインで、右の屋台が麺類やご飯ものになる。ただ、店員は兼務しているので、同一店とみなして問題ないだろう。口頭注文、先払い。右の屋台の前に出されたテーブル席(写真ではフレームアウト)で食べる場合には、配膳してくれる。下げ膳は基本的に不要。英語は通じないので、台湾語ができないのであれば、注文口のところにもるメニュー表にて指さし注文で。
  1回目は、招牌麺線65元(≒241円)+焢肉飯100元(≒370円)。どちらも、使い捨ての紙製容器で提供。招牌麺線は屋台で定番のとろみのあるスープにそうめんのような細い麺(短いので、白石温麺の方が近似しているかも)が入った「大腸麺線」を想像していたのだが、違った。麺はやっぱり極細のそうめんみたいな短い麺なのだが、ぶっかけそばのようなイメージだった。肉そぼろと青菜がたっぷりトッピングされる。あまり癖がなく、日本人にもなじみやすい味覚でとても美味しい。青菜の青臭さが特に印象的で、豚の脂っこさを中和してさっぱりした印象に仕上がっていた。焢肉飯は、ワンプレートの平皿料理。甘酢をかけたご飯の上に豚バラの角煮を2つドンと乗せ、周囲にキャベツ炒め、青菜炒め、若竹の炒めもの、角切りタケノコの炒めもの、高菜炒めを配する。いろいろな味や食感が楽しめるし、どれもこれも美味い。雰囲気が余計に美味しく感じさせる部分もあったかもしれないが、コスパが上々であることは間違いない。特に美味かったのが、角煮と角切りタケノコの炒めもの。日本人好みの塩気があって、ご飯が進んだ。翌日は、香椿拌麺70元(≒259円)+宜蘭鴨賞甜醋飯100元。香椿拌麺は、麺線とは異なる深い紙製の丼で提供。バケツみたいな形状。こちらは、モチモチ感のあるやわらかめの中華麺に、キャベツのような淡色野菜とセロリのような食感・風味の野菜を茹でたもの、そして香椿を乗せる。香椿は、台湾東海岸に位置する宜蘭市の名物で、ほろ苦くてちょっとシビレを伴うそぼろ状の調味料。そのまま食べると香りが勝りすぎてしまうが、麺とよく混ぜて食べると美味しい。宜蘭鴨賞甜醋飯は、その名のとおり宜蘭市名物の鴨肉を使ったご飯もの。焢肉飯と似たようなスタイルのワンプレート料理で、ご飯の上に鴨肉たっぷり、その周囲に豚足のようなもの、若竹の炒めもの、キャベツ炒め、青菜炒め、メンマみたいなタケノコ煮。副菜は、焢肉飯と似通っているのだが、一部違う。これがメニューによる違いなのか日による違いなのかは未確認。鴨肉はスライスしてあり、日本の立ちそばでよく出るハムみたいな食感のものではなく、コリコリした適度な歯ごたえがあって美味しい。ご飯は、こちらも甘酢がけだった。焢肉飯に比べてメイン惣菜の風味が繊細なので、甘酢の風味がちょっと強く感じた。不味くはないのだけれど、甘酢なし(あるいは、もうちょっと甘酢の量を減らす)で食べてみたかった。台湾語を話せない日本人が2日続けて訪問したから、顔を覚えられたのだろうか。食べている最中に店主(白髪のお爺ちゃん)が厨房から出てきて、1杯20元(≒74円)の金棗茶をサービスしてくれた。甘酸っぱくて、美味しい。デザート感覚で飲めるお茶だ。金棗も、宜蘭市の名物。店主が宜蘭市にゆかりのある人なのだろうか。後日宜蘭へも行く予定があるので、旅の後工程がとても楽しみになった。鍋焼麺120元(≒444円)とか台湾煮麺100元とか、まだまだ食べてみたい魅惑のメニューがたくさんある。今後台中を訪れることがあったら、また寄りたくなってしまいそうだ。

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★新烏日駅(台湾。台鉄西部幹線(台中山線))
「五花馬水餃館」  実食日:2019/9

  改札を出て直進、高鉄台湾駅へ続く乗り換え通路の途中、右側。両駅は建物の外に出ることなく相互往来ができるので、どこまでが新烏日駅でどこから高鉄台湾駅とみなすべきかで少々迷う。おそらく、途中にある短い階段が境界線だろうと判断し、当店は新烏日駅構内にあるものとみなす。店名に「水餃」と入っているとおり、メインに扱うのは水餃子。ただ、麺類も豊富に扱い、水餃子を含む各種副菜とのセットもある。まぁ、駅ナカの麺類店と考えていいだろう。この店は、精算・商品受渡しのシステムがちょっと変わっている。入店して左手に注文口があるのだが、まずここが二手に分かれている。片方は「外帯」、つまりテイクアウト専門の注文口。もう片方が「内用」、つまりイートイン専用の注文口。口頭注文して先払いを済ませると、番号が記載されたレシートを渡される。これを持って席で待機。受渡口上部の電光掲示板に自分のレシート番号が点灯したら、取りに行く。声での呼び出しやバイブレーターはなく、電光掲示板のみで確認することになるので、見落とさないよう注意が必要だ。客席は、テーブル席が数えきれないくらいある。たぶん、70以上。各席に箸や調味料などは常備されておらず、受渡口の脇にまとめて置いてある。
  今回は、麺、スープ(湯)、副菜、ドリンクのセットを注文。130元(≒481円)から195元(≒722円)まである中から、一番安い130元のセットをチョイス。麺は、招牌乾麺。少しネットリする白っぽい中華麺に肉そぼろをかけ、茹でたモヤシと味玉(半分)をトッピングした、まぜそばスタイルの温かい麺料理だ。ちなみに「招牌」とは、「名物」とか「看板商品」とか、そういった意味らしい。「乾麺」は、日本人だと乾いた棒状の麺を想像してしまうところだが、台湾では汁なし麺を意味する。つまり、招牌乾麺は、看板商品の汁なし麺ということになる。日本の駅そば店に例えるなら、トッピングなしの「温ぶっかけそば」のイメージだ。ちなみに、招牌乾麺単品だと55元(≒204円)。肉そぼろの味が濃そうなルックスとは裏腹に、実際に食べてみるとかなりあっさりしていた。自家製を謳う麺は結構激しく縮れているため、肉そぼろがよく絡む。ただ反面、縮れているぶん麺同士が絡まりやすく、食べづらさを感じる部分もあった。箸で持ち上げると全部一緒に持ち上がってしまう、的な。付属のスープは、豆腐と白菜の超薄味スープ。単品メニュー名は「青菜豆腐湯」で、単品価格は35元(≒130円)。副菜は、「蘿蔔糕」という餅(2個)。エビの香りがあって、少々モッサリした食感の餅だ。大根から作る餅らしい。私は予備知識なく食べたのだが、原材料が大根だとは到底思えなかった。イメージ的には、もち米ではなくうるち米で作る餅みたいな感じ。ちなみに蘿蔔糕の単品価格は、40元(≒148円)。ドリンクは、ソフトドリンクの中から選べる。私はコーラを選択(ほかにスプライト、オレンジジュース、レモンティーなどがある)。まぁこれは、日本で飲むのと大差ない。単品合計価格だと130元だから、セットにするとドリンクのぶんだけお得という計算になる。日本の飲食店では「水はタダ」が当たり前だが、海外にそんな常識はない(むしろ、タダで水を出す店は稀少)ので、ドリンクが実質無料になれば結構お得感がある。箸は、使い捨ての竹箸とエコ箸の両方を用意。エコ箸は鉄製なので重いし、油っぽい料理だと滑って食べづらい。日本人にとっては竹箸の方が使いやすいだろう。
  平日18:30頃の訪問。先客・後客多数で数えきれず。まるまる空いているテーブルは数えるほどしかなく、空いてるなと思って座っても、後客が容赦なく相席してくる。そのくらい、混雑が激しい店。なお、この店では英語が通じたが、店員が話す言葉は台湾語になる。最低限、「外帯」と「内用」くらいは聞き分けられないと苦しい。


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「麥味登」  実食日:2019/10

  台湾オリジナルの洋風ファストフードチェーン「麥味登」が、新烏日駅構内にある。西海岸を中心に台湾全土にあるチェーンで、直営店とFC店がある。ここ「烏日高鉄店」は、公式HPによるとFC店らしい。扱うメニューは、ハンバーガー、サンドイッチ、パスタ、カレーライス、各種スナックフードなど。一応パスタの扱いがあるということで、参考までに対象に含める。台湾では「義大利麺」の名で普及しているパスタだが、結構値段が高い場合が多い。100元(≒370円)を切るケースは稀で、大衆的な食堂でもたいてい120元(≒444円)くらいする。そんな中、「麥味登」では90元(≒333円)で食べられるのがありがたい。場所は、改札を出て高鉄台中駅方面へ続く乗り換え通路の途中、左側。上記「五花馬水餃館」の斜め向かいくらい。有人レジで先払い(英語通じる)し、席で待っていれば配膳してくれる。食器返却用の棚があり、下げ膳はセルフになる。客席はテーブル席のみで、2人掛けと4人掛けを合わせて28席。扱うパスタは、2種類。どちらも90元で、青醤鶏肉義大利麺と、茄汁檸檬鶏義大利麺。埔心駅「鮮洛檸」での経験から、後者はナポリタン的なものであろうと想像できる。「青醤」系のパスタはまだ食べたことがないので、ここではぜひ青醤鶏肉義大利麺をいただこう。ついでに、ハンバーガーもひとつ。豬肉起司満分堡40元(≒148円)を追加で。「豬」は豚で、「起司」はチーズだと分かっている。これはポークチーズマフィンバーガー(「満分」=マフィン、「堡」=バーガー)だ。
  料理は、5分ほどで提供された。青醤鶏肉義大利麺は、言ってみればバジルクリームソースパスタだった。これはちょっと意外。埔心「鮮洛檸」の「青醤蛤蜊麺」がボンゴレビアンコっぽいもの(メニュー写真で見ただけだが)だったので、青醤は塩味パスタではないかと踏んでいたのだ。クリームソース系は、「白醤」になるのではないかと。まぁいいや。シルクハットを逆さまにしたような形の皿に盛りつけ、スモーク香のある鶏肉とブロッコリー、ヤングコーンをトッピング。なかなかお洒落な仕上がりだ。味覚的にも、ちゃんと塩気があってなかなか美味しい。量はさほど多くない(埔心「鮮洛檸」の方がボリューミー)けれど、手軽に食べるパスタとしては充分な出来映えだ。豬肉起司満分堡は、日本のマクドナルドのものと比べるとマフィン生地がやわらかくしっとりしている印象。ポークのパティには甘辛醤油系のとろみのあるソースを塗り、その下に色の濃いスライスチーズ(チェダー?)を1枚。チーズがほとんどとろけていなかったのは、そういう種類のチーズだからだろうか。ビーフパティに比べて食感が弱く、「肉を喰ったぁ!」という満足度はあまりないのだが、味覚的には問題なく美味しかった。台湾には外資系のハンバーガーチェーンが多数進出しているが、今後私が台湾を旅行してハンバーガーを食べたいと思ったら、たぶん毎回「麥味登」に入るだろう。台湾のマックやモス(これは空港で一度食べた。日本とあまり変わらない)がどんなスタイルで運営しているのかも、気になるところではあるが。


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★高鉄台中駅(台湾。台湾高速鉄道)
「丸亀製麺」  実食日:2019/10

  改札外、新烏日駅への接続通路方面。わりと目立つところにあるので、乗り換える人々について歩けば自然と目に入るだろう。ご存じ日本のうどんチェーン「丸亀製麺」が、台湾にもある。というか、台湾では日本流のうどんがかなり浸透していて、ここだけでなく街なかでも頻繁に目にする。もっとも多いなと感じるのが「丸亀製麺」で、うどんも扱う定食屋の「まいどおおきに食堂」が続く。台湾土着のうどん店もある。もともと台湾の麺料理の中にはうどんとラーメンの中間くらいのものが結構あるので、そばよりもうどんの方が受け入れられやすいのだろう。となれば、和製うどんも1回くらいは食べておかなければ。システムは、日本の店舗と変わらない。讃岐うどんスタイルだ。入店したらまず盆を取り、注文口でベースとなる麺を口頭注文。基本的に英語が通じる。それどころか、「かけうどん」は日本語でも通じる。サイズの「大・中」も日本語OK。「L・M」でも通じる。麺を受け取ってから天ぷらをはじめとした各種トッピングをセルフで取り、有人レジで精算。その後、レジからちょっと離れた場所にあるネギ(青)と天かすを好みで追加して、自席へという流れ。台湾では少数派の冷水器も完備している。客席はテーブルが中心で、ちゃんと数えていないが40くらいある。
  今回は、「かけうどん(中)+かき揚げ+いなり」の実食。麺は、日本の店舗よりもちょっと柔らかいかなという印象だったが、これは意図的なものではなく誤差かもしれない。日本の店舗と同じレシピではないかと思う。つゆにも、ちゃんと塩気と出汁感がある。タマネギ中心のかき揚げのクオリティも、なかなか。形こそいびつだが、味は日本の店舗と遜色ないものだった。いなりは、三角形。日本の店舗のものよりもちょっとずんぐりしているような印象だったけれど、味覚面では特段問題ない。ちゃんと酢も利いているのだけれど、これは台湾人に受け入れられているのだろうか。フリーの天かすは、やや油強めながらもサクサク感があり、アクセントとしての役割をしっかりと果してくれる。総じて、日本の店舗に近いクオリティで提供できていると感じた。価格は、かけうどん(中)が69元(≒255円)。かき揚げが32元(≒118円)、いなりが1個25元(≒93円)。いずれも、日本の店舗よりもやや割安な設定。台湾の平均物価を考慮するとむしろ高く感じるかもしれないが、日本の店舗よりも高い価格での提供だった「富士そば」や「吉野家」よりは受け入れられやすい価格帯だろう。箸はエコ箸。日本で一般的に用いられているエコ箸よりも箸先が太く、やや扱いづらい。
  ところで、周りの席で台湾人がうどんを食べる姿を眺めていて、気づいたことがあった。台湾人は、基本的に麺を啜らない。トラディッショナルな麺は短いことが多いのですすらなくても食べやすいと思うのだが、丸亀製麺の麺は結構長い。これを啜らずに食べるのは、なかなか大変なようだ。男性は箸を直接口に運んでいたが、女性は一度レンゲに乗せてから口に入れていた。麺の長さくらいは、台湾人に親しみやすいように変える手もあるのではないだろうか。麺の長さを半分にすれば、台湾人の間でうどんがもっと広く普及するのではないだろうか。大きなお世話かな。


※閉店していました。跡地は、定食の「大戸屋」になる模様です(現在工事中)。日系から日系への変化ですね。高鉄駅ならではだなと感じます(2019/12、確認)。

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「翰林茶桟」  実食日:2019/10

  改札外。台鉄新烏日駅との乗り換え通路右手。上記「丸亀製麺」のすぐ近く(通路の向かい側)。ドリンク類がメインの簡易的な喫茶コーナーなのだが、自由にカスタマイズできる麺類の扱いがある。麺やトッピングを個別に指定していくスタイルなので、どことなく香港の車仔麺を連想させる。有人レジ(英語は怪しいが通じる)で先払い。配膳してくれる。下げ膳はセルフというか、使い捨て容器なのでゴミ箱へ。客席は、椅子付きカウンターが中心だが、なんと「立食区」を併設している。つまり、立ち食いカウンターだ。これは、台湾ではたいへん珍しい。というか、ここの他では見たことがない。世界的に見ても立ち食い席を擁する飲食店は珍しい。席のない手持ち食いなら屋台形式の店では珍しくないが、ちゃんと立ち食い用の席が設けられているケースは稀なのだ。これまでに訪れた中では、香港の「小食快綫」くらいのものだ。ただ、立食区を利用する人はたいへん少ないとみえ、訪問時にも誰も利用していなかった。私が精算後に立食区へ移動すると、若い女性店員が慌てて「席はこっちですよ」的なことを言ってきた(台湾語なので、たぶんそう言ったのだろう、という感じだが)。当然、店員の案内を固辞して、立食区で実食。
  まずは、麺を選ぶ。選択肢は乾麺というか即席麺が中心で、台湾版ベビースターとも言える存在の「王子麺」や「科学麺」もある。私は、丸い形をした「蒸煮麺」をチョイスしたのだが、後になって写真を見返したら、既製品ではなさそうな意麺(揚げ麺)や冬粉(春雨のようなもの)があったことに気づき、ちょっと後悔。スープは、ノーマルor麻辣の選択。私は麻辣があまり得意ではないので、ノーマルで。トッピングは、大きく分けると2種類ある。ひとつは、生野菜類。もうひとつは、関東煮(おでん)。生野菜類は、葉物野菜やヤングコーン、キノコなど15種類くらいある。私は、小松菜のように見える葉物野菜と、ヒラタケのように見えるキノコを選択。おでんは、ノーマルタイプと麻辣タイプがあり、ノーマルタイプから玉子を選んだ。おでん種は、ノーマルタイプも麻辣タイプも、それぞれ30種くらいある。目移りしてしまうほどの品揃えだ。もちろん、中には変わり種も。ニンジンとかコーンとか、日本ではあまりおでん種にならなそうな食材もあるし、「そもそもこれは何?」というような得体の知れない種も多数。価格は、蒸煮麺が35元(≒130円)で、「蔬菜或蒸煮麺任選三様100元」の表記があるから、足して135元になるのかなと思っていたら、最終的な支払額は125元(≒463円)だった。「買2送1」(2個買うと1個無料)などいろいろな表示が入り乱れているので、どれが適用されたのかがよく分からない。いずれにしても、台湾の平均的な物価を考慮すると、決して安くはない価格帯だ。
  調理シーンを、一部始終見学。まずは、麺を茹でて、自動湯切り器(台湾では初めて見た)にかけてから紙製の丼へ。別途茹でた野菜とキノコを、丼へ。おでんの玉子は、そのまま丼へ。最後にノーマルおでんのつゆを注いで、出来あがり。なんとも簡易的だ。味覚的には、麺はインスタントなのでどうということもなかったが、つゆが美味かった。いろいろな具材を煮込んだおでんつゆを使用しているので、出汁が混ざり合ってなんとも複雑というか、奥行きのある味わいになっている。塩気は薄いのだけれど、出汁の奥行きで美味しいと感じるし、飽きのこないものだった。おでんの玉子も、味は薄め。麻辣系のおでんトッピングをひとつ加えてもよかったかなとは思ったが、それだと元のスープの味が分からなくなりそうだ。カスタマイズの自由度が高い店なので、もう何回か通ってみたいな。というか、他の駅でも何度か見かけたので、今後台湾を再訪することがあれば、他駅の店舗でも食べてみたい。もちろん、立食区のある店舗が他にないかどうかも、調べてみたい。


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★員林駅(台湾。台鉄西部幹線(縦貫線南段))
「原福味」  実食日:2019/10

  やばい、中毒性の高い駅を見つけてしまった。駅舎の2階に屋台風のフードコートがある台北駅もオススメなのだが、員林駅はその上をゆく。なんと、屋台街そのものがあるのだ。員林駅は、日本人の間ではあまり知られていない。台中と台南の間で、彰化から南へ3駅。この辺りは台湾の中では比較的観光資源が乏しいところ(だと勝手に思っている)。人気の集集線に乗りに行く人も、この駅は通過してしまうことが多いだろう。一応特急(自強号)の停車駅で乗降者は結構多いのだけれど、その大半は地元の人々。それなのに、駅隣接のガード下に「員林観光市場」と銘打たれた屋台街が広がっているのだ。厳密には駅ナカではないけれど、駅とひと続きになったガード下だから、当サイトの対象に含めて問題あるまい。台湾全土にある観光夜市は、基本的に雨が降ったら手も足も出せない。しかし、ここは全天候型のガード下。雨傘不要で一年中観光夜市を楽しめるのだ。メインは夜営業だが、一部の店舗は午前中から営業している。今回は10:30頃の訪問だったのだが、麺類を扱う「原福味」という屋台が営業していたので、ここで食べてみることにした。口頭注文、先払い。英語は通じないので、注文口にあるメニュー表にて指さし注文。客席はテーブルのみで、計10席。観光夜市では路上に共用の飲食スペースを設けていることが多いが、員林観光市場は基本的に各店が専用席を有する形になっている。
  今回注文したのは、台中バスターミナルの「大裕」で食べ逃した、鍋焼意麺。その名称から鍋焼きうどんのようなものだろうと思っての注文。「鍋焼」と冠されたメニューが8つある(麺種やトッピングが異なる)なか、先頭に記載されていた意麺を選択した。「先頭に記載=店のイチオシ」と考えての選択だ。値段は、65元(≒241円)。屋台の麺料理としては決して安い部類ではないが、提供されてみて印象が翻った。なにしろ、屋台料理としてはボリューム感が桁違いなのだ。小腹満たしや複数注文前提のいわゆる「小吃」ではなく、これ1杯で1食まかなえる量だ。ルックスの印象をひとことで言うと、揚げ麺玉子とじチャンポン。煮込んであることは確かだが、土鍋や鉄鍋での提供ではなく、丼に盛られての提供だった。意麺は、揚げ麺。日本のかた焼きそばに近いが、そこまで固くはない。外側はパリッとしていて、芯の部分はやわらかい。そして、香ばしくてとても美味しい。スープは、基本的には塩味なのだろう。薄味だけど、とじた玉子の旨みが全体に浸透していて、物足りなさは皆無。そして、ビックリしたのがトッピングだ。確認できただけでも、豚肉、摃丸、さつま揚げのようなもの、棒状の餅のようなもの、輪切りのイカ、魚蛋(つみれのような魚のすり身団子)、キャベツ、ニンジン、モヤシ、キクラゲ、エリンギ、ペンギンの形をしたカマボコ、そしてとじ玉子。まぁとにかく具だくさんだ。日本だったら大衆食堂でも800円くらい取れそうな内容で、これが65元で食べられるとは信じがたい。台湾屋台の本領を、垣間見た気がした。しかも、半分くらい食べ進めたタイミングで、愛想のよいおばちゃんがキンキンに冷えた砂糖入りのウーロン茶を持ってきてくれた。なんと、サービスだという。いやいや、それはやりすぎだって。もう50元くらい置いていきたくなってしまうではないか。
  退店時に「很好吃」と声をかけると、おばちゃんは日本語で「ありがと」と返事。おやおや、英語は通じないのに、日本語は少しイケますか。周囲の屋台を見ると、員林観光市場内には、ポツポツとではあるが日本語表記も見られる。結構日本人も来ているのかな。員林観光市場には、全部で30軒くらいの屋台が連なっている。「原福味」の他にも、麺類を扱う店が結構ある。夜市名物の大腸麺線を扱う店もあることだし、とにかく気に入ったので、チャンスがあったらまた来たいな。当駅近くに宿をとってもいいくらいだ。次回は、観光市場全体が賑わう夜に来てみようかな。


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「排骨酥麺」  実食日:2019/12

  10月に一度訪れている員林駅観光市場に、2カ月ぶりに再訪。前回は午前中の訪問であまり賑やかな感じではなかったので、今回は夜に行ってみた。まぁ想像どおり、夜はたいへん賑やかだ。午前中にはほんの一部しか営業していなかった屋台に、陽が落ちると煌々と電灯が灯り、どこからともなく人々も集まってくる。夜の光に集まってくるなんて、なんだか夏の虫みたいだな。今回はぜひ大腸麺線の屋台で食べたいなと思っていたのだが、当該屋台に行ってみると店主のお姉さんが大きな鍋をひっくり返して「没有」とひと言。あらま、もう売り切れてしまったのか。時刻は21時を回っていたから、仕方ないといえば仕方ない。そこで、排骨麺をはじめ5種類の麺類を提供している「排骨酥麺」を標榜する屋台に寄ってみることにした。当サイトでは一応看板に記載されたこの文字列を店名と解釈しているが、実際にはこれが店名なのかどうかは甚だ怪しい。そもそも店名のない屋台も多数あるので。口頭注文で、先払い。英語は通じない。排骨麺を食べようと思い注文すると、「没有」の返事。売切れだ。仕方なく、残る4種の麺類を片っ端から「有没有?」と聞いて、売り切れていなかったものの中から炒蚵麺を選択した。値段は、40元(≒148円)。安いなぁ。これだけでは申し訳ないので、肉絲炒飯(50元≒185円)を抱き合わせ注文。
  「蚵」の字が入っていることから、炒蚵麺は牡蠣を使った焼きそばのようなものであろうという想像はできていた。運ばれてきたのは、やはり小ぶりの牡蠣がたっぷり入った、塩味の焼きそばだった。麺は、中太の丸麺。麺種は米粉・板條・冬粉に変えることもできるのだが、私が注文したのはデフォルトの麺で、たぶん「油麺」だろう。やや炒め油が強いこともあってか、ツルツルした舌触りだった。塩気は、全体的に味が薄い台湾料理の中では、わりと濃い方。具材は、牡蠣の他にモヤシとニラ。牡蠣とモヤシから水分が出るようで、全部食べ終えた後、皿に少量のスープが残る。油ギッシュなスープではあるのだけれど、牡蠣の旨みが出ていて美味かったので、全部飲み干してしまった。総じて、チープ感がありつつもしっかりと満足できる内容。油が強めだということさえ気にならなければ、かなり高コスパな印象になるだろう。一方の肉絲炒飯は、細切りの豚肉(肉絲)入りの玉子チャーハン。こちらもやや油ギッシュではあったが、玉子がご飯をしっかりコーティングしていてパラパラ食感で、美味しかった。日本の中華料理店のようにドーム型に盛りつけるのではなく、自然に皿に乗せたような、言ってみればコニーデ火山のような形状の盛りつけ。なかなかボリュームもあり、炒蚵麺と両方食べたらかなりお腹が膨れた。これだけ食べても100元(≒370円)に届かないのだから、ありがたい話だ。員林観光市場には、まだまだほかにも麺類を扱う屋台がたくさんある。いつまでかかるか分からないが、全部食べ潰してみたいものだ。とりあえず次回は、大腸麺線だな。


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★嘉義駅(台湾。台鉄西部幹線(縦貫線南段))
「幸福巴士(Happiness Bus)」  実食日:2019/12

  嘉義駅は、旧市街側の前站(表口)とバスターミナル側の後站(裏口)、2つの出口がある。9月に訪問したときには前站側しか見ておらず、「この駅には麺類を扱う飲食店は入っていないな」と諦めていたのだが、今回後站側を歩いてみたらこの店が見つかった。前店側はゴミゴミしていて駅舎も古く、それでいて人流が激しいので、店舗を設置する余地がないということだろうか。この店は、基本的には飲料や菓子などを扱う物販店で、日本でいえば駅ナカによくあるミニコンビニのような外観。しかし、店頭に出されたテーブル席で飲食も可能となっている。メニューはドリンク系が主体だが、麺類メニューも11種類あるので、当サイトの対象に含めてよいだろう。客席は、4人掛けテーブル席×2。口頭注文で、先払い。英語は通じないので、メニュー一覧にて指さし注文。
  麺類メニューは、炒泡麺と鍋焼麺が中心。炒泡麺はインスタントラーメンの麺を使った焼きそばのようなもので、員林で一度食べたことがある鍋焼麺は煮込みラーメンのようなもの。インスタントラーメンではネタとしてイマイチだろうということで、鍋焼麺をチョイス。麺種は、員林で食べた意麺を外して、春雨を麺に見立てた冬粉を選択した。値段は、60元(≒222円)。駅ナカとしては、安い方か。売店コーナーの奥に厨房があるらしく、調理シーンは見えない。3分ほどで、料理が運ばれてきた。員林で近しいメニューを一度食べているだけに、大枠のイメージとしては概ね想像したとおりだった。ひと言で称するなら、玉子とじチャンポンだ。麺は春雨なので、あまり味がない。緑豆春雨だと思うのだが、あまり青臭さも感じなかった。印象的なのは、プツプツとした食感の方だ。スープは、基本的には薄い塩味。ただ、仕上げに醤油系のどろっとしたソースがかけられているので、これが混ざることで少々の香ばしさが生まれる。具材は、貢丸(肉団子)、カニカマ、青菜、キクラゲ、さつま揚げのようなもの、ニンジン、玉子。提供と同時にシーフード系の香りが鼻を突いたのは、カニカマの影響だろうか。カップ麺のシーフードヌードルに通じる香りがあり、食欲をそそられる。玉子は、一応かき玉ではあるけれど、員林「原福味」ほどしっかりかき混ぜておらず、生卵をひとつまるごとドボンと落として、煮ているうちに崩れてかき玉状になったような感じ。自宅でインスタントラーメンを作る時に、よくこんな感じになる。ボリューム感は員林「原福味」ほどではなかったけれど、総じて満足度は高かった。鍋焼麺は、台北エリアではあまり見かけないメニュー。台中以南へ訪問する際には要チェックだ。丼は紙製で使い捨て。箸は竹箸。
  平日18:30頃の訪問で、イートインは先客・後客とも0。飲料などを買っていく人はちらほらとあるようだけれど、イートイン需要はそれほど多くなさそう。見たところ初老の夫婦(?)で経営しているみたいだし、忙しく薄利多売しているというよりはのんびり道楽商売しているようなムードが漂っていた。こういう雰囲気は、大好き。


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★高鉄台南駅(台湾。台湾高速鉄道)
「深縁及水(BUTTERFLY LOVE)」  実食日:2019/12

  駅舎1階(改札は2階)、待合所の北側。10月に訪れたときには工事中だった場所に、スターバックスや一風堂(ラーメン)とともに11月にオープンした新店。元々ここにあったのは「府城食府」という大衆的な飲食店だったようなのだが、高鉄駅での新規オープンということで、だいぶ値段が高くておしゃれな雰囲気の店になってしまった。まぁ、海外に関してはあくまでも参考なので、駅構内で麺類を扱ってさえいれば対象に含めてもいいだろう。システムは、有人レジで先払い。スタッフは、英語堪能。片言ながら、日本語にも対応する。高鉄駅らしいね。精算後は、渡された番号札を自席に立てておけば、配膳してくれる。日本のマクドナルドみたいな方式だ。客席は、テーブル席と対面式の椅子付きカウンター。席数は、数えきれないくらい多数。この店で扱うメニューは、麺かご飯ものをメインとする定食系。麺の単品注文は、少なくともお品書きの中にはない。麺は、台南のご当地麺とも言える関廟乾麺や牛肉麺など。ご飯ものは肉燥飯や咖喱飯(カレーライス)などのほか、和のテイストを感じる鯖魚飯(サバの塩焼き定食的なもの)もあった。店内はとてもお洒落な雰囲気で、関廟麺に関する展示などもあるので、いろいろな知識を習得できる。
  もちろん、私が注文したのは、関廟麺をメインとしたセット。スープ麺スタイルとまぜそばスタイルがあり、まぜそばスタイル(関廟拌麺)を選択。セット内容は、メインの関廟拌麺、スープ、3種の惣菜(煮玉子・カットトマト・タロイモの煮物)が盛られたプレート、チーズケーキ、選べるドリンク(紅茶を選択)。値段は、250元(925円)もする。高鉄価格だが、高鉄なんだからしょうがない。できれば、麺類の単品提供があるとありがたいんだがなぁ。
  それはさておき、関廟拌麺は、手延べ&天日干しで作られた中華麺。日本でいえば、稲庭うどんのようなイメージだろう。あまりコシはなく、どちらかというとソフトな食感。台北駅地下の「鼎記」で食べた油麺に近いかなと感じた。悪くはないが、さほど印象的なものではなかった。具材は、豚ロースの大きなチャーシュー2枚、肉そぼろ、モヤシ、ニラ。日本のラーメンに乗せるようなチャーシューがトッピングされていたのが、ちょっと意外。というか、これも「高鉄駅だなぁ」と感じるセンスだ。全体的に味は薄めで、良く言えばあっさり、悪く言うとモヤリ系。まぁ、美味い部類だ。台湾料理に特有の八角臭は、中程度。それほどきつくはないけれど、苦手な人は要注意かも。スープは、牛肉か貢丸かで選択可。私は貢丸が台湾料理の中でいちばん美味しいと思っているので、迷うことなく貢丸を選択。適度に塩気があって、ほんのりとハーブが香り、ウインナーに似た旨みのある肉団子。相変わらずとても美味しい。あまり塩気のないあっさりしたスープなのに、物足りなさは皆無。ただ、貢丸は、2個だけ。もう1個入れてほしかったな。惣菜プレートの中では、タロイモの煮物が印象に残った。繊維質を感じる食感なので、好き嫌いは分かれるかもしれないけれど、シャリッとしていて美味しい。梨と林檎の中間くらいの食感で、パイナップルみたいな繊維質があるイメージ。チーズケーキは、出来合いだろう。口直しのデザートとしてありがたいが、特段どうということもないものだった。総じて、美味しいし、ボリューム感もある。パクチーを使っていないのも、個人的にはありがたい(特段嫌いということではないが、全体の風味を支配してしまうので)。ただ、値段だけが少々引っ掛かる。180元くらいだったらイチオシの太鼓判を押せるところなんだがなぁ。ちなみに、今回食べたのは最安のメニューで、一番高いセットだと350元(≒1295円)になる。高鉄駅だから、しょうがないか。


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★新左営駅(台湾。台鉄西部幹線(縦貫線南段)、台湾高速鉄道(左営駅)、高雄MRT紅線(左営(高鉄)駅))
「北風蒸餃」  実食日:2019/9

  当駅は台鉄・高鉄・高雄MRTの3路線が乗り入れているが、実はそれぞれ微妙に駅名が異なる。台鉄は「新左営」で、高鉄は「左営」。MRTは「左営(高鉄)」。しかし、駅舎を共有していて別駅として考えることがまったく不可能なので、便宜上高鉄もMRTも「新左営」として扱うことにする。また、3路線のうちふたつ、つまり過半数が「新」ナシだけれど、台鉄には別途「左営駅」が存在するため、混乱を避ける意味でも当駅は「新左営」ととする。さて、店があるのは、台鉄・高鉄の改札(共用ではないが、横並びになっている)を出て左、駅直結のグローバルモールに入って左の通路を進み、一番奥の左側。ちなみに、MRTの改札は階が違う(遠く離れた地下)のでご注意。さて、間口に間仕切りのないこの店では、英語がほとんど通じない。いわんや、日本語などもってのほか。なので、台湾語を話せないのなら基本的に身振り手振りでやり取りをすることになる。しかし、実は全然ハードルは高くない。なぜなら、この店は注文用紙に記入してレジに出す(同時に支払いもする)システムになっているからだ。香港の車仔麺に近いスタイルだ。記入に不備さえなければ、ひと言も話すことなく料理にありつけるだろう。また、この店は基本的に外国人ウェルカムなスタンスで、言葉が通じなくてもおばちゃんは優しいので、しどろもどろになっても臆することはない。客席は、テーブル席のみ。4人掛けと2人掛けがあって、計30席くらいだろうか。厨房はガラス張りになっているので、調理シーンを一部始終眺めていられるのが楽しい。配膳付きで、下げ膳は不要。箸は、フロアの隅に鉄箸がたくさん置いてある。
  メニューは、蒸し餃子や小龍包などの「蒸類」、新烏日で食べた蘿蔔などの「煎類」、おかゆやスープなどの「粥・湯」、ご飯ものの「飯類」、「麺類」、スープ餃子と思しき「湯餃」、その他ドリンク類などの「其它」に分類されている。このうち、メニュー数が最も多いのは「麺類」で、16種類もある。なにしろ台湾語表記のみなので見当がつかないものも多いのだが、とりあえず本を書くために「高雄のどこかで湯板條を食べる」と決めていたので、シンプルな湯板條をオーダー。価格は、65元(≒241円)。板條は、簡単に言ってしまうと、米粉麺。ビーフンと違って、きしめんのような太平麺に仕立てるのが一般的だ。この店では特に太く、山梨のほうとうを連想させるルックスだった。米粉麺だからモチモチ感はなく、ボソッとしている。小麦と違って甘みもなく、とてもあっさりしていて素朴な印象の麺。悪く言えば、味がない麺。そして、鉄箸だとツルツル滑って掴みにくい。メニュー名に入っている「湯」は、スープ料理を意味する。つまり、「湯板條」はかけスタイルの米粉麺ということになる。メニュー名の頭に「牛肉」などが付けば、それがトッピングを指す。何もない「湯板條」であれば、「かけ」に相当。つまり、私が注文したのは、日本風にいうと「かけ板條」ということになる。ただし、台湾では、薬味のネギ以外何も乗せない麺料理は、ほとんど存在しない。かけに相当するメニューであっても、何かしら具材が乗る。九州の「かしわそば」みたいなものだと思ってもらえればいいだろうか。したがってこの店の湯板條にも、モヤシ、ニラ、肉そぼろがトッピングされていた。だから、かけ相当とはいえ結構見栄えがよい。スープは、極めて薄味。ほんのりと塩気があるかなという程度。薄く赤い色がついているので、台湾のあまり塩辛くない醤油を少し注していると思われる。出汁は、豚だろうか。香りよりも旨みの方が強い、動物系の出汁だった。総じての印象としては、少々物足りなさを覚えたものの、方向性としては私好みの味だった。もう少し味が濃ければなぁ、と思うところだ。それはこの店に限った話ではなく、台湾では常につきまとう感想なのだけれど。全体的に、台湾料理は薄味。調味料ではなく、素材の旨みで食わせる料理が多いのだ。他メニューの価格は、牛肉麺150元(≒555円)、酸辣麺95元(≒352円)、日式豬排飯170元(≒629円)。日式豬排飯は、おそらく日本式のカツ丼、つまり玉子とじのカツ丼だろう。このメニューを用意しているということは、日本人の利用もそこそこあるということだろうか。
  平日20:00頃の訪問で、先客は2人だったか3人だったか。後客はひとりだけだった。この時間になると、グローバルモール全体が閑散としている。帰り際に、おばちゃんはにこやかに手を振ってくれた。台湾語を話せない客にも、親切丁寧。それが、旅行者の利用も結構あるであろう駅ナカならではの特性と言えるかもしれない。不慣れな旅行者にとっては、街なかの雑多な飲食店よりも駅ナカの方がハードルは低いと思う。そのぶん値段は少々高めなのだが、それでも日本人の感覚で言えば相当安い。


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「周氏蝦捲」  実食日:2019/9

  台鉄または高鉄の改札を出て左、グローバルモールに入って左すぐ。上記「北風蒸餃」へ続く通路の途中にある。この辺りは人通りが多く、奥まった印象の「北風蒸餃」よりも好立地だと言える。「周氏蝦捲」は、台南担仔麺と、さつま揚げのような郷土料理「蝦捲」をメインに提供する店。台湾全土に店舗があるチェーン店だが、本店は台南にあり、中・南部でメイン展開している。ファスト感覚で食べられる人気店で、日本に例えれば「ゆで太郎」みたいな立ち位置だろうか。駅ナカでは、ここ新左営と高鉄台中で見かけた(実食したのは今のところ新左営のみ)。店舗名は「左営環球店」。「環球」は、そのまんま「グローバル」の中訳。間仕切りのない半露出店で、有人レジで口頭注文して先払い。肉声にてメニュー名での呼び出し。英語は、私と同じくらいの通用度。受渡時の呼び出しは台湾語になる。担仔麺を食べるのなら、「タンツーミエン」と呼ばれたら取りに行けばいい。客席は椅子付きカウンターのみで、15席くらい。下げ膳はセルフ。レジの反対側に返却口がある。
  担仔麺は、台北「洪祖師担仔麺」よりも安い50元(≒185円)。量は少なめなので、一食まかなうつもりならセットメニューを選んだ方がよさそう。単品だと、間食感覚になる。麺は、「洪祖師担仔麺」よりも少しモチモチ感のある中華麺。姫路「駅そば」よりもややラーメン寄りで、さしずめ「麺座」の黄そばといったところ。スープは、赤みが射していて辛そうに見えるが、全然辛くはない。薄い塩味で、食べ進めるごとにトッピングの肉そぼろの煮汁がスープ全体に広まって、醤油系の味が強まっていく。が、仕上げに散らしたパクチーの存在感がとても強く、スープの味を見たいときにはうまくよけながら飲む必要がある。一切れでも口の中に入ったら、口腔内全体がパクチー味になってしまうので。パクチーが苦手な人は、要注意だ。というか、南部では多くの料理にパクチーが入っているので、苦手なら台北方面をメインに旅した方がいいかもしれない。トッピングは、パクチーのほかにニラとモヤシ、肉そぼろに殻つきの茹でエビが乗る。むきエビではなく殻つきのエビを乗せているのが印象的だ。エビは大きくて(丼が小さいだけにないのこと存在感が強烈)食べごたえがある。ただし、殻をむくのが若干面倒だし、手が汚れる。パクチーの存在感が強いからだろうか、総じての印象は「エスニック」だった。台湾料理というよりは、東南アジアを連想させるような味わいなのだ。それでも、駅ナカらしい簡便さと手軽さがあるので、小腹満たしには好適だと思う。担仔麺には、今回実食したスープ麺仕様の「台南担仔湯麺」と、汁なし麺スタイルの「台南担仔乾麺」がある。どちらも50元。また、麺は中華麺だけでなく米粉(ビーフン)を選択することもできる(同額)。蝦捲は、単品だと65元(≒241円)。セットメニューもいろいろあるが、結構いい値段してしまう。個人的には、担仔麺に「魚鬆肉燥飯」40元(≒148円。そぼろかけご飯のイメージ)あたりを追加するのがベストではないかと思う。飲み水の提供なし。必要なら、持ち込みを(セットメニューにはドリンクが付いている)。商品と一緒にレンゲ提供。箸はエコ箸。


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「塔庫カレ」  実食日:2019/10

  屏東駅「斑鳩的窩」で食べたざるそばがなかなか強烈だったので、他にも「ちょっとおかしな和食」があるのではないかと興味が湧いてきた。そして新左営駅のグローバルモールをぐるぐる歩いていたら、「塔庫カレ」という日本語(カタカナ)交じりの店名(ほかにも「たこちゃん」「塔庫先生和食」などいろいろな表記があり、どれが正式な店名なのか判然としない)のカレー店を発見。メニューは、基本的には日本式のカレーライスが中心なのだが、ひとつだけ麺料理があることに気づいた。「咖哩豬排烏龍麺」、つまりカツカレーうどんだ。よし、これなら当サイトの対象にできるし、ちょっとおかしな和食シリーズになりそうだ。店の場所は、グローバルモールに入って左すぐ。上記「周氏蝦捲」のすぐ近く。隣の素食店と向かい合うような造りで、その間に客席があるものだから、フードコートっぽいというか、客席を共有しているように見える。しかし、実際には半分ずつ専用席になっているので、領域侵犯しないように注意を。有人レジで先払い。英語が通じたかどうか記憶が曖昧だが、麺類メニューがひとつしかないから「ウーロンミエン」だけで注文できるだろう。メニュー表には、英語と日本語が併記されている。配膳付き、下げ膳不要。値段は、170元(≒629円)と高い。カレーライスの方がいくらか安いけれど、一番安い「燉豬肉咖哩飯(豚しゃぶカレーライス)」でも、150元(≒555円)する。カレーではない各種丼の方が安い設定。豬排丼(カツ丼)130元(≒481円)に「人気No1」の表示があるのも、なんとなく頷ける。カレー屋なのに、一番人気がカツ丼。なんだか「富士そば」みたいだな。
  提供されたカツカレーうどんを一瞥して、絶句してしまった。なんと、平皿での提供だ。中央にドンとうどんが盛られていて、上からカレールーをかける。その上に、揚げたてのトンカツ。そして、脇には生野菜サラダ。これって、カレーライスのご飯をうどんに変えただけなのではないだろうか。うどんの麺は、茹で麺だろうか。「丸亀製麺」のような硬い麺ではなく、玉うどんのような食感。湯煎する際に強引にほぐしたとみえ、短く切れている麺が多数。カレーは、やや辛口。スパイス感が結構あるのだが、塩気はやっぱり控えめなので、あまりガツンとくる感じではない。思ったほど悪くないというか、日本で食べるカレーに近いといえば近い味覚だった。少なくとも、インドや東南アジアのシャバシャバ系カレーとは完全に異なるものだ。トンカツは、少量の油で揚げ焼きしたような感じ。ところどころに焦げがあるし、衣がパラパラとはがれやすい。ただ、味覚的には悪くない。生野菜には酸味のあるドレッシングがかかっており、これがカレーと混ざることでなんとも不気味な味になる。少なくとも生野菜は、別皿にした方がいいかな。麺がチープだし、日本のカレーうどんには欠かせない出汁が利いていないので、やっぱり総じての印象は「ちょっとおかしな和食」だ。飲み水は、ピッチャーにて提供あるも、常温。箸はエコ箸で、金属製のスプーンと一緒に提供。決して全然ダメという感じではないんだけど、まぁ1回食べれば充分かな。


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★高雄駅(台湾。台鉄西部幹線(縦貫線南段・屏東線)、高雄MRT紅線)
「原牛」  実食日:2019/10

  高雄駅は、目下大規模な改修工事中。JR奈良駅に似た雰囲気の寺院風旧駅舎は、ホームの地下化に伴って役目を終え、曳家によって移転(これも奈良駅と同じか)し、静態保存。現状、駅の機能はすべて地下に集約され、駅舎と呼べるような建築物がない状態になっている。将来的には新駅舎が建設され、旧駅舎もその一部になる(これは奈良駅とは異なる末路だ)らしいが。だから、駅舎内に飲食店はないかなぁ……と思っていたのだが、台鉄と高雄MRTの連絡通路に5つの店舗からなる「捷運商場(メトロモール)」が整備され、その中に牛肉麺をメインに提供する「原牛」があった。屏東「享家 牛肉麺食館」で食べたのがトマトスープ仕立ての特殊な牛肉麺だったから、台湾の北部と南部での牛肉麺のベーシックな部分での食べくらべができていないことだし、ここで一杯食べるのも悪くないだろう。モール内通路との間に間仕切りのない半露出店で、精算は有人レジ(というか、店の外側を向いた服務台)にて先払い。英語は、ほとんど通じない。服務台にもメニュー一覧があるので、指さし注文で。商品は配膳してくれ、食後の下げ膳は不要。客席は、4人掛けテーブル×9。扱うメニューは、牛肉麺が4種類に、ご飯もの4種類。ご飯ものの中には日式豬排蓋飯(日本式のかつ丼)119元(≒440円)、鹽焼鯖魚飯(鯖の塩焼き丼)119元といった和風のものもある。プラス、一品料理が3種。決してメニューの種類は多くない。
  今度こそちゃんと食べくらべたいということで、ベーシックな紅焼牛肉麺をオーダー。価格は、129元(≒477円)。まぁ、平均的な価格帯だ。牛肉は「澳州(オーストラリア)産」で、熱量は677.20kcal。麺には「家常麺」と注記あり。その場では意味が分からなかったので帰国後に調べてみたところ、「家庭風の麺」との訳が当たった。これだとあまりよく分からないのだが、おそらく「手打ち麺」に近いニュアンスなのではないかと思う。というのも、提供された牛肉麺の麺が、いかにも手打ちという感じだったから。きしめんのような幅広麺なのだが、きしめんのような均一の太さではなく、端が薄くて中央部が厚い。分かりやすく言うと、断面が円盤型というか、羽根がついているような感じの麺なのだ。モチモチはしないのだが歯ごたえは強く、なんだかすいとんみたいな食感。なかなか美味い。スープは、塩気は薄いのだが醤油系の香りが強く利いていて、物足りなさはない。台北の牛肉麺と決定的に違うと感じたのは、各種香辛料をしっかり利かせている点だ。唐辛子のピリッとした辛み、胡椒の刺激的な辛み、山椒のほろ苦さ、加えてシソの実のような薬っぽさも感じた。まだまだ経験値が低いからこの1杯を以て台北と高雄の違いだと言い切る自信はないが、参考になる実食履歴にはなったと思う。トッピングは、ひと口大カットの牛スネ肉、チンゲン菜のような青菜、そして高菜。高菜が牛肉麺にトッピングされたのは、これが初めてだ。これも高雄の牛肉麺の特徴のひとつと捉えていいのだろうか。台北の牛肉麺よりも香辛料が強いだけに味覚がハッキリしており、私好みだった。箸は白いエコ箸。レンゲ付き。そしてなぜか、コーラが付いてきた。英語が通じないので「コーラは注文していない」と伝えることができなかったのだが、店内の一番奥の壁の掲示を見て納得。「今日特價 送」と書かれていて、牛肉麺の写真にコーラが添えられている。つまり、日替わりのサービスがあり、この日牛肉麺を注文した人にはコーラをサービスということだ。
  総じての印象は、上々。チェーン店風というか、ポップな雰囲気の店だからあまり期待していなかっただけに、意外に美味くてギャップ萌えした。また寄ってもいいな。次回は、ご飯ものに挑戦してみようかな。それとも、モール内には「翰林茶桟」もあるから、こちらで意麺を食べる方が先になるか。台湾南部は、駅ナカの飲食店が少ない。その中で充実しているのは、新左営・高雄・屏東。駅ごとの印象で言うと、新左営がいちばん大衆的で、高雄は平均的。屏東は高級志向。旅行者は、時と場合によって駅を使い分けるのが吉。地元住民はそんなわけにもいかないだろうけど。


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★屏東駅(台湾。台鉄西部幹線(屏東線))
「斑鳩的窩」  実食日:2019/10

  台湾最南端に近い屏東駅まで南下して、ようやく駅ナカで日本そばを扱う店に出合えた。セルフ要素のない完全フルサービスの店なので当サイトで扱うことに抵抗を感じなくもないが、日本そばを扱う店は台湾では非常に珍しいので、参考までに対象に含めておく。台北方面から南下してきて、高雄から先の台鉄は、路線分類上は「屏東線」になる。しかし、縦貫線南段から潮州(屏東のさらに先)まで直通する列車が大半なので、ほとんど分けて考える必要はない。日本統治時代には左営からまっすぐ南下して海沿いの高雄港駅がどん詰まりの終着だったのだが、のちに左営・高雄港間にある鼓山駅から分岐する形で屏東線が敷かれ、さらに鼓山・高雄港間が廃止という経緯をたどって、すべての列車が縦貫線南段から強制的に屏風東線に入る現在の形になっている。それはさておき、2015年に高架化された屏東駅周辺の街は、延々と続くヤシ畑の中に突然現れる城塞のような雰囲気。駅構内(改札外)には太平洋百貨店が進出し、活気に満ちている。「駅站食堂」と銘打たれたフードコートまで整備されている。フードコート内にも麺類を扱う店はあるのだけれど、いかにも現代的なムードだし、百貨店が統括しているだけに、全体的に値段が高く、あまり魅力を感じない。それだったらということで、フードコートの向かいにある個別の飲食店群をつぶさにチェックしていたら、この店が見つかった。そばの扱いもあるけれど、メインはトンカツ。麺を含むメニューは6種あり、うち3種がラーメン、3種がそば。そばメニューは、いずれも定食形式のセットメニューになっている。値段は、たいへん高い。白身魚フライのセット(魚排蕎麦冷麺)が270元(≒999円)、鶏唐揚げのセット(鶏排蕎麦冷麺)も270元、トンカツのセット(豬排蕎麦冷麺)は280元(≒1036円)だ。さらに、料理価格とは別に10%の服務費(サービス料)が発生する。各メニューの字面を見ればなんとなく想像できると思うが、そばはすべてざるそばになる。温そばの扱いはない。私は、魚排蕎麦冷麺のセットを注文。テーブルオーダーで、後払い(伝票対応。退店時に有人レジで精算)。客席は4~6人掛けのテーブル席のみで、いずれもファミレスタイプのボックス席になっている。おひとりさまよりグループ客が中心だとひと目で分かる店だ。店員に日本語は通じない(英語は私と同じくらいのレベル)が、メニュー表に日本語併記があるので、わりと分かりやすい。
  定食ものなので全部揃って出てくるのかと思いきや、まずは鉄瓶入りのお茶と山盛りの千切りキャベツ、ゴマだけが出てきた。キャベツはおかわり自由だという。ゴマは自分ですって、ソースと和えてキャベツにかけて食べるようだ。ソースは、日本の中濃ソースを模したものだが、日本の平均的なものよりもだいぶ甘い。キャベツをモシャモシャと食べているところに、本体が登場。セット内容は、白身魚のフライ3枚、ざるそば、茶わん蒸し、茎ワカメの和え物、味噌汁。白身魚のフライは、多くの日本人がイメージするであろう笹型のものではなく、切り身をそのまま使ったような形状。スズキなのかボラなのか、ちょっと泥っぽい臭みがあった。茶わん蒸しには小さな貢丸が入っており、問題なく美味しい。茎ワカメの和え物は、普通。味噌汁は、具材こそワカメのみだが、ちゃんとカツオ出汁が利いていて違和感なく美味しかった。そして、ざるそばだ。これは、審議を要するシロモノだった。麺自体は、見た目には特段おかしくないのだが、刻み海苔と一緒に錦糸玉子が添えられている時点で「?」が灯る。そして食べてみると、コンニャクのようにグニグニした食感。それでも、そばの香りはわりとある。どうも二八で仕立てているようなのだが、どんなつなぎを使えばたったの2割でこの食感になるのか、不思議だ。寒天なのかな。そして、つゆもちょっと変。出汁が香らず、やたら甘い。五目ちらし寿司に乗せる「でんぶ」のような甘さがある。これはなんとなく想像していたとおりなのだけれど、味噌汁にちゃんと出汁を利かせるのなら、そばつゆだってもっと出汁重視にできたのではないかと思うのだが。と、まぁ毒づいてはみたものの、なんだかんだで全部食べ切った。ざるそばと考えると「なんだこりゃ?」だが、食べ物としては喉を通らないレベルではない。そろそろ食べ終えようかというタイミングで、コーヒーゼリーが登場。これも、寒天みたいな食感だった。総じての印象としては、海外にありがちな「ちょっとおかしな和食」の部類。「丸亀製麺」のように、日本で提供している味を忠実に再現している感じではない。台湾人の好みを少し反映させているのか、あるいは日本の味を再現しようとしたがやり切れなかったのか。いずれにしても、この店に関しては1回入れば充分かな。高いからね。他の日本そばを扱う店と出合えたら、また入ってみたい。


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「享家 牛肉麺食館」  実食日:2019/10

  上記「斑鳩的窩」の並びにある、牛肉麺をメインに提供する店。牛肉麺は、派生メニューを含め台北で多数実食済みだが、台湾南部でも食べて比較してみたいということで、こちらに入ってみた。相場よりも高めの価格帯なのだが、南部は飲食店が入っている駅が少ないから、見つけたときに食べておかないと帰る頃になって後悔することになりかねない。食べずに後悔するくらいなら、少々お金を浪費してでも実食履歴を確保した方がいい。有人レジで、注文と同時に先払い。英語は、怪しいけれど通じることは通じる。配膳付き、下げ膳不要。客席はテーブルのみで、30か40くらいあっただろうか。有人レジから遠く離れたところ(フロアの対角。不便そうな造りだ)にある厨房の前に、ガラスでできた大きなウォーターサーバーがあり、飲料水は無料(セルフ)。台湾では飲料水を無料提供する飲食店が少数派なので、ありがたいポイントだ。麺類メニューは、大きく3つに分かれている。ひとつは、「豆辯」が頭に付く牛肉麺群。「辣」のマークが付されているので、おそらく豆板醤か何かで辛く仕立てたものだろう。2つめは、頭に「燉蕃茄」が付く牛肉麺群。「蕃茄」はトマトだと分かっているので、トマトスープ仕立ての牛肉麺だと分かった。訪問時点では「燉」の意味が分からなかったが、帰国後に調べたところこれは「煮込み」のことだった。つまり、トマトをじっくりコトコト煮込んだスープの牛肉麺ということになる。そしてもうひとつが、「豬」が付く麺群。要するに、牛肉麺ではなく豚肉麺だ。紅焼だの清敦だのといった表記はなく、基本的に紅焼のみの扱いのようだ。値段は、いずれの群も180元(≒666円)から。高い。ハッキリ言って、高い。豚肉麺やノーマルな牛肉麺でこの値段を払うのはちょっと嫌だったので、燉蕃茄牛肉麺をオーダーすることにした。これなら、180元でもいくらか割高感が薄れる(平均的な店では、紅焼牛肉麺より蕃茄牛肉麺の方がやや高い傾向がある)。
  5分ほどで提供された燉蕃茄牛肉麺には、厚めにスライスされた牛スネ肉3枚、レタスのような葉物野菜、そしてスープに溶けかかったホールトマトがトッピングされていた。プラス、モヤシとワカメを和えたナムルのようなものが、別皿で。麺は、激しく縮れた太麺。舌触りはわりとツルツルしており、噛むとほどよくモチッとする。美味しい。スープは、思ったほど酸味は強くなく、違和感なく喉を通る。もともと紅焼牛肉麺のスープはトマトに通じる酸味のある味わいなので、ホールトマトが加わってもさほど大きく変わる印象ではない。底にローリエらしき葉っぱの破片が沈んでいたことから察して、ちゃんと店内で煮込んでいるのだろう。牛スネ肉は、とろとろに柔らかく、たいへん美味。ハムというか、仙台の厚切り牛タンみたいなルックスなのだが、少々歯に触る軟骨やコラーゲン質の食感アクセントも楽しく、たいへん満足度の高い味覚だった。メニュー表に、「牛腱肉使用尼加拉瓜牛」とある。「尼加拉瓜」は南米のニカラグアだから、ニカラグアから輸入している牛肉なのだろうか。ちなみに、牛筋と牛肚は「澳州牛」とのこと。これは、オージービーフだ。レタスのような葉物野菜は、食べるとセロリのような苦みがある。まぁ、これはこれで。総じて、高いだけあって、上品で洗練されていて、見た目も美しく、かつ食後の満足度も高い一杯だった。値段が値段なので、もう一度食べたいかと言われると、微妙。高い店が美味いのは、当たり前なのでね。当たり前のものに、私はあまり感動しない。安い店で値段以上の幸福度を得られたときに、私は感動する。重要視するのは、絶対的な美味さではなく、相対的な美味さなのだ。だから、180元握っているときに腹が減れば、基本的には90元で食べられる店を2軒ハシゴするだろう。「どちらか片方だけでも当たれ!」と、願いを込めて。


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★猴硐駅(台湾。台鉄東部幹線(宜蘭線))
「喵喵美食房」  実食日:2019/10

  改札を出て右前方の階段下。この駅は、かつて炭鉱で栄えた街にある。改札を出て右前方の出口側が炭鉱エリアで、廃墟となった選炭場を見学できるほか、かつての坑道にミニトロッコを走らせていて観光地として再生している。一方、改札を出て右後方の通路を進んでいくと、猴硐猫村という、人なつこい猫がたくさんいる住宅地になる。もともとこの街では炭鉱の柱を食い荒らすネズミを駆除する目的で猫が多く飼育されてきたので、一見何のつながりもなさそうな炭鉱テーマパークと猫村にも、実はちゃんと接点があるというわけだ。それはさておき、簡易的な飲食店「喵喵美食坊」があるのは、炭鉱テーマパーク側の方。階段を降りてすぐというか階段の真下なので、駅ナカと捉えて差し支えあるまい。人波について歩けば自然と目に入るような場所だ。にもかかわらず、ここは意外と訪問難度が高い。というのも、観光地ということもあって、基本的に日曜しか営業していないのだ。私は、ここに店があるとは知らずに平日に一度訪れ、営業日を確認して日曜に再訪し、テイク2にてやっとありつけた。ちなみに、店名に用いられている「喵喵」という字は日本では見かけないものだが、猫の鳴き声を表す漢字とのこと。厨房が店舗の奥ではなく手前側にあり、奥に客席がある造り。屋台みたいな構造だ。有人レジで口頭注文、先払い。英語は怪しいので、メニュー表での指さし注文が確実。客席は、テーブル席が4+2、椅子付きカウンターが7席くらい。
  扱うメニューは、麺類と関東煮(おでん)が中心。セットにすると割安になるので、私は「店長推薦」のシールが貼ってあった炸醤乾麺+綜合湯のセットを注文。価格は100元(≒370円)。単品だと炸醤乾麺が60元、綜合湯が50元だから、セットにすると10元お得という計算になる。観光地の店にしては、意外と良心的な価格設定だ。厨房が客席よりも手前にあるということは、調理シーンを一部始終眺めていられるということでもある。これは私にとってはたいへん魅力的なことだ。注文を終えたら表に回って、写真を撮ってもいいかどうか尋ねて、「大丈夫よ~」との返事をもらい、調理シーンを連写で撮影させてもらった。というか、この返事は日本語だったな。日本語が話せるという感じではないけれど、日本人観光客も多く訪れているだろうから、挨拶くらいはできるということなのだろうか。というか、私は日本語をひと言も発していないのに、どうして日本人だと分かったのだろうか? 地黒の私は、日本の観光地を訪れても台湾人と間違われることが多いくらいなのだが。不思議だ。
  さて、炸醤乾麺は、「ジャージアンガンミエン」という読み方を記しておけば、盛岡名物「じゃじゃ麺」の元になっている料理だと分かるだろう。肉そぼろといろいろな野菜を乗せた、汁なし麺だ。麺は、小学生時代に給食で出たソフト麺みたいな食感・風味だった。たぶん麺種としては油麺なのだろうけど、油麺は店によって仕様に差がありすぎる。肉そぼろは、これまで台湾で食べてきたものとはちょっと味わいの異なるもので、甜面醤を強めに利かせてあり、やや甘めだった。五香粉の香りは、あまりない。そして、小さくカットした豆腐がたくさん入っていた。だから、言ってみれば花椒抜きの麻婆豆腐みたいな味わいだ。とても美味しい。その周りに配しているのは、チンゲン菜みたいな葉物野菜。一般的な炸醤麺はほかにもいろいろな野菜を乗せて、冷やし中華みたいなルックスであることが多いと思うのだが、ここのはとてもシンプルだった。綜合湯は、摃丸、魚蛋、大根が入ったスープ。いずれも関東煮の種で、スープも関東煮のものをそのまま使っていると思われる。日本のおでんよりもだいぶ薄味だけれど、いろいろな種を煮たスープだから旨みが凝縮されていて、物足りなさは感じない。こちらも上々の味覚だ。どちらもさほどボリューミーではないので、空腹をきっちり満たしたいならセットメニューにするのがオススメ。あるいは、麺単の大盛りか。乾拌麺なら、大盛りでも50元(≒185円)で食べられる(小は30元≒111円)。牛肉麺もあるが120元(≒444円)とやや高値なので、この店では安価な屋台料理を選んだ方が満足できるのではないだろうか。


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★紅磡駅(香港。香港MRT東鐡線・西鐡線)
「興隆車仔麵」  実食日:2018/12

  駅ナカと呼ぶには苦しい立地なのだが、香港は全体的に駅ナカ飲食店が少ないので、このくらいの立地まで対象に含めないと日本との比較検証が難しいため、強引に対象に含める。場所は、地下のB1出口に直結しているビル「都會大廈」の8階。「起快」と表示されたフードコート内。車仔麵は、言ってみれば「香港版の立ち食いそば」。簡易的な麺類店の代表格だ。麺を数種類ある中から選んで、トッピングも数十種類ある中から選んで、自由にカスタマイズできる。現物を指さして選ぶタイプの店と、注文用紙に記入するタイプの店がある。「興隆車仔麵」は、前者。注文用紙記入スタイルについては追々別店紹介の際に解説するとして、ここでは指さし注文スタイルで話を進めていく。提供口にて先払い、その場で待って受け渡し。フードコートだが返却口というものはなく、食後には空いた食器を席に残して退店してよい。片付け専門のスタッフがワゴンを転がしながらフロア内を巡回しており、適宜片付けてくれる。
  麺は、太めの中華麺の「油麵」や髪の毛のように細い「幼麵」、米粉で作ったきしめんのような「河粉」などの香港(中国)ならではのもののほかに、日本製の茹でうどん「烏冬」やインスタントラーメンの「出前一丁麵」も用意。日本人の感覚では信じられないことに、烏冬と出前一丁麵は割高設定になっている(2ドル増し)。海を越えて仕入れているのだから、仕方ないところか。私は、油麵をチョイス。油麵は、よく「日本の一般的な中華麺に近い」と言われているのだが、食べてみると結構違う。あまりモチモチせず、どちらかというとモソッとした食感だった。小麦粉本来の甘み・旨みに加えて香ばしさが感じられ、とても美味しい。フィーリングで言うと、刀削麺に近い食感・味わいだ。店によっても違うのだろうけれど。スープは、ベースとなるのは豚骨系の1種類のみ。そこに、辛みの強い「麻辣汁」や魚介系の「瑶柱鮑魚汁」などを無料で加えることができる。私は、試しに瑶柱鮑魚汁を加えてみた。オペレーションを見ていると、トッピングを煮込んでいるスープを大きなスプーンで3杯ほど掬って足していた。ベースは豚骨なので、少々獣臭がある。日本の豚骨スープと違って、低くくぐもったような香り。たぶん、豚骨以外の食材の香りも混ざっているのだろう。これはどこの店に入ってもつきまとう香りなので、苦手だと香港で暮らすのはちょっと厳しいかもしれない。瑶柱鮑魚汁を加えても、獣臭は消えない。よく言えば、味に深みが出る。悪く言うと、味が複雑になって分かりにくくなる。トッピングは、牛系・猪(豚)系・鶏系・海鮮系・素食(野菜)系に分かれており、各系統ごとに7~8種類ある。現物を見てもよく分からないし、店舗脇の一覧表を見てもよく分からないので、当てずっぽうで「牛腩」と「猪腸」、そして「魚蛋」を注文した。このうち、バラ肉のつもりで注文した「牛腩」は売り切れていたため、よく分からない「牛肚」に変更。「牛肚」は、いわゆるハチノスだった。しっかり煮込まれてあり、やわらかい。これ自体には妙な臭みもなく、食べやすかった。猪腸は、いわゆるホルモン。こちらもやわらかく、噛んでも噛んでも噛み切れないということはない。ただ、細かくカットする日本と違って、輪切りになっているので、見た目が結構グロテスク。そして魚蛋は、白身魚のすり身だんご。おでんの「揚げボール」に近いので、日本人にとってはなじみやすい食材だろう。特段クセもなく、美味しかった。
  気になる値段は、麺が基本9ドル(≒135円)、トッピングが1品8ドル(≒120円)均一。つまり、今回の食事だと33ドル(≒495円)になる。私はこれにコカコーラ(6ドル≒90円)を付けたので、計算では39ドル(≒585円)になるはず。しかし、実際の支払いは36ドル(≒540円)だった。麺・トッピング・ドリンクがセットになったパッケージメニューもあるのだが、そのどれにも当てはまらない価格。う~む、謎だ。まぁ、自分の計算より安いぶんにはいいか。ちなみに、スタッフは英語堪能。理由を聞こうと思えば聞くこともできたのだが、後客がつかえていてところてん式に押し出されてしまい、聞けなかった。また、フードコート内には冷水器がないので注意を。ドリンクを一緒に注文するか、ペットボトルなどで持ち込むことになる。注文する場合、温かいお茶なら無料。冷たいソフトドリンク系は有料となる。
  総じて、香港版立ち食いそばと呼ぶには、意外と値段が安くないという印象も受ける。しかし、それは日本円に換算して考える(あるいは、日本よりも物価が安いと思い込む)からそう感じるだけ。香港には物価が高いものと安いものが混在しており、特にコンビニやホテルなどは日本よりも高いくらいだ。飲食店も比較的高いので、このくらいの価格帯で食事ができる店は、貴重。なお、当サイト上での値段の評価は、「麺+トッピング1品=17ドル(≒255円)」をたぬきそば価格として算定している。これだと結構安いのだが、実際にトッピング1品で済ませる客はほとんどいない。麺やトッピングを選ぶ楽しさもあるし、スープも店ごとに味が違うはず。車仔麵にターゲットを絞って食べ歩くだけでも、立派に旅が成立しそうだ。


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★旺角東駅(香港。香港MRT東鐡線)
「新記」  実食日:2018/12

  駅と直結したショッピングモール「新世紀広場MOKO」の3階フードコート「食代館(フードオペラ)」内。フードコートといっても、壁際に店舗が並ぶ形式ではなく、デパ地下みたいに入り組んだ通路に沿って店舗があり、全店共通の客席が一か所に集められているスタイル。つまり、壁際だけでなく島式店舗もたくさんあるということ。この店も島式店舗。フードコートをざっと見渡すと、香港料理だけでなく各国の飲食店がモザイク状に集まっている印象で、日本の「ペッパーランチ」も入っている(ペッパーランチは香港に積極進出しており、随所で見かける)。一部の店舗は専用席を併設しているが、「新記」には専用席がない。「港式粥麵」を標榜(「港式」=香港スタイル)するこの店は、海老ワンタン麺や海鮮粥などを中心に扱う簡易的な店。ワンタンは、国や地域、さらには店によっても表記がブレる料理。この店では「雲呑」と表記。日本人でも理解しやすい表記になっている。「餛飩」と表記されると、うどんと混同して困る(香港では、うどんを「烏龍麵」と表記する店が多い)。精算方法は、有人レジで先払い→その場で待って受け渡し。食後は、食器を席に残して退店でOK。フードコート全体の片付け専門スタッフがおり、頃合いを見計らって片付けてくれる。
  今回は、鮮蝦雲呑麵(海老ワンタン麺。35ドル≒525円)を実食。麺は、たぶん生麵(「なまめん」ではなく「サンミン」。そういう種類の麺。注文後に茹でるので、「なまめん」でもあるのだが)。これは卵つなぎの黄色い中華麺で、日本の一般的な中華そばの麺に近いもの。ただ、この店の麺は、とても細かった。太さは1ミリもないくらい。あまり縮れてもいないし、もしかしたら生麵ではなかったのかもしれない。イマイチ自信なし。風味的にも、甘みが強い日本の中華麺とは違い、青臭いというか埃臭いというか、ちょっと独特な風味だった。形容するとすごく不味いもののように感じるかもしれないが、実際には美味しく食べられるものだ。スープは、基本的には塩味なのだが、魚介系を連想させるクセもある。エビの殻でも煮出しているのだろうか。味はあっさりなのだが、深みがあって美味しい。具材は、海老ワンタン5個と、薬味のネギのみ。ワンタンは丸く形を整えてある。ゴルフボールより少し小さいくらい。中身はあん状になっておらず、剥きエビだけを皮で包んだもの。プリプリ感が強く、とても美味しい。そして薬味のネギはとても細く、浅葱のように見えるのだが、青い部分はほとんど使っていない。根深の浅葱なんて、あるのか? やや土臭さあり。総じて、あっさりだけど個性的で、インパクトもある一杯だった。価格的にも、車仔麵とあまり変わらない。香港では、このくらいの価格帯で食事ができれば充分立ち食いレベルだ。ちなみに、馳名海鮮粥(有頭海老のおかゆ)は68ドル(≒1020円)、金牌貴妃鶏粥(鶏肉入りのおかゆ)は58ドル(≒870円)。香港での暮らしには、金がかかるね。
  日本では、11時くらいにならないと営業が始まらないフードコートが多い。しかし、平日10:00頃の訪問だったのに、もう半分くらいの店舗が営業していた。香港では、朝食を外食で済ませる人が日本よりも多いのかもしれない。


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★大埔墟駅(香港。香港MRT東鉄線)
「小食快綫(Snack Express)」  実食日:2018/12

  地下鉄がメインであるうえ、改札内での飲食が禁止(罰金制度がある)されている香港。駅ナカ飲食店は、決して多くない。しかし、香港で最初に敷かれた鉄道の東鉄線は地上走行部分も多く、駅ナカが充実している。中でも、中国本土(深圳)との境界に近い大埔墟駅は、ざっと見て回っただけでも麺類を扱う簡易的な飲食店が3軒も入っていた。中心部から遠く離れたところに、このような駅麺天国があったとは。全部を一気に食べつくすのは無理なので、今回は海外では珍しい立ち食い席を擁する「小食快綫(Snack Express)」で。扱う麺類は、スープ麺ではなく焼きそば系。メニュー名は「炒麵」で、価格は13ドル(≒195円)。先払い。いいねぇ、これぞ立ち食い価格だ。飲食店が全体的に高めの香港では、この価格で食べられる店はたいへん貴重だ。
  常時鉄板で炒めている麺を、四角形の蓋付き紙製容器にババッと盛る。もう完成かと思いきや、ここで店員さんが「ソースを選んでくれ」と言う(この店は英語がある程度通じる)。手で示された先を見ると、赤い瓶と紫の瓶。赤いのが「Hot」で、紫のが「Sweat」だという。私は辛すぎる料理があまり好きではないので、紫を選択した。イートインスペースは、厨房に背を向ける形の立ち食いカウンターのみ。キャパは、3人程度だ。一応イートインもできるという程度で、テイクアウトの方がメイン。蓋を開けて、早速いただこう。見た目には、具材の乏しい焼きそば。目に見える具材は、ニラのみ。麺が縮れておらず、短く切れていないので、日本の焼きそばとくらべるとすごくしなやかな印象を受ける。食べてみると、味付けは醤油系だった。あっさりしているが、悪くない。麺自体の甘みがあまりなく、食感もあまりモチモチしていないので、パンチ力には欠ける。でも、飽きのこない味だ。ところが、店員に尋ねられて加えた紫の瓶がいけなかった。これ、ブドウジャムじゃない? 突き抜けた甘さで、全体を支配してしまう。「Hot」に対しての「Sweat」だから、個人的には「Not Hot」くらいの感覚でいたのだが、当てが外れた。幸いだったのは、容器の隅っこにポトッと落とすだけで、デフォルトでは混ざっていなかったこと。ジャムを避けながら食べ進めれば、美味しくいただける。焼きそばにジャムをかけるなんて、2016年にフィリピンで食べたたこ焼きと同じ発想だな(イチゴジャムとサワークリームがかかっていた)。ジャム自体が不味いわけではないのだけれど、麺料理には合わせたくない。トースト向きだな。箸は個包装の使い捨て(イメージとしては、最初から割れている割箸)。立ち食いカウンターの脇に大きなゴミ箱があり、箸も空き容器も一緒に捨てて退店。
  立ち食いカウンターでは、私のほかにひとり、若い女の子が焼売を食べていた。全体的に客層は若く、ポップな印象。リーマンオアシスのイメージが強い日本の立ち食いとは、少々趣が異なる。立ち食い店が少ないだけに、イメージが凝り固まっていないのかも。香港の若い世代にとっては、公園のベンチに座ってスタバのコーヒーを飲むのと同じような感覚なのだろう。海外の駅麺事情を考察するうえで、たいへん貴重な材料になった。


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★屯門碼頭駅(香港。軽鉄線)
「759車仔麵」  実食日:2018/12

  香港軽鉄は路面電車なので、基本的に駅舎を持たない。しかし、南側の終着点である屯門碼頭駅は、フェリーとの接続があるため駅舎と呼べるような建物がある(駅名の「碼頭」はフェリーターミナルの意味)。1階部分はバスターミナルみたいな感じで行き先ごとにホームが分かれた軽鉄乗り場があり、その上階がフェリーターミナル。そしてその上階には、商業施設も多数入居している。その中に、車仔麺店があった。現物指さし注文スタイルの「興隆車仔麵」と違い、こちらは各席に注文用紙が置いてあり、それに記入して店員に渡すシステム。語彙力がなくても注文しやすいというメリットはあるが、現物が見えないので、内容がよくわからない状態で注文することになる。特にトッピングは、完全に当てずっぽうだ。ちなみにこの店では、英語はまったく通じなかった。完全に広東語のみ。配膳付き、後払い(伝票制)。客席はテーブルのみで、計25席くらい。
  紅では油麺にしたので、今回は麺を河粉にしてみた。河粉は、ルックス的にはきしめんに近い。ただ、小麦粉ではなく米粉で作られた麺だから、きしめんよりも白みが強く、漂白したかのような白さ。食べてみると、つるっとした舌触りで、コシなし、モチモチ感なし、甘みなし。ひとことで言うなら、「あまり味がない」。悪くはないんだけど、途中でやや飽きがくる。ご丁寧なことにやたら量が多いので、なおのこと飽きる。個人的には、油麺の方が好みだ。つゆは、わりとあっさりしている。「興隆車仔麵」よりも薄味。そのぶん獣臭も薄いから、とっつきやすいつゆではあると思うけれど、がっつりハマる感じでもない。トッピングには、咖哩猪皮(ゼラチン質が中心の豚の皮)、芝士腸(ソーセージ)、猪軟骨(豚軟骨)を選択。咖哩猪皮には、カレー味が付いていた(「咖哩」はカレーの意味)。これが全体の獣臭を中和したかもしれない。ソーセージには、チーズが入っていた。また、猪軟骨は、伝票上で「鹿児島風」となっていたように、甘辛い味付けがされており日本人でも馴染みやすいものだ。沖縄の軟骨ソーキに近い。軟骨部分は結構硬いが、頑張れば噛み砕ける(全部食べられる)。価格は、麺+トッピング2品で30ドル(≒450円)が基本。今回はトッピングを3品入れたので、8ドル増しで38ドル(≒570円)になった。「興隆車仔麵」よりも少しだけ高い設定だ。ただ、学割サービスがある(3品車仔麵で33ドル)ので、中学生なのか高校生なのか、制服姿の学生も多数入店していた。さしずめ、学校帰りのオアシス、といったところだろうか。この雰囲気は、駅麺らしくていいね。箸はエコ箸。
  平日13:30頃の訪問で、ほとんどすべてのテーブルが埋まっている状態だった。ひとつだけテーブル席が空いていたのでそこに通されたが、注文して出来上がりを待っている時にお爺さんが入ってきて相席になった。ひとりでの利用なら、相席を覚悟して。


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★香港西九龍駅(香港。広深港高速鉄道)
「堂前FOODIUM食坊(巴椒線)」  実食日:2018/12

  中国本土の広州と香港を結ぶ、今年9月に開業したばかりの広深港高速鉄道(新幹線のようなもの)。その香港側の終点が、香港西九龍駅。香港MRTの九龍駅や柯士甸駅に接続しているが、駅名が異なるうえ長い長い歩道橋や地下通路での接続になるので、別駅と考えた方がいいだろう。駅舎はとても大きく、流線型の形状は無意識のうちにザハ・ハディド氏を連想させる(笑)。駅舎内は中央部が吹き抜け状になっており、天井がとても高く開放感抜群。その2階部分に、簡易的なフードコート的飲食店があった。オーダー&精算方法は、2通り。現金の場合は、有人レジで先払い→バイブレーターで呼び出し。キャッシュレスの場合は、有人レジでの注文のほか、専用のオーダー機を利用できる。海外では、いわゆる食券制の店は見たことがないが、このようなキャッシュレス対応の無人オーダーシステムは各地で導入が進められているようだ。日本でキャッシュレス決済を利用する場合、今のところは現金とキャッシュレスの両方に対応する食券販売機が主流だけれど、いずれ日本でもこのようなキャッシュレス専用のオーダー機が普及していくことになるのだろう。その意味では、日本はやや遅れているね。受渡口(ピックアップカウンター)は、注文口とは別のブースになる。食べ終えたら、食器は返却口へ。フードコートっぽいスタイルではあるけれど、紅の「起快」と違って食器回収専門のスタッフは配置されていない様子だ。
  大埔墟駅で甘い焼きそばを食べてやや微妙だったので、今回は辛いものにしよう。いくつかのコーナーに分かれている中で、「巴椒線」のブースで唐三麻辣米線(ワンドリンク付きで58ドル≒870円)を食べてみることにした。新幹線駅の物価が高いのは、日本も香港も同じか。麺は、中太の丸麺。「米線」とあるから、ビーフンのようなものが出てくるのかと思っていたが、少しプリプリ感を足したソフト麺のようなものだった。麺自体にはあまり味がないけれど、スープをしっかり絡ませて食べれば、まぁ悪くはない。問題は、そのスープだ。自らの意志で辛いものを選んだのだけれど、これが失敗だった。辛すぎて、全然箸が進まない。舌を焼く唐辛子の辛さと、口腔内だけでなく唇まで痺れさせる花椒の辛さ。ダブルパンチだ。う~ん、香港はどうにも甘い辛いが極端だな。ほどよいという概念は、香港にはないのか? たっぷり時間をかければどうにか完食できたかもしれないが、帰国の飛行機の時間が迫っていた(無理をして機内で下痢をするとヤバいという想いもあった)関係で、スープは半分ほどを残してギブアップすることになった。具材は、豚の臓物系(血を固めた煮こごりみたいなもの、タン、腸などいろいろ)、分厚い油揚げ、モヤシ、ピクルス、ナッツ類いろいろ、パクチーたっぷり。じっくり味わえば油揚げが美味しかったんだろうけれど、スープをたっぷり含んでくれるおかげで、これがいちばん辛い。もう、味が分からない。モヤシとピクルスも辛すぎて味が分からず。セットになっているドリンク(ホットコーヒーを選択)で舌を休めながらと思っても、コーヒーまでもが辛く感じてしまう。パクチーは辛さに消されない香りがあったけれど、やっぱり辛すぎて美味しくない。救いになったのは、スープが染みこまないナッツ類だった。これは美味しく食べられた。また、臓物系も全般的に美味しかった。もう少しほどよい味付けで食べてみたかったな。箸はエコ箸。
  平日12:30頃の訪問だったが、ガラガラに空いていた。大丈夫かな。鳴り物入りで開業した広深港高速鉄道だけど、思いっきり企画倒れみたいなことになっているんじゃないか……と思いきや、切符売り場には人々が群がっていた。乗降者数は、少なくないようだ。となると、フードコートの場所が悪いのか。MRT九龍駅と接続する通路がショッピングモール「圓方商場」に直結しているから、そちらに客足が流れているのかもしれない。先行きがやや心配だ。


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★トゥトゥバン駅(フィリピン。国鉄)
「富士そば」  実食日:2016/11

  フィリピン国鉄のトゥトゥバン駅、高架鉄道1号線のドロテオ・ホセ駅、そして高架鉄道2号線のレクト駅。いずれも徒歩10分弱かなという場所にある。ひとまず当サイトでは、川を渡らずにアクセスできるトゥトゥバン駅を最寄りとみなす。店舗名は「ラッキー・チャイナタウンモール店」で、同名のショッピングモール内(2階)にある。周辺はいわゆるダウンタウンで、あまり治安がよくないと言われている地域。トゥトゥバン駅方面にはスラム街が広がっているし、ドロテオ・ホセ駅やレクト駅方面は拳銃を使ったホールドアップ強盗などが多いとされる地域。フィリピンに詳しい人にも「歩いて行くのはやめた方がいいよ」と忠告されていた。それでも歩いて行ったのだけれど、ダウンタウンには路上生活者が多く、むせ返るような埃臭さのある街で、道路も歩道も狭くて混雑が激しいので、なんとなく治安があまりよくなさそうだなという雰囲気は感じた。ただ、ショッピングモール内は綺麗で清潔な安全地帯だ。店舗は、フィリピンの6店舗中唯一、間口が完全開放になっている。間仕切りがない店舗はほかにもあるけれど、開口部に一切壁がないのはここだけ。店内だけでなく、表(モール内通路に露出)にもテーブル席がたくさん出されている。ボニファシオ・ハイストリート店の露天席はハエがうるさくてたまらなかったが、こちらは屋内なので衛生面に問題なし。
  ここでは、そばではなくご飯ものをいただいたので、評点については暫定的に「フィリピン店舗の平均」を基本にしつつ、実食したえび天丼(230ペソ)やフリーで置いてある天かすなどから類推してつけている。えび天丼(230ペソ)の具材は、大ぶりなエビ天が3尾と、大葉(のような葉っぱ。妙に丸っこい。フィリピン産の大葉だろうか)の天ぷらが1枚。なかなか豪勢な一杯で、これがきつねそばと同額というのはかなりお得感がある。察するに、そば粉は日本から持ち込んでいるが、ご飯やエビなどはフィリピン産を使用しているため、ご飯ものの方が割安に提供できるのだろう。味覚的にも悪くない。エビ(ブラックタイガーだろうか)自体がプリプリ食感で美味しい。衣にちょっと違和感があったけれど。日本の天ぷらのようなきめの細かさがなく、ゴツゴツしている。揚げながら衣をどんどん足しているような感じ。でも、基本的に美味しい。いけないのは、ご飯の方だ。フィリピンの米が全体的に乾燥肌でモチモチ感がないということは分かっているし、それだけならまだよかったのだけれど、今回出てきた米は半分おかゆのようにベチャベチャだった。明らかに、水加減を間違えている。食べているそばから店員が「味は大丈夫ですか?」と聞いてくるあたり、おそらく失敗した自覚があるんだろうと思う。これはちょっといただけなかった。タレは、デフォルトでかかっているだけでなく、小皿で別途ついてくる。客が好みの味に調整できるようになっているわけだ。それはありがたいのだけれど、このタレが妙に甘く、辛い。なんか、いろいろと極端なんだよね。もうちょっと「塩梅」というものを勉強した方がいいのかなと感じた。エビ自体が美味しいだけに、ちょっと勿体ない。天かすフリーのサービスあり。揚げ具合は、悪くない。ほどよくきつね色で、香ばしさもある。
  続いて、フィリピンにしかないドリンクメニュー「フレッシュ・ダランダンジュース」(80ペソ)を注文。ダランダンとは、フィリピンの国民的柑橘類。青い色をしていて、すだちのように小さい。だけど、淡くて大味。濃縮還元ではない手搾りの100%ジュースなのに、麦茶のようにゴクゴク飲める。これは、果物として食べるよりもジュースにした方が美味しいだろうと思った。ブコジュースほどのインパクトはないが、実用的に飲むのならこちらの方がオススメだ。


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★エドゥサ駅(フィリピン。高架鉄道1号線)
「富士そば」  実食日:2016/11

  最寄り駅は、高架鉄道1号線のエドゥサ駅だが、駅から歩いて30分くらいかかる。タフト・アベニュー駅(高架鉄道3号線)との乗り換え通路ではない方の出口(西側)を出て、線路と垂直方向にひたすら歩き、突き当りにある巨大なショッピングモール「SMモール・オブ・アジア」内。店舗名は、そのまんま「SMモール・オブ・アジア店」。ちなみに、エドゥサ駅は高架鉄道とフィリピン国鉄の両方にあり、両駅間はかなり離れている(徒歩30分くらい)ので注意を。高架鉄道のほうのエドゥサ駅になる。ショッピングモール内といっても、店があるのは建物の外側。これが実は非常にありがたい。なぜなら、フィリピンではショッピングモール(に限らず、スーパーなど大型商業施設はすべて)の各出入口にセキュリティが常駐しており、入場する際には手荷物検査と金属探知ゲートの通過が義務付けられているから。これがたいへん鬱陶しい。くれぐれも、ヤバいものを持って入ろうとしないように。その点、この店舗は手荷物検査なしでたどり着ける場所なので、精神的に楽。
  外観は、ちょっとエキセントリックというか、日本ではあまり馴染みのない構えになっている。強いて言えば、川越店のイメージに近い。ただし、内装は全然違い、外観に輪をかけてエキゾチック。壁には歌舞伎役者などの絵が描かれていて、「うめぇもんくわせてやらぁ」「あたい、腹ァへっちゃったァ」といったセリフ付き。天井からは、「和風シャンデリア」とでも言いたくなるような飾りが吊るされていて、独特な雰囲気。これが、フィリピン人が抱く日本のイメージなのだろうか。歌舞伎役者はともかく、「和風シャンデリア」は日本のどこでも見たことがないのだが。私に言わせれば、これは中国のイメージだ。フィリピン人にとっては、日本も中国もたいして変わらない、ということか。日本に1店舗、この雰囲気の店があったら面白いなぁと思った。日本では食券制・セルフサービスの「富士そば」だが、フィリピンではフルサービスのレストランになっている。店頭に立っている案内係に声をかけて、席に案内してもらう。テーブルオーダーで、配膳付き。支払いも、テーブル会計。
  フィリピンでの記念すべき最初の一杯は、日本にはないメニュー・キス天もりそば。値段は、230ペソ。1ペソがだいたい2.5円くらいなので、日本円換算で600円弱くらい。高いね。しかも、フィリピンの物価は全体的に日本よりもだいぶ安い(高架鉄道1号線の初乗り運賃が15ペソ≒40円くらい。国鉄はもっと安い)ので、余計に高く感じられる。なるほど、これは庶民には手の届かない高級グルメだ。さて、味の方はいかに。麺は、意外にもクセがなく、日本の店舗とそんなに大差のない出来栄えだった。日本からミックス粉を送っているのだから当たり前といえば当たり前だが、結構美味しい。強いて違いを言えば、日本の店舗よりも少し麺が太くて固いかな、というくらい。これは製麺機の機種違いによる誤差だろう。学生時代にエジプトで食べた「なんちゃって和食店」のそばよりも、はるかに美味しかった。つゆも、まったく違和感なし。ちゃんとカツオ出汁が利いている。ただし、天ぷらはちょっと違う。フライヤーが違うのか衣が違うのか、それとも技量の問題なのかわからないが、衣が固く、バリバリとした食感だった。これはこれで悪くないのだけれど。キス天は、やや小ぶりなキスが2尾。単に衣をつけて揚げただけという感じではなく、一度揚げてからまた衣をつけて二度揚げしているのではないかと感じる食感だった。
  最初の1軒目ということで、細かい点にも言及を。ネギは、日本のネギほど質がよくない。細くて柔らかく、あまり辛みがない。薬味としての存在感が薄いばかりか、ちょっと古くなったような印象を受ける(フィリピン産のネギはこういうもので、鮮度落ちではないらしい)。各席に天かすが置いてあり、フリー。これはフィリピンの全店舗でやっているサービスだが、これをちょっとつまむだけでも店舗間の技量の差が見て取れる。なかなかスタンダード化は難しいようだ。ちなみにこの店舗の天かすは、ややオーバー美味の揚げできつね色。香ばしく、悪くなかった。ワサビは日本から送っているのだろうか、特段変わったところはなかった。箸は竹製の割り箸で、ビニールに入っているうえ、さらに紙の箸袋に入っている。二重包装。
  注意したいのは、テーブルチャージ(サービス料)が発生するということ。キス天もりそばが230ペソだからといって、230ペソきっかりで支払おうとすると、ちょっと恥をかくかもしれない。指をパチンと鳴らすと店員がバインダーに挟んだ請求書を持ってくるので、それにお金を挟んで店員に渡す。慣れないとなかなか馴染めない精算スタイルで、私も最初の2回くらいはバインダーを持って店の出口に向かい、席に連れ戻されるという恥ずかしい思いをした。
  客層は、フィリピン人が多い印象。フィリピン在住の日本人が多く食べに来ているのかなと思っていたが、日本人にはあまり出会わなかった。たまたまだろうか。ちなみに、フィリピン人も器用に箸を使って食べているが、あまり勢いよくすすりこむことはしないようだ。総じての印象としては、思っていたよりも美味しかったし、居心地もよかった。最初だけ精算方法が分かりにくかったのと、英語があまり通じない(なまりが強く、聞き取れない)のだけがマイナスに感じたポイントだ。まぁ、英語のなまりが強いのはフィリピン全土に言えることだと思うので、これは仕方ないか。

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★ブエンディア駅(フィリピン。高架鉄道3号線)
「富士そば」  実食日:2016/11

  エドゥサ駅と同じように、ブエンディア駅もまた高架鉄道3号線とフィリピン国鉄の両方にある。そして両駅間は、3km以上離れている。「富士そばSMオーラ店」は、高架鉄道3号線のブエンディア駅が最寄りとなるが、それでも徒歩40分くらいかかる。間違って国鉄のブエンディア駅から歩くと1時間半くらいになるので、くれぐれも間違いなきよう。というか、この店に歩いて行こうとするのは私くらいのもので、旅行者ならタクシーで行くのがセオリー。店がある辺りは高級住宅地で比較的治安が良い(透明アクリルケースの募金箱が町じゅうに設置されているくらいなので。ダウンタウンだったら入れたそばから略奪されるだろう)エリアではあるのだけれど、駅からの道中には歩道がないところがちょいちょいあるし、ちょっと危なっかしいムードのエリアも通るので。マニラ随一の高級住宅地で、日本でいうところの六本木ミッドタウンのような場所「ボニファシオ・ハイストリート」を抜けた先、観光客も多く訪れる「マーケット!マーケット!」の前を右に折れた先、左手にあるショッピングモール「SMオーラ」内にある(地下1階)。建物内なので、セキュリティチェックの通過が必要。くれぐれも、ヤバいものを持っていかないように。外観は、光る文字看板にずらり並んだメニューサンプル。なかなかけばけばしい。例によって、店頭の案内係に声をかけて席へ通してもらい、テーブルオーダー&テーブル会計。内装は、これまた例によって「なんちゃって和風」。
  フィリピンの富士そばはこれで3軒目で、これまでの2軒でもり系・かけ系を実食してきたので、ここではぶっかけ冷やし系を。しかし、冷やしきつねそばを注文したものの、諸事情で扱い停止中だった(詳細は拙著『愛しの富士そば』を参照してください)。こういったイレギュラーのやり取りが発生すると、英語が若干通じにくいのが辛く感じる。店員さんは「Not Available」と言っていたらしいのだが、私の耳には「らぱぺらぽー」としか聞こえない。3回か4回くらい、同じやり取りを繰り返してしまった。仕方なく、冷やしオクラとろろそばに変更。値段は、230ペソ(≒600円)。麺は、先の2店舗と同じ食感・風味。問題なく美味しい。つゆは、カツオ出汁がしっかりと感じられた。かけ系よりももり系のつゆに寄せてある。とろろは日本から運んでいるのだろうか、まるっきり違和感がなかった。しかし、オクラは明らかに日本のものとは違った。形が、丸いんだよね。日本で食べるオクラは断面が星形をしていることが多いのだけれど、ここで食べたものはほぼ正円形だった。味は日本のものと大差ないのだけれど、食感が違うのでちょっと違和感があった。おそらく、オクラはフィリピン産を使っているのだろう。ワカメ入りで、ワサビ付き。飲み水は、SMノース・エドゥサ店で出たものよりもだいぶ薄い麦茶。店内で煮沸して煮出している麦茶だと思われ、濃すぎるとエグミが出るので、このくらいでいいと思う。天かすフリーのサービスあり。色白・揚げアンダー気味で、香ばしさがなくイマイチだった。
  総じて、ソツなく仕上がっている一杯で、悪い印象はなかった。が、これといって良い印象もなく、また立地的なインパクトも弱いし、食べたメニューも「フィリピンらしさ」が薄いものだったので、フィリピンで実食した6店舗の中でもっとも記憶に残らない店舗だった。「らぱぺらぽー」が強烈だったから、そのほかの味や雰囲気などが霞んでしまったという部分もあるかもしれないけれど。


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「富士そば」  実食日:2016/11

  高架鉄道のブエンディア駅から徒歩40分ほど。店舗名は「ボニファシオ・ハイストリート店」で、フィリピンの第1号店になる。上記「SMオーラ店」から比較的近い(徒歩10分ほど)ところにある。ボニファシオ・ハイストリートは、フィリピン随一の高級住宅地にあるグリーンベルトで、空が広くて心なしか空気もきれいなところ。近くには、フィリピンでは珍しい飲み物の自販機や、アクリル製の透明募金箱などがある。これらを見ただけで、治安の良さが分かる。ダウンタウンではありえない光景だ(すぐに略奪に遭うだろう)。なので、2店舗が接近していながらも、ボニファシオ・ハイストリート店が「表」で、SMオーラ店が「裏」というイメージになってしまう。また、ボニファシオ・ハイストリート店は、フィリピンの6店舗の中で唯一、単独で存在している(ショッピングモール内ではない)店舗でもある。だから、セキュリティチェックは不要。これがありがたい。客席はテーブル席ばかりで、建物の外にもテーブルが出ている。ただし、外で食べているとハエが寄ってくるので注意を。例によって、店頭に立っている案内係に声をかけて席に案内してもらう。テーブルオーダーで、テーブル会計。サービス料が発生する。
  これまでに寄った3店舗でもり系・かけ系・冷やし系と食べてきたので、今回はつけそば系を。注文したのは、日本でも扱う店舗が増えてきている鶏つけそば(280ペソ)。まず気になったのは、他メニューに比べて麺の量がだいぶ多いこと。つけそば系はこれがデフォルトなのだろうか。1.5倍くらいありそうだ(特殊メニューなので、ボリューム点には加点しない)。ついでに言うと、麺にかかっている刻み海苔もだいぶ多い。口の中がモサモサになるので、これは多ければいいというものではないような気がするが。1/3でいいと思う。味覚的にも、そばの香りよりも海苔の香りの方が勝ってしまうので。つけ汁は、鶏モモのブロック肉がゴロゴロ入っていてボリューミー。ちょっと味が薄いかなという気はしたけれど、まずまず。全体的に、味よりも食べごたえの方が印象に残るメニューだった。大食漢の男性は嬉しいかもしれないが、平均的な女性だと食べきれないかも。フィリピンの富士そばには、各席にラー油が置いてあるので、これをかける手もあると思う。麺にかけてもいいし、つけつゆに加えてもいいだろう。つけつゆはデフォルトでややピリ辛仕立てになっているのだけれど、味が薄めでサラサラしているので、ラー油でパンチ力を加えるのもアリだと思うのだ。
  もう一品、日本の店舗にはない、というかまず出せないであろうドリンクメニュー「フレッシュ・ブコ・ジュース」(80ペソ)を。これは、ココナッツ(フィリピンでは「ブコ」と呼ぶ)の実をひとつまるごと提供するもので、皮をそぎ落として穴をあけ、ストローを刺しこんだだけのワイルドな状態で出てくる。中の液体を飲み、希望があれば割ってもらって中身を食べることもできる。ただ、ジュースはそれなりに甘みがあって美味しい(味の薄いメロンかスイカみたいな感じ)ものの、実のほうはほとんど味がない。白い杏仁豆腐のような、コンニャクゼリーのような、グニグニとした食感で、好き嫌いが分かれそう。6店舗を歴訪した中で、フィリピン人が注文しているのを何度か見かけたが、中身を食べている人は見かけなかった。フィリピンは暑くてのどが渇くので、個人的には気持ちよかったのだが。まぁ、日本人が旅行中に注文すれば、最高の話のタネにはなるだろう。インスタ映えを狙うなら、中身まで食べた方がいいと思う。


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★オルティガス駅(フィリピン。高架鉄道3号線)
「富士そば」  実食日:2016/11

  駅を出て南(シャウ・ブールバード駅方面)へ3分、左手の細長いショッピングモール「SMメガモール」内(北棟2階)。店舗名は、そのまんま「SMメガモール店」。シャウ・ブールバード駅からでも徒歩5分ほどなので、タフト・アベニュー方面から行く場合でオルティガスまで乗ると運賃が一段階上がるようであれば、シャウ・ブールバード駅から行く手もある。駅からとても近いので、電車+徒歩で行くのならこの店舗がオススメというか、楽に行ける。ただし、建物の中なので、セキュリティチェックがあることをお忘れなく。例によって店頭に立っている案内係に声をかけて席に案内してもらう形式なのだけれど、この店舗は吹き抜けになったエスカレーターの脇にあり、店舗前がちょっと狭い。この状況だと案内係に声をかけづらいと感じるのは、私だけだろうか。おまけに、光る文字看板に、ノース・エドゥサモール店にも増して多く並んだ、けばけばしいメニューサンプル。ちょっと近寄るのもためらわれてしまうのは、私だけだろうか。
  ここでは、まずかつ丼(180ペソ)をいただいた。ラッキー・チャイナタウンモール店で食べたえび天丼よりもさらに安い設定。これはフィリピン富士そばの最強メニューかも(日本の店舗でもかつ丼が一番の売れ筋だが)。ボリューム的にも、日本の店舗のものよりもだいぶ多い。ご飯も多いし、肉も多い。肉など、日本の店舗の1.5倍くらいあるのではないだろうか。それほど肉厚という感じではない(日本の店舗と同じくらいの厚さ)けれど、表面積が大きい。玉子とじは、白身と黄身を完全には混ぜないスタイルで、日本の店舗でのマニュアルに沿って調理しているものと思われる。ただ、ちょっと卵が茹だりすぎかな。ふわとろ食感が失われ、やや固くなっていた。米は、やはり乾燥肌。わりとつゆだくなだけに、なおのこと米の違和感が際立っていた。この手の米は、「つゆだく」には向かない。どちらかというと、パラパラチャーハンの方が向く米。フィリピン産の米を使う以上、これは避けられない部分か。米が私の舌に馴染まないこともあるのか、途中で少々飽きが来る。後半で味を変えられるようなひと工夫があってもいいのかなと感じた。テーブル上のラー油をかける手もあるか。
  続いて、日本の店舗では絶滅してしまった「そば茶プリン」(80ペソ)を。小さなグラスで作ったスイーツで、あっさり味のミルクプリンにそば茶風味のジュレを乗せたもの。仕上げに玄米を散らして、香ばしさを演出している。とても美味しい。フィリピンでは、甘いものはとことん甘い傾向があるので、このようなあっさりしたスイーツが新鮮だった。日本で出すのなら、もう少し甘みを強めた方がいいのかなと感じるけれど。天かすフリーのサービスあり。やや色白で香ばしさが弱く、揚げアンダーを連想させる。なお、この店舗ではそばを食べていないので、味の評点はフィリピンの店舗の平均+かつ丼やフリーの天かすからの類推でつけている。ご理解を。


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「KOMORO Japanese Dining」  実食日:2016/11

  駅を出て南方向(シャウ・ブールバード駅方面)へ3分、細長いショッピングモール「SMメガモール」の北棟2階。店名から推して分かると思うが、「小諸そば」のフィリピン店舗だ。「富士そば」よりもだいぶ早く、なんと1992年にフィリピンに進出している。立ちそば海外進出の草分けと言っていいだろう。すぐ近くに上記「富士そば(SMメガモール店)」がある(しかも同じ建物の同じフロア。両店間の距離は50mほど)わけで、国内だけでは飽き足らずフィリピンでもバチバチやっているのかと言いたくなるところ。しかし、どうも両店の客層はだいぶ違うようだ。「富士そば」はフルサービスの高級志向店であるのに対し、「KOMORO Japanese Dining」はやや簡易的な店舗になっている。有人レジで口頭注文・先払いして、番号札を受け取り、任意の席で待っていれば配膳してくれる。日本でいうと、混んでいるときのマックみたいな受渡し方。下げ膳は不要(席に放置したまま退店する)。半セルフサービスといったところだ。値段的にも、「富士そば」の半値に近い。だから、「富士そば」に比べて客数がとても多い。だから儲かっているのかというとそうとも言い切れない部分がある(客単価が安く利ざやが薄いので)が、賑わっていることは確かだ。
  今回は、かき揚げそばミニかつ丼セットを注文。麺は、国内店舗よりもちょっと固いだろうか。色合い的にもグレーがちょっと濃く、モチモチ感が弱い。国内店舗とは違う麺ではないかと推察。つゆも、国内の「小諸そば」とはちょっと違う。色がだいぶ濃いというか漆黒系で、醤油のコクがかなり強く感じられる。出汁感・甘みはそれほど強くない。おそらくフィリピン人の好みに合わせた調味なのだろうと思う(「富士そば」も出汁感を弱めていそうな味なので、フィリピン人はあまり強いカツオ出汁を好まないのだと推察)のだけれど、日本の立ちそばで食べ慣れている人にとってはちょっと物足りなさも覚える。かき揚げは、円筒形でわりと高さのあるもの。カラッと揚がっていて油切れも悪くない。一見、まともに見える。ただ、具材のカットが雑。タマネギは大きいのと小さいのが混在していて食感がバラバラだし、どういうわけか長ネギが入っていて、10cmくらいの長さのものもみられた。フィリピンの長ネギはくたっとしていて「噛み切れない・繊維歯に挟まり系」なので、10cmもあるといつまでも口の中でクッチャクッチャして不快。ちょっと改善の余地ありだ。一方のかつ丼も、まず見た目でだいぶ損をしている。盛り付けが丼の中で派手に偏っているし、丼の縁にご飯粒がくっついているし。味は特段問題ない(卵がだいぶ固かったけど)ので、あとちょっとの気遣いで印象が大きく上がると思う。
  値段は、かき揚げそば単品で122ペソ、ミニかつ丼とのセットで190ペソ。これでもフィリピンの物価を考慮するとだいぶ高いのだけれど、「富士そば」に比べればかなりリーズナブル。「富士そば」のような、極端な変わりメニューは見当たらない。わりとオーソドックスなラインナップだ。細かい点に言及すると、飲み水が面白い。いや、普通の水なのだが、汲み方が面白い。巨大なクーラーボックスに氷がたくさん入っていて、客がクーラーボックスを開けて氷を取る。あとは、ディズペンサーで水を注入するだけ。日本でいうとファミレスのドリンクバーみたいな感じなのだけれど、氷が入っているクーラーボックスの大きさがまるっきり違う。1mくらいあるのだ。「魚市場とかで使うやつなんじゃないの?」とツッコみたくなる。出入りの業者になったような気分を味わえた。
  いろいろ辛辣なことも書いたが、総じての印象は、悪くない。安め設定も気に入った。「富士そば」のラグジュアリーな感じも悪くないが、頻繁に食べに行くなら「KOMORO」を選ぶだろう。フィリピンにもう何店舗かあってもいいのではないかな、と思った。「富士そば」と過度な競争をするのではなく、同郷のチェーンとして仲良く共存してほしいと思う。


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★ノースアベニュー駅(フィリピン。高架鉄道3号線)
「富士そば」  実食日:2016/11

  高架鉄道3号線の北側の終着・ノースアベニュー駅。終着ではあるのだけれど、線路自体はその先にも続いていて、高架鉄道1号線の北側終着・ルーズベルト駅につながっている。1号線と3号線は南側もエドゥサ駅とタフト・アベニュー駅で接続しているので、南北それぞれがほぼつながって、マニラ市内をぐるっと回る山手線のような形になっている。ただし、相互乗り入れはなく、それどころか運賃系統も別になっていて、乗り換える時には新たに切符を買い直さなければならない。これは不便だ。3号線のノースアベニュー駅を出て、ガードに沿った長い歩道を歩いていくと、大きな道に出る。その向かい側にあるショッピングモール「SMノース・エドゥサ」内に、富士そばがある。だから、店舗名は「SMノース・エドゥサ店」。駅から歩いて4分くらいだから、特例を適用せずとも当サイトの対象になる立地で、利用しやすい。ここまで書いたら、聡明な読者なら「南と北の端っこなのに、両方“エドゥサ”なのは何故?」と思うだろうか。これは、海外によくある「道路名から名付けた駅名・地名」だから。SMモール・オブ・アジア前から東へ北へ、高架鉄道3号線に沿って続く大通りが「エドゥサ通り」なのだ。日本でたとえるなら、甲州街道に沿った場所に「甲州」と名付けるような感じ。三宅坂あたりが「東甲州」で、新宿あたりが「甲州」、高井戸あたりに「西甲州」と名付けるようなイメージだ。この店舗はショッピングモールの中(1階)にあるので、わずらわしいことにセキュリティチェックを受けなければならない。くれぐれも、ヤバいものを持っていかないように。この店舗の外観は、「富士そば」の文字看板が光っていないだけおとなしいように感じるが、一方では入口脇にずらっと並んだメニューサンプルがけばけばしくも感じる。内装は、SMモール・オブ・アジア店と大差なし。やはり、日本人から見ると「???」な、なんちゃって和風の造りになっている。店内のほか、外(モール内通路に露出)にもテーブル席がある。厨房は一部ガラス張りになっていて、全体ではないけれど厨房内が少し覗けた。こういう造りになっているのは、この店舗だけのようだ。テーブルオーダーで、テーブル会計。サービス料が発生するのも「SMモール・オブ・アジア店」と同じ。例によって店頭に立っている案内係に声をかけて席に案内してもらうのだが、フィリピンの6店舗全部を訪問した印象としては、この店舗の案内係がいちばん愛想よかった。店舗特性というよりも従業員特性だと思うけれど。
  ここでは、肉富士そば(260ペソ≒650円)を食べてみた。今回は温そばということで、もりそばに比べると幾分麺はやわらかく感じられた。つゆは、もりつゆほどカツオ出汁が香らない。これは日本のつゆとはだいぶ違う。どうやら、出汁を少し弱めてあるようだ。トッピングは、肉・温玉・焼き海苔・ワカメ。これも日本の「肉富士そば」と同じ……と思いきや、肉が別物だった。なんと、豚肉ではなく牛肉を使っていた。これはこれで美味い。焼き海苔がちょっとしんなりしているとか、温玉の白身がベチャッと広がっているとか、些細な違和感はあったものの、日本の富士そばで食べ慣れている人でも美味しく食べられるものだった。飲み水は、水と麦茶が両方出てきた。片方だけでいいような気もするが、フィリピンは一年中暑くてのどが渇くので、まぁありがたく。天かすフリーのサービスも健在。ここの天かすは、揚げ方がアンダー気味で、色白。香ばしさ・食感ともイマイチだった。SMモール・オブ・アジア店と比べると、揚げの技量には少々差があると見受けた。箸は竹製で、二重包装。
  総じて、まずまず悪くない印象。SMモール・オブ・アジア店との比較は難しい(食べたメニューが違うので)けれど、フィリピン富士そば2回目の実食で多少慣れもあったためか、こちらの方が後味は良かったか。訪問順が逆だったら、印象も逆になったかもしれないけれど。


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